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一人ぼっちな私と君。  作者: 稀燕
彼女、色づく世界
15/16

今、一時の休息を(side:hisui)

遅くなりました、後編です。






    『―――――…い、ひすい』



なんでしょう…此処は。


とても暖かくて優しい声と温もりで満たされてる…


起きたくないです…、まだ 此処にいたいです…



    『おきて、ひすい』



あぁ…この声は、代羽くんの声です…



    『…まだ、ねたい?』



代羽くんがいるなら、起きます!


だってこの温もりは…この場所は……








「……ぁ、よ…う……くん」

「ふふ…おはよ?灯翠さん」

「お、はよう…ございます…」



長く眠っていた為か、ぼんやりした眼でようやく代羽くんを見つけます。


…私は、どれくらい眠っていたのでしょうか…


まだ体はだるくて体を起こすのが億劫ですが起きてしまったものはしょうがありません。


それに代羽くんがいるのに寝たままで会話するのも…恥ずかしいです。



「あの…今、何時ですか?」

「ん、今?えぇーと…、…あぁ今は11:43だね」

「あ…そうなんですか…」



あれから3.4時間経っていたのですか…ん?



「あの…代羽くん?」

「なあに灯翠さん」



なんで名前を呼ばれただけなのに


そんな満面の笑みなのでしょうか…


…それだけ寂しかった、なんて。



「私が眠っている間…その、暇だったのでは…?」

「暇?」

「その…あの…一人で、ここに…いて」



うぅ…自分で言うと自意識過剰に思えますけど


それと同じ程に申し訳ない気持ちでいっぱいです…っ!



「…ぁ、あー。それね、ううん大丈夫だったよ?やることはあったしね」



…へ?


私が阿呆面をして呆けてる間にも代羽くんは喋り続けます。



「灯翠さんの看病はもちろん、おかゆ作って…後片付けして…

洗濯機回して干して…あとリビングとキッチンに掃除機かけて…」

「わわわわわわっ!?せ、洗濯!?ほし…っ!?」



私が寝ている間に家事をやってくれていたというのを何でもない顔で言う代羽くん。


で、でも…聞き捨てなら無いのがありました…っ



「?どうしたの?灯翠さん」

「あ…あ…!!」



本当に分かっていないみたいな代羽くんに


ついに頭まで布団ですっぽりと覆い代羽くんに背を向けてしまいました…っ




代羽くんが家事が出来ることはよく知っています。


今まで代羽くんが手伝ってくれた家事は


洗濯機を回す事、お風呂を洗ったり食器を洗ったり掃除だったり…


あと簡単な料理なら作れる事は分かっています。


でも…洗濯物を干す事は絶対にさせないようにしてきたんです…っ!



だって…だって…!



煌生のなら特にかまいませんが…かまわないのですが!!


その中には彗翡のや…私のモノだってあるんです!!


か、彼氏でも…み、みみ、み、見せたくないのです!!


なのに…っ



「(恥ずかし過ぎて、ふ…憤死しそうです…っ!!)」



うぅ…ちょっと涙で視界が滲んできました…



しばらくお互い無言の静かな間が続いてそろそろ落ち着いたかもと思っていた時でした。



突然訪れた背中の衝撃と温もり。


そして…



「…ゴメンね」

「え…?」



この部屋にいるのは私と代羽くんしか居ないのですから


布団越しに抱きついているのも喋っているのも代羽くんしかいないのも分かっているのですが。


急にされたら、誰だって驚くと思うんです。



「…本当はね、洗濯物を干す事をさせたくないんだろうなとは思ってた」

「!」



ば、バレ…っ!



「でもね、…正直今でも理由は分かってないんだけど……でもね」



静かな声と共に強くなる抱きしめる腕が。


なんだか、それだけで言葉にしていない代羽くんの気持ちを代弁している様です。



「…なんだか、まだ頼られていない気がして…寂しかった」

「えっ!?」



思わず、見えていないのに代羽くんの方へ振り向こうと


首を捻りましたが、見えるのは布団だけ。


分かっていたハズでしたがさらに混乱は増すばかりで…。



「そ、そんなことないですよ…っ!?」



声っ、裏返っちゃいました…!



「…うん、でも。

時々…ね。

今みたいに……ね、不安っていうか…理解させられるんだ…」

「?…何を、ですか?」

「君が、まだ“あの事”に縛られている事」

「はい!?」



な、何を言ってるんですか!?



「もう大丈夫って言ったじゃないですか!?何故今この話にそれが!?」

「…?違うの?」



後ろでモソリと音と共に後頭部から少し重かった何かが離れる音がしました。


…そこに顔を埋めていたらしかったようです。


そのまま腕の力も弱まったので少しどかしてから


頭を覆っていた分の布団だけをおろして


その勢いのまま、後ろを振り向いて代羽くんの顔を見ました。


…なんで代羽くんが泣きそうな顔をしてるんですか…。


綺麗な顔がだいな…そんな事ありませんでしたね。


ぐしゃぐしゃな顔も、基がいい人は絵になりますね。


そんな代羽くんの頬を挟んで一つ溜息を吐いた後、私は微笑みました。



「…洗濯物を干して欲しくないのは

私の下着が入っていて、その…見せたくなかっただけなんですよ?」

「へ…?」

「だってその…彼氏彼女だけど…あんまり見て欲しいものではありませんし…

…………恥ずかしいんですっ」

「……、………――――――――っ!!!!」



ようやくここに来て理解できたようです。


目を見開いて言葉通り顔を真っ赤にしながら声に出来ていない声が


口の間から漏れ聞こえています。


勘違っていた何かと現状を思い返して、…見ていて可哀想な程の慌てっぷりです。



「それに…頼っていないなんてそんな事全然ないですよ?」

「っ、え…え!?」

「掃除も食器洗いも…洗濯機を起動させるのも本当に助かってるんですよ?」



えぇ、本当に助かってます。


貴方がそれをやってくれるだけでどれだけ余裕が持てているか…分かりますか?



「……言わない私も私でしたね。

不安にさせてしまいましたね…ごめんなさい」



なら…言葉にして、伝えましょう。



「いつも…ありがとうございますね」

「!」



感謝の気持ちと…



「その…今日は私はこんななので…」

「…?うん」

「えっと…、頼っちゃっても…構いませんか?」

「………っ!!うん!いいよ!喜んでっ!!」



まだつっかえながらですけど…


貴方を頼る、分かち合う気持ちを…いつか。



「じゃあまずご飯にしよっか!おかゆ温めなおしてくるねっ」

「代羽くんは食事どうするんですか?」

「冷えピタと一緒にパン買ってきたから大丈夫!」



ちょっと待っててねー、という声が出て行った扉の先から聞こえてきて


ついクスクスと笑ってしまいます。



あぁ…いつか。


こんな風な暖かい毎日を代羽くんとずっと過ごせたら。


いつか…それが、当たり前になれたら…もっと幸せでいられる気がします…。




暖かい日差しを浴びながら、覆っていた布団のせいで少しボサボサになった髪を


手櫛で軽く整えながら貴方を待って。


そうして暫くしてから、おかゆとパンを持って現れた貴方に言うのです。




     …代羽くん

      貴方が私の大切な居場所なのです、と…






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