第5話 学園長は掴めない
俺は学園に戻ってすぐに、学園長室に向かった。
扉を3回ノックすると中から入るように促される。
「失礼します学園長。少しお話があるのですが」
中に入ると、俺と同じ年齢と間違えてしまいそうな男性がこちらに背を向け、窓を眺めていた
「西の洞窟の地下で見つけた女の子の事かな?」
「…………」
「そう警戒するな新入生。君達の騒ぎは食堂の所からみさせて貰ったよ?」
……初めから見ていたというのに、その騒動を止めようとはしなかったのか?この学園長は…………
「あぁ、勘違いしないでくれよ?貴族と平民の喧嘩は珍しくない。しかし今の三年、二年は喧嘩とは無縁になっているのだよ。互いが互いを認めてね。今回もそうなると信じて傍観してたんだよ」
……言うだけなら簡単な事ではある。だが、その言葉からは嘘は感じられない……
「西の洞窟の時、学園長の姿は見えませんでしたが?」
「僕が直接行くのはまずいからね、使い魔を通して見させて貰ったよ。」
そう言ってこちらを向いてきた学園長の肩に、突然トカゲのような生き物が現れる。
「僕の使い魔、カメレオンの愛ちゃんです。」
「それメス!?……なんですか?」
「ううん。オスだよ?」
「オスなのに愛ちゃん!?」
「おかしいかな?」
「……いえ。そこは個人の自由ですから。」
……会話が脱線してる。この学園長、なかなか掴めない人だ……しかしカメレオン?聞いた事ないな
「カメレオンはこの文献に書いてあるよ。」
「ありがとうございます……擬態能力を持つ生き物……魔法生物ですか?」
「違うよ。自然に生まれたナチュラルだよ?」
これがナチュラル、初めて見た。アルデット家には魔法生物しかいないからな。
「ふふふ、羨ましいかい?」
正直羨ましい。ナチュラルは魔法生物と違い、生息地に向かい、直接捕まえなければならない。
……いいなーナチュラルのペット
って!違う違う。今はナチュラルは関係なくて!
「学園長!羨ましい!(話が脱線しています!)」
「本音と建前が逆だよ?」
あれ?
「じゃなくて、その女の子についてですよ」
「あはは、ごめんごめん。まぁ、貴族と平民との騒動を初日から起こしたのは君達が初めてだよ。寮の部屋が空いてないんだよね。だから、その子は君の部屋で生活させてね?」
「えぇ!?」
もうちょっとこう……なんかあるんじゃないの!?
結構あっさり決められてるけど、正体とか、そうゆうのとかさ!?
「君と同じクラスの子という事にしといてあげよう。君に懐いてそうだし、あ、後、週末、金曜日にその子を検査してもいいかな?吸血鬼の真祖なんて幻の存在だから」
「っ!?」
「言ったろ?愛ちゃんから見てたって、大丈夫。他言しないし、この学園の教師は全て僕が直接スカウトしたんだ、他言はしないよ。」
「……信用して、いいんですよね?」
学園長の目を見つめると、優しく微笑んで歩いてきた。
「無論だよ、彼女はこれからここの生徒になる、生徒を守るのは、教師の仕事だよ。」
そう言って優しく頭を撫でられる。普段なら反発するのに、何故か反発する気が起きなかった……この人、父性ありすぎでしょ……
「ナチュラルが見たくなったらいつでもおいで。」
「週末にミィを連れるので別に……いい……です」
「触らせて上げるよ?」
「是非来ます!(釣られませんよ!)」
「だから本音と建前逆だって」
……もう、この人苦手だ。
逃げるように学園長室から出て自室に帰った
「あ、おかえりなさい。」
「ただいまミィ。学園長からミィは俺と同じ部屋で同じクラスとして通う事になった。」
「ルキと一緒に居られるんだね!?やったぁ!」
俺と一緒がそんなに嬉しいのか、ベットの上で飛び跳ねてる。
とりあえず、服がボロボロのローブなので簡単な着替えのワイシャツを渡す。
「あぁ、後ベットはミィが使えよ。」
「なんで?ルキはどこで寝るの?」
飛び跳ねるのをやめて、ワイシャツに着替えているミィから目を逸らして、ベットで寝るように言うと、何故か質問された。同時に「着替えたよー」とミィに言われ、振り向く。そして、後悔した、ミィはローブの下は下着のみ……つまり裸ワイシャツ……正直、目の保養だが、目に悪い……
「俺か?俺はソファーとか床で適当に寝るさ。」
疲れは取れにくいだろうが、寝れない事は無いしな。
「ルキも一緒に寝ようよ!それならベット使えるよ?」
「い、いや、ほら、ベット狭いだろ?」
「?私とルキ2人で寝ても余裕あるよ?」
……貴族のベットはなんでこんなにもデカイんだよ……シングルだろ、これ……
「わかった、わかったよ。一緒に寝るか。」
「うん!」
「ミィ、明日の放課後、 学園長室に行く必要があるからついてきてくれ。」
「はーい。」
ミィが元気に返事すると、ミィのお腹がくぅ〜、と鳴った。
「……ルキ…」
「血、だろ?吸いすぎるなよ?」
「いただきます。」
俺の首筋に牙を立ててそこから出た血を舐めるように飲んでいった。
「やっぱり、ルキの血、美味しい……」
どれくらい血を吸われたのか、だいぶ意識が朦朧としてきた、少し視界が霞む……
「……ミィ、そろそろ……」
少し震える手でミィの頭を撫でると、ミィが離れた。その目はまた、落ち込んだよう目をしていた。
「ごめんなさい、また……」
「別にいいさ、死んだ訳じゃねぇんだからよ。」
「でも……」
「旨いモンはついつい食いすぎちまうよな。仕方ねぇさ。」
落ち込むミィの頭を少し雑に撫でる。ミィも、口では痛いと言ってはいるが、顔は嬉しそうだった。
「ほら、寝るぞ。明日から授業が始まるんだからな。」
「うん。ふふっ、ルキ温かい。」
ベットに入ると、ミィが俺の胸板に額をグリグリとやってくる。痛くはないが、くすぐったい。しかも抱きつかれてるため、剥がすことも出来ないし、腕も枕に使われてるし、仕方ないからこのまま寝るか。




