魔術師の回想
石造りの回廊をランタンで照らしながら、薄暗く揺れる灯りに
ウィルは以前のことを思い出していた。
そう。
レミュアと出会って最初に行ったのも、確か遺跡探索だった。
あの時は学者組合の依頼で、彼女達三人が、一緒に探索をやってくれる魔術師を探していたのだった。
冒険者達で騒がしい酒場の中、仕事の張り紙を片手に、
仕事のない魔術師を探してテーブルからテーブルへと渡り歩く三人組。
師の家を出たばかりの自分は、渡りに船とばかりに手を挙げて。
自分達は、今の四人になった。
その時。
自分は、彼女にとってただの魔術師で。
ただ───
「すごい、金髪に金色の眼なのね。初めて見た」
自分と眼を合わせて、無邪気さを見せて微笑んだ彼女。
どこか甘やかな香りのする声が、今でも耳の奥に残っている。
その時から、自分にとって彼女はただの剣士ではなかったのかもしれない。
「ウィル」
ラレナの声に、ふうっと彼の思考が浮かび上がった。
「頼むわ。この先よ、多分」
目の前に、重厚な鉄扉が聳えている。
見上げれば、遥か頭上まで扉は続いている。
巨大な玄室を収める扉。
その大きさは、内に竜を収めるに相応しい。
最後の錠となる魔術式を解くべく、彼は手を伸ばした。