彼の今までその全て。
一ヶ月更新になりつつも完結めざしまっす!!
<side:You>
降りしきる雨の中。
あの場所に向かった。
ただ、伝えたかった。
泣きそうな、あの顔に…ただ…伝えたくて。
だから僕は…
黒ずんだ記憶に、再び足を踏み入れたのだから。
<side:Hisui>
「なんで…?なんで、ここに…」
雨に濡れきった彼を見て、酷く動揺しました。
彼の佇まいが…とても、静かで 怖くて…
「……ちょっと、昔話をしようか」
「?」
「…」
「ここは…昔、僕が住んでた場所で…お祖父さんも住むはずだった場所なんだ」
昔、住んでた?
…住む、はずだった?
「…!貴方、もしかして…」
「ここは昔、でかいデパートがあったんだ…今はもう、無いけどね」
「…!」
「僕は…ある日、定年退職したお祖父さんとそこに来てたんだ」
ウソ…いや、聞きたく…ないです…!
「今まで遊べなかった分、いっぱい遊ぼうって…笑顔で言ってて」
彼が、悲しそうに笑う。
…本当に、大切な人…だったんでしょう。
「それで、いつもしかめっ面なお祖父さんがニコニコしてるのが嬉しくて」
「屋上で遊んで」
「お揃いの帽子を買ったりして」
「いっぱい笑って、楽しかった」
雨が降る。
彼の顔が、表情が
分からなくなるくらい
降り続けます。
笑ってる?泣いてる?
それともどっちも?
もう、顔中が水で濡れているのに
私には
泣き笑いしてる
気がしました。
「本当に、楽しかった……でも」
不意に、目が細まる。
雰囲気が、変わりました。
「その日、通り魔がデパートにいたんだ」
「その話を聞いて、お祖父さんは現場に向かった」
「お祖父さんは、元警官だった」
「僕を巻き込まないよう、先に帰らせようとした」
「自分は、警官をやめたけど…心はまだ警官だって」
「だから…自分が捕まえるんだって」
「せっかく…静かに暮らせる場所を悩んで悩んで決めたのに」
「せっかく…好きな事が自由に出来るようになったのに」
あぁ…あぁ…!!
「結局、お祖父さんには捕まえられなかった」
そんな、事って…!!
「逆に殺されたんだって、その場に居た警官の人が言っていたよ」
そんな――――――――――――!!
「でもね」
彼の独白で崩れたように座り込んだ私に声をかけたのは
やっぱり彼でした。
「僕がこの事を言おうと思った…思い出したのは君のおかげなんだよ?」
私の…おかげ?
「さっきの事、正直あの時まで忘れてたんだ」
さっきまでの雰囲気はどこへやら。
優しく笑う貴方に、私が…泣きそうで。
「確かにつらかった、苦しかった…でも逢えたから」
私が…苦しめたのに…!
何故、笑えるの?
「笑ってる楽しげなお祖父さんに、もう一度逢えたから」
何故
「ありがとう、灯翠さん」
お礼を、言ってくれるの?
「智衛…さん」
しばらく泣き続けた私をに付き添っていた代羽くんに話しかけたのは
静かに見守っていたおばさんでした。
「…お祖父さんの、お葬式に来た…人ですか?」
「えぇ…、血は繋がって無くても…身内が起こした事件ですし…」
そして…
「キミに謝っても謝り足りないわ、やっぱり…」
「もういいですって、僕はもう…大丈夫なんです」
頭を下げようとしたおばさんを制したのもやっぱり代羽くんで。
穏やかに微笑む彼は本当に気にしてなく見えました。
しばらく彼を見つめると
今度はこちらに向き直って口を開きました。
「君は、罪人じゃないよ」
頬に手を当てられ、その冷たさに肩を震わせましたが
その前に。
彼は、今なんて?
見つめあった瞳の奥に私が見える程近くに寄せあい
まるで秘密の話をしているみたいで身体が火照ってしまいそうです。
「確かにあの時あの場所に居たかも知れない、でもね」
「君はただ居ただけ、何も悪くないんだよ」
「ただの一人善がりなソイツに合わせる必要なんてどこにもない」
「君の居場所はもう自由になっていいんだ」
「もう、悪夢から目を覚ましていいんだよ」
「だから」
「だから、アイツを忘れるくらい僕に夢中になって?」
アレ?最後ぶち壊し…?




