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第1話 hello and unhappy

さて、このしりとりタイトルはいつまで保つんでしょうか?(笑)

 さて、唐突だが皆さんは春は好きだろうか?オレは好きだった。意味のない授業中寝てても寒くも熱くもなく、窓から吹いてくる風は心地が良い。


 ……そう、春は好きだった(・・・)。あくまで過去形で記す理由は、目の前の友人が向けてくる切っ先。


「黎夜、悪いな。教官からの命令だ」


「な、どういう……どういう事だよッ!?オレがお前を攻撃(・・)出来ないの知ってんだろ!高嶺!」


 冷たく光る鈍色の剣。友人だった筈の高嶺は躊躇う様子を見せず、困ったような笑顔でオレを眺める。


「知ってるさ。けど、仕方ねぇだろ?」


 諦めろ、と目が語る。けど、だからってこの仕打ちは……っ


「頑張って、避けろよ。矛盾弧コントラディクション・アーク!」


「だからっ……オレが攻撃魔法使えねぇの知ってんだろーがッ!」


 絶叫しながら横に飛び退いたオレに、まさかの伏兵からの攻撃が来る。その伏兵とは……


 スパーンッ!!


「避けるな。授業にならん」


 目の前に広がるファンシーな星達。チカチカと回るそいつらを無視して苛立ちを露わにすれば、オレより背の高い女教師とその手にあるハリセンが視界に入る。あまりの仕打ちにキッと睨みつけ、咄嗟に怒鳴った。


「っつ!?って、おい教師だろ!オレが攻撃力皆無なの知ってて防御も避けるのもダメって無茶苦茶にも程があんだろ!?」


 スパパーンッ!!


「っ~~~~~!?」


「敬語を使え。敬語を。そしてお前が攻撃力が皆無なこと位は良く知っているさ」


 いってえな!オレは的じゃないんだが、何故かこのクソ教師はオレの頭を叩くのがたいそうお気に入りらしい。

 本人に多少キレながら何故オレばかりやられると問いかけた時には、こう返って来た。「お前の頭が丁度良い高さにあるからな」と。……くそ、これでも平均以上の身長はあるのだが、13……今年で14というまだまだ成長期の身としては低い所は否めない。

 そして教師から返ってきた肯定の返事にこちらも食ってかかる。


「っなら!」


「だが断る」


 ……このクソ教師、何を断るんだ。主語が無い。

 痛みに涙目になりながら睨めつければ、そこにはとても面白そうな教師の顔。……このドSめ。


「何、私はお前の為に言ってやってるんだ。少しは攻撃に転じられる可能性が砂漠中の砂一粒分位はあるかと思ってな」


「それほぼ0%じゃねぇか」


 成程、コイツはどこまでもオレを甚振りたいらしい。このヤロウ……じゃねぇからこのアマ。

 第一に相手はこの学年有数の実力者、CCCの高嶺鍵。攻守共に秀でたオールラウンダー。どう考えても攻撃がそよ風レベルのオレじゃ相手にならん。これで防御だけでも使えれば勝てる自信があるのだが―――


「そうかもな。ま、そうだとしても私は……」


「っくくく……相変わらずアインスハルト君にだけは容赦ないですね、教官」


 唐突に響いた噛み殺した笑い声にハッと振り向けば、いつの間にか闘技場にまで来ていたクラスメイトが約一名。


「宮瀬……なんでこんな所に……」


 訝しみながら高嶺が声をかければ、優男風の彼は困ったような笑みを浮かべて上を指さした。入口の前に立つ宮瀬の上にあるのは……スピーカー?


「教官、もうとっくに終了のチャイムはなってますよ?アインスハルト君もバテ気味ですし、今日はここで終わりにしたらいかかですか?」


「あ」


 ホントだ。時計をみれば授業終了時間から更に15分はゆうに経過している。……って事はオレは15分無駄に授業受けてたのか!?返せ!貴重な時間を返せ!!


「おや、もうそんな時間か。仕方ない。この後は会議もある事だ。今日は宮瀬の言う通りここまでにしよう」


 つまらなさそうに鼻をならしたかと思えば、黒のロングコートを翻してとっとと出て行ってしまう教師。

 ……もう来んな!

 心の叫びはグッとこらえて、溜息を一つ吐き出してから教師を止めに来てくれた宮瀬へと体を向ける。


「はぁ……ま、何はともあれ終わったか。宮瀬、助かった」


「俺は一回黎夜と防護抜きでやってみたかったんだけどなー」


 高嶺ェ……コイツオレ(友人)を殺す気か。


「あはは……幾らなんでも防御抜きはアインスハルト君にはアウトだって」


「でも補助系許しちまうとぜってー俺が負けちまうからなー」


 やれやれと首を振る高嶺に苦笑する宮瀬。二人揃ってルックスは上のレベルなだけあってこの夕暮れどきに森をバックに歩く姿は妙に様になる。……この男の敵共め。


「フン、どうせオレは出来損ないだからな。攻撃できねぇ分他で補うしか方法ねぇんだよ」


 こいつらのような才能はオレには無い。世界の状態が漸く落ち着きかけたばかりの今は―――特にここミッテルラントのような大国では軍事力として攻撃系の魔術が必須にも関わらず、オレにその才は一切ない。

 弱者では無い自信はあるが、この非才さは周りから決して受け入れられない。それ故にオレが死ぬ気で補助・防御の術を覚え、どうにかして補ったのだから。


「でも君の補い方、凄いえげつないよね……」


「あ、隣のクラスのやつがトラウマになってたぞ」


「ぅえ?マジでか?」


 トラウマになる程の事やったけなー……と、考え始めれば、良く考えなくても浮かぶえげつない倒し方の数々。

 うん、かなりやってて寧ろそいつが誰だか分かんねぇ。


「ああ……僕も聞いたよ。というか転校してきてまだ2週間しか経ってないのにアインスハルト君の噂は数知れない位知ってるんだけど……」


 一体どんな噂だ。恐らくろくでも無いものだという事は理解しているが、気になる物は気になる。

 と、まさかの身内がこくこくと頷いて相槌をうっていた。が、高嶺が噂について言えた義理ではないとオレは思う。何故なら……


「あー、有名だからなー。防御の術だけで校庭を割ったとか」


「お前もやってたけどな」


「え?僕は補助魔法でダイアモンドを砕いたって聞いたけど」


「それも高嶺が傷をつけた後にな」


「あと先生のカツラ吹っ飛ばしったけな!」


「お前の術防いだ時の爆風でな」


 全く……記憶が良いように改変されているが、別にオレが自分からやらかしたことなんて早々ねぇぞ。主に高嶺に巻き込まれただけだ。特に先生―――より正確には教頭のヅラを引っぺがした時には流石に血の気が引いた。呼び出しで済んだだけマシだろうな。


「……もしかしてアインスハルト君って、かなりの巻き込まれ体質?」


「……認めたくないが世間一般でそう言われる位には色々ピンからキリまで体験してるぞ?」


 そりゃもうこの馬鹿の横に居れば大半の事は経験できるさ。主に胃にくるモノが大量に。


「……へぇ。色々、ね」


 宮瀬が何か呟いたような気がし、顔を上げれば同じく聞こえたのだろう。高嶺が不思議そうな顔をする。

 宮瀬の今の声は、何故か一瞬寒気が走るモノだった。


「ん?何か言ったかー?」


「……ん、いや何にも?」


 ……今、絶対何か言ってた。一体、コイツは今何を隠した―――?

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