Love5..不思議な瓶
「以上、学長の挨拶でした!それではつづいて…」
…入学式?
私…
「今って…」
「咲良ちゃん!同じ大学だったんだね!すごい偶然〜!」
綾人。
綾人だ。
私…戻れたんだ。
「偶然じゃないよ。」
「え?」
私は綾人の瞳を真っ直ぐに見つめながら言った。
「運命だよ、きっと。」
「あはは!何それ〜?」
私の話をごまかそうと、綾人は笑いながら前を向いた。
いつかの私みたいだ。
「綾人…」
「ん?」
私、綾人が好きだ。
大好きだ。
「綾人、って呼んでもい?」
今度は私の番だね。
絶対この想い届けてみせるよ。
───
それからみるくがあの瓶を持ってくることはなくなって、私もこの二度目の毎日にも慣れ始め、綾人との日々を過ごしている、秋この頃という感じ。
無事私の想いが通じて、この秋から綾人と付き合い始めた。
毎日、毎秒、幸せ。
綾人と私、そしていまこの瞬間に在るものすべてに、
奇跡が溢れている。
心からそう想う。
そうだよね?
綾人♪
───
今は愛しいみるくの散歩中。
みるくのリードをゆるく持ちながら、少し先を歩いて私はつぶやいた。
「ねぇ、綾人。もしさ、私から告白されてなくても、私のこと好きになってた?それとも私が好きにならなきゃ綾人はもしかして…」
まるで秋の夜のように少し淋しそうに、どこか切なそうにそうつぶやく私の言葉をさえぎるように、綾人はこう答えた。
「急にどうしたの?変だぞ〜咲良〜」
笑いながらも綾人は私の瞳を見てはくれなかった。
秋の夜は長くて、そのあとはとても静かな時間が流れ過ぎていった。
「おやすみ、咲良。」
「うん。おやすみ、綾人。」
「じゃあね♪」
「綾人!私ね、綾人のこと…っ」
「あ〜、はいはい(笑)分かってるよ。じゃあね♪」
これが綾人と私の最後の会話になった。
ねぇ、綾人。
私ね、綾人のこと…
―ガチャ。
家に帰ると嬉しそうにみるくがかけ寄ってくる。
「…みるく?なぁに、瓶?」
うるんだ瞳でみるくは小さな瓶をくわえている。
中にはキラキラとしたお菓子みたいなものが入っていた。
「くれるの?何か、おいしそう〜」
カラコロン♪
秋の夜は、とても神秘的な季節だ。




