夢現に影は足を掴む。
両手が紅い。
片手には包丁じゃない、刃物。
目の前には、生きていない…両親。
わたし…わたし………ッ
お…父さん、お母…さん……ッ!
わたし…が……わたしがあぁぁぁ!
「…ッ!」
思いきり目を開けて起きた為か
何が起きたか、一瞬…分かりませんでした…
けれど、目覚まし時計の秒針の音を聞いていたら
次第に、心も落ち着いてきました。
「…昨日」
昨日、彼に私が罪人であると告白してすぐに帰らせました。
…無理矢理、玄関の外へ突き飛ばしただけですが…
その拍子に、彼の顔を見ると
戸惑った様な…悲しんだ様な…
………もっと探る様な瞳で
私を見つめていました。
「…」
今日が土曜日で良かった。
だって、彼の姿を目が追いそうで
拒絶したのに、都合が良すぎる事は百も承知です!
けど……けど……
「ねーちゃん」
「!!」
私の部屋である和室の襖を
弟の煌生が開けました。
その行動に、少し眉が寄っていたのでしょう。
「ねーちゃん、顔ヤバいぞ」
「誰のせいか分かってますか?」
勝手に開けて勝手に入ってきて
勝手に顔を覗く弟の煌生に
柄にも無く、不機嫌な顔を晒してしまいました。
「…ご飯なら作りませんよ」
「えぇ?」
「たまには二度寝したいんです
カップ麺でも何でもして食べて下さい
13時には起きます……出てって下さい」
少しツンとしながら布団の中に
潜りこみます。
これで寝たと思って下さい。
「…………………」
「…………………」
暫くして、襖が閉まった音と足音が遠ざかる音が聞こえました。
…今日は、何もする気力がありません。
人を拒絶し続けてきたのに…
ただ一人のさよならが…
こんなに辛いだなんて、知りませんでした…。
…………ココは、どこ?
…………学校の教室?
…………誰も、いません。
…………外は、夕暮れ時。
…………帰らないと!
…………帰る?
…………ドコに?
…………私は…私は、
誰?
「―――――ッ」
ピピッピピッピピッピピッ
これは、夢?
でも、痛い。
胸が……痛い。
目覚まし時計を、叩いて止めた…手が痛い。
痛い、痛い、痛い!
誰か…!
誰か、助けて…!




