Love4..君のいる場所へ…
ピロリロリ〜♪
「もしもし…!」
「あ、もしもし咲良〜?」
「綾人!?」
「私だよ〜!桃華!」
「あぁ…。どうしたの?」
「今日の卒業パーティー行くでしょ?」
「卒業パーティー?何それ?」
「何それって、塾の卒業祝いのパーティーだって〜!」
「あれ…今日って何日…?みるく…それ」
うるんだ瞳でまたみるくが小さな瓶をくわえていた。
「何なの?これ…」
どうやら今は高校3年生の3月の終わりらしい。
塾の受験組で、卒業&合格祝いパーティーだ。
ワンポイント仮装をして会場に集まった。
私は綾人を探していた。
だってこのパーティーがなかったら、彼は私を好きにはなっていなかったわけで、だから何としてでも綾人を見つけないと。
「あ、咲良危ないっ!」
「え?うわっ─」
しっぽのついた男の子と耳のついた女の子がぶつかった。
まるで絵本の中のようなお話。
「あ、澤山さん!何か久しぶりだ。元気だった?」
綾人。
綾人だ。
なんかすっごく、泣きそうだ。
「うん。元気だったよ。綾人君は?元気だった?」
君はしっぽをふりふりさせながら、笑ってみせた。
「うん。元気だったよ!そうだ。俺ちゃんと彼女と話し合ったんだ。澤山さんとあの日話せたおかげ。これからはお互い前を向いてそれぞれ歩いていくことにしたよ。ありがとね!」
そうして綾人は友だちの元へと行ってしまった。
これで終わった。
もう綾人から私を好きになることはないのだ。
これで入学式で再び出逢ったって、彼は運命だって喜んだりもしないし、仲良くなりたいって思ってもくれない。
私と綾人の恋は始まらない。
あの日、みるくを散歩させながら話した秋の夜、綾人が淋しそうにつぶやいた言葉を思い出していた。
"もしさ、俺から告白されてなくても、俺のこと好きになってた?それとも俺が好きにならなきゃ咲良はもしかして…"
「綾人…会いたいよ。今すぐ会いたい…会いたい。」
この声もこの想いも君に届かない。
届かない。
届かない。
だけど、届けたい。
瓶…瓶だ!
あれを綾人がもう一度食べてくれれば、戻れるかもしれない。
「探さなきゃ…!」
仮装パーティーを抜け出して私は家へと急いだ。
だけどあの瓶は一体何なのだろう?
いつもみるくがくわえてきて、そうすると突然時間軸が移動する。
だけど、いつも私の手元に届く時にはすでに空っぽだ。
もう2本目。
みるくが瓶のある場所を知っているのだろうか?
「ただいまみるく!みるく、あの瓶は一体どこから持ってくるの?」
みるくは知らんぷりをして背を向けている。
「み〜ちゃん?いっぱいお散歩してあげるからさ。いっぱい遊ぼ♪?ねっ?だからお願い!教えてみるく!」
みるく様々だ。
カラコロン♪
背を向けていなくなってしまったみるくがしばらくして、あの瓶を持って戻ってきた。
「みるく!これって…」
だけど今度は空っぽじゃない。
「こんぺいとう…?タブレットかな?確かにおいしそう…」
いつもの瓶に入っていたのは小さくて不思議なかけらで、とてもおいしそうだった。
キラキラとした魔法の薬みたい。
「…よしっ!」
そうして私はまた綾人の元へと走り出した。
「うわっ…!痛っ…」
最悪だ。
痛い。
転んでる場合か、自分…。
「はぁ〜…、もう嫌だ。」
もう戻りたいよ。
いつもの綾人のいる場所へ帰りたい。
「…大丈夫?澤山さん。」
しゃがみこむ私の視界をふわっと誰かがおおった。
「綾人!…くん。どうしたの?」
「どうしたのはこっちのセリフっす!大丈夫?立てる?」
そう言って綾人は優しく手を差しだした。
綾人だ。
もうきっとこのチャンスを逃したらだめだって思った。
もう今しかないって、そう思った。
「お願い!これ食べて、綾人君!一生のお願い。食べて…くれないかなっ」
私は泣いていた。
ごめんね、綾人。
こんなことに巻き込んでしまって本当にごめんね。
でも綾人との恋は私が絶対守るから。
守ってみせるから。
君は優しくのばした手で瓶からそれを取りだした。
「いいよ。」
なんて、優しく微笑みながら…




