表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

Love4..君のいる場所へ…

ピロリロリ〜♪





「もしもし…!」





「あ、もしもし咲良〜?」





「綾人!?」





「私だよ〜!桃華!」





「あぁ…。どうしたの?」





「今日の卒業パーティー行くでしょ?」





「卒業パーティー?何それ?」





「何それって、塾の卒業祝いのパーティーだって〜!」





「あれ…今日って何日…?みるく…それ」





うるんだ瞳でまたみるくが小さな瓶をくわえていた。





「何なの?これ…」







どうやら今は高校3年生の3月の終わりらしい。





塾の受験組で、卒業&合格祝いパーティーだ。

ワンポイント仮装をして会場に集まった。





私は綾人を探していた。





だってこのパーティーがなかったら、彼は私を好きにはなっていなかったわけで、だから何としてでも綾人を見つけないと。





「あ、咲良危ないっ!」





「え?うわっ─」





しっぽのついた男の子と耳のついた女の子がぶつかった。





まるで絵本の中のようなお話。





「あ、澤山さん!何か久しぶりだ。元気だった?」





綾人。

綾人だ。





なんかすっごく、泣きそうだ。





「うん。元気だったよ。綾人君は?元気だった?」





君はしっぽをふりふりさせながら、笑ってみせた。





「うん。元気だったよ!そうだ。俺ちゃんと彼女と話し合ったんだ。澤山さんとあの日話せたおかげ。これからはお互い前を向いてそれぞれ歩いていくことにしたよ。ありがとね!」






そうして綾人は友だちの元へと行ってしまった。





これで終わった。





もう綾人から私を好きになることはないのだ。





これで入学式で再び出逢ったって、彼は運命だって喜んだりもしないし、仲良くなりたいって思ってもくれない。





私と綾人の恋は始まらない。





あの日、みるくを散歩させながら話した秋の夜、綾人が淋しそうにつぶやいた言葉を思い出していた。





"もしさ、俺から告白されてなくても、俺のこと好きになってた?それとも俺が好きにならなきゃ咲良はもしかして…"





「綾人…会いたいよ。今すぐ会いたい…会いたい。」





この声もこの想いも君に届かない。





届かない。





届かない。





だけど、届けたい。





瓶…瓶だ!

あれを綾人がもう一度食べてくれれば、戻れるかもしれない。





「探さなきゃ…!」





仮装パーティーを抜け出して私は家へと急いだ。





だけどあの瓶は一体何なのだろう?





いつもみるくがくわえてきて、そうすると突然時間軸が移動する。





だけど、いつも私の手元に届く時にはすでに空っぽだ。





もう2本目。

みるくが瓶のある場所を知っているのだろうか?





「ただいまみるく!みるく、あの瓶は一体どこから持ってくるの?」





みるくは知らんぷりをして背を向けている。





「み〜ちゃん?いっぱいお散歩してあげるからさ。いっぱい遊ぼ♪?ねっ?だからお願い!教えてみるく!」





みるく様々だ。





カラコロン♪





背を向けていなくなってしまったみるくがしばらくして、あの瓶を持って戻ってきた。





「みるく!これって…」





だけど今度は空っぽじゃない。





「こんぺいとう…?タブレットかな?確かにおいしそう…」





いつもの瓶に入っていたのは小さくて不思議なかけらで、とてもおいしそうだった。





キラキラとした魔法の薬みたい。





「…よしっ!」





そうして私はまた綾人の元へと走り出した。







「うわっ…!痛っ…」





最悪だ。

痛い。

転んでる場合か、自分…。





「はぁ〜…、もう嫌だ。」





もう戻りたいよ。

いつもの綾人のいる場所へ帰りたい。






「…大丈夫?澤山さん。」





しゃがみこむ私の視界をふわっと誰かがおおった。





「綾人!…くん。どうしたの?」





「どうしたのはこっちのセリフっす!大丈夫?立てる?」





そう言って綾人は優しく手を差しだした。





綾人だ。





もうきっとこのチャンスを逃したらだめだって思った。





もう今しかないって、そう思った。





「お願い!これ食べて、綾人君!一生のお願い。食べて…くれないかなっ」





私は泣いていた。

ごめんね、綾人。





こんなことに巻き込んでしまって本当にごめんね。






でも綾人との恋は私が絶対守るから。

守ってみせるから。






君は優しくのばした手で瓶からそれを取りだした。






「いいよ。」





なんて、優しく微笑みながら…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ