午後3時の甘いお茶会を貴方と共に。
番外編が10以上たまったら次の編に進むと思います。
あの初夏の雨での告白から少し経つ頃。
代羽と灯翠はとある喫茶店にいた。
彼氏彼女が二人っきりで喫茶店とは
普通に見る光景ではあるがその内容は試験勉強と
かなり色気が無いものであったが
二人ともそんな事は気にはせず
ただ二人で何かをするという行為で
心はかなり満たされている様であった。
「私実はおばさん以外でこういう所来るの初めてなんです」
「あれ?そうなんだ」
「いつも一人でしたし、何よりこういう所って高いじゃないですか」
「…まぁ安いところもあるけど確かに高いよね」
「なんだかお金を使うのが勿体無くて敬遠してたんです」
隙間が無いくらいに広げられたノートと参考書、問題集が置かれたテーブルはいかにも
勉強してます…という雰囲気が漂っていますが
利き手側に置かれた紅茶と軽食やデザートがその雰囲気を少し薄くしていました。
真面目過ぎず、かと言って遊びすぎずなそのテーブルは
まるで私達の空気そのままを表したかの様です。
「でもこうやってお茶をしながら勉強なんて出来るのはおばさんのお陰ですね」
そうしてレモンティーを口に含みました。
二人の告白を間近に見ていた緑紗からの支援はそれはもう凄いです。
彼女にも子供は二人いるのですが二人とも男性で二人とも成人して
すでに一人暮らしをしているので
まだ未成年である私達矢奄姉弟をかなり可愛がっていて
中でも灯翠をかなり気にかけていて。
その灯翠の恋愛の始まりを目撃したとあって
緑紗の支援はさらに加速しました。
こうしてデートするお金を提供してくれたり
今はファッション雑誌を贈ってくれたりしてるのです。
最初は恐縮して受け取りませんでしたが
緑紗の夫である叔父の修路も緑紗に乗ってきたのだから
それを受け取らない訳にもいかなくなってしまったのです。
叔母夫婦は本当は女の子が欲しかったらしいので
尚更引けなくなってしまいましたが
彼らのお陰でこうしてゆったりとした時間が取れて
代羽くんとの時間が出来ているのも事実なのでとても感謝しているのです。
「そうだね、ボクもまたあの人には会いたいかな」
「今度夕飯にお邪魔するそうなので来ます?」
「え!いいの?」
「えぇ、叔父さんもいらっしゃいますが…いい人なので大丈夫だと思いますよ」
「ならお言葉に甘えようかなぁ」
そうしてヘニャリと笑う彼に微笑ましくなります。
お皿の上から私の掌程のサンドウィッチを取って頬張って。
あぁ、甘い。
それはこのサンドウィッチの生クリームと苺の味なのか。
もしくは愛おしいと思える彼を見てそう思ったのか。
よく分からない程、甘い感覚。
「幸せ…だなぁ」
「ん?」
同じように大きめなマンゴーが目を惹くフルーツケーキを頬張った代羽くんが
私の独り言に反応して、綺麗な瞳を私に向けます。
その仕草にまた微笑むと彼も意味を察したのか笑ってくれました。
元々格好よくって綺麗な代羽くんは笑うとそれが顕著になってかなり人目につきます。
ついでに訝しげな目も私に向けられますが
最近はそれにも慣れてきて何か言われても「それが何か?」と言える程にもなりました。
「私、代羽くんと出会えてよかったです」
「どうして?」
分かってる癖に。
けれど楽しそうに肘をついてこちらを見る目があまりにも楽しそうで
こんな風にも笑うんだって最近分かったから
拗ねる事も出来ません。
でも、イヤじゃないんですよね。
「貴方とこうして時間を重ねていく度に」
「一つづつ何かを知って、好きになっていく」
「それと同じくらいに私は一つづつ強くなれた気がするんです」
「ずっと代羽くんと居たいから、だからその度に『昔』の私を超えていく」
「告白の時から、私は…代羽くんから強さを貰って今の私が在るんだと」
「最近はずっと、そんな事ばかり考えてるんです」
そこまで言ってつい恥ずかしくて俯いてしまう。
ここが個室のようになっていてよかったです。
「…ボクだって」
本当に小さい声で、代羽くんも呟いた。
「ボクだって、灯翠さんから強さをいっぱいもらってるの知らないでしょ?」
顔を上げて彼の顔を見ると
真顔でこちらを、瞬きもせずただ見つめていました。
「お祖父さんのこと、本当は忘れようとしてずっと努力してきたんだ」
「でも、灯翠さんが苦しそうに一人になっていく姿を見て」
「どっちが罪人か分からなくなったんだ」
「それなのに自ら罪人になって独りになっていた君に自分が恥ずかしくみえたんだ」
「だから、お祖父さんの事あの日のこと…」
「忘れようとした記憶に挑めたのは、灯翠さん…君のおかげなんだよ」
だから、全て受け入れて…その先へ超えられたんだよ。
その言葉を締めに、代羽くんはまた私を見る。
あぁ
差し込む光を浴びる彼の瞳を見て、先程とは違った想いを感じました。
互いが互いに必要な存在で
どちらが居なくては、今の私たちは存在していないのだと
理解しました。
代羽くんもそう思ったのでしょうね。
ほぼ同時に笑顔になって笑いあって。
「「いてくれてありがとう」」
そう言いあったのだから。
甘い空気に包まれた
午後三時のお茶会はまだまだ続く。




