遺跡探索
かちり。
最後のタイルが押し込まれ、ラレナの手に確かな手応えが伝わった。
まるで彼女が大地を揺らしたかのように、地響きが石壁を揺るがし
ただの床だった場所に、穴が姿を見せていく。
「わぁ、」
背後から、誰ともなく歓声が上がった。
この隠し扉を見つけた冒険者というのは、そうとう運が良かったとしか思えない。
最初に扉の開き方を聞いた時、彼女は思った。
床の石畳を一定の順番で押す、その順序が合言葉になっており
石畳の並びが魔術式を起動する。
若い冒険者達が練習にとそこら中を弄り回していたところ、
偶然にも、正しい順番を引き当ててしまったらしい。
一度引き当てた後、順番を辿るのに結構な時間がかかったという話だ。
数多くの冒険者の目を逃れた仕掛けだ。
簡単に引き当てられるような順番ではなく、隠したきり使われなかったのか、
石畳に跡が残っているようなこともない。
運を使い果たした彼らは、どうなっただろうか?
そんなことを考えて、ラレナは小さく笑いながら、穴の中の様子を窺う。
ウィルの掲げるランタンが揺れて、漆黒の空間を照らし出す。
本当に隠されてから誰も立ち入っていないのか、
埃すら、思ったほど積もっていない。
彼女がそっと足を踏み入れると、僅かな埃が宙を舞い
ランタンの光にきらめいた。
そして。
静まり返って、生きたものの気配すらしない場所を。
彼女を先頭に、ゆっくりと彼らは降りていった。
暗い通路に、潜めた足音が響く。
生きた魔物はいなくとも、この階層を造った主が、
魔術で動く石人形などを守り手として置いている可能性はある。
まだ、誰も見たことのない回廊を進みながら。
緊張感と高揚が否応なしに張り詰めてくるのを、彼ら全員が感じていた。