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     5 臨戦態勢

「ログハウスかよ」


 雑木林地帯を抜けて、湖畔につくとラピスって子がいるであろうログハウスが見えた。うん、そこそこに大きい家が。どのくらいかというと、2階建てでとにかくデカイ。うん。

 16歳の子が一人暮らしするにはいささか、というよりかかなり大きすぎる家。


「じゃあさっそく」


 さくっと終わらせたいから転移魔法で玄関前まで飛んで玄関をノック。え? 朋弥? 平然とした顔で横に立ってるわよ。


「はーい」

「なんか」

「ああ」


 「「すげぇ暢気な声」」


 そんなことを言ってたらとてとてとかけてくる音がして、玄関が開いた。開いた玄関の先には写真でみたとおり、頭に猫耳があった。

 色白の肌にぱっちりとした目、肩口まで伸びた真白の髪に、身長に似あわず偉く育った胸。軽く見比べても私と同じくらいかな。

 とまあ、こんな具合の子が出迎えた。



「んー、どちらさまで?」

「んー、イグリーフ・マリア。こっちは高峰朋弥。これはさっき拾った毛玉」

「みっ」


 とりあえず自己紹介をしてみた。この毛玉も自分の事を言われたのがわかったのか、短い前足をひょいっとあげた。かわいい。

 それに反して朋弥はぶっきらぼう。毛玉を見習え。


「はぁ、そうですかぁ」

「もういい、さくっといくぞ。ラピス・グレコールで間違いないな?」

「うん」

「じゃあ要件を言う。今すぐラグジュアブールから出ていくぞ」

「うにゅ?」


 朋弥がさくさくしすぎてラピスは意味がよくわかってないようで。


「要点まとめると、この星から安全なとこに逃げるの」

「逃げる? なんで?」

「この星がデスワームの巣窟になったから」

「ほへ?」


 いや、小首傾げられても……うん、すっごい抱きしめて頭なでたい。


「この星が虫の巣になったんだよ」

「はわぁ、大変ですね」

「ねえ、もうこの子抱きしめていい? さっきから我慢してんだけど」

「別にいいんじゃね? というか勝手にしろ」


 まあ、許可? も出たことだし遠慮なく。と、その前に毛玉を床に置く。

 床に置かれた毛玉はおとなしくその場に丸まった。丸まったのはいいけど、ほんと毛玉ね。


「へ? え?」

「うわぁ抱き心地最高だわ、この子。耳触っていい?」

「え? あ、どうぞ。あ、でもッ~」


 ラピスが言いきる前に猫耳を触る。うわぁ、すごい触り心地いいんだけど。

うん、本体が悶えてるけど気にしない。


「あ、やっ、待って」

「やだ」

「セクハラしてんじゃねぇよ痴女」

「誰が痴女よ」

「お前以外の誰がいるんだよ」

「そこにいるでしょうが、毛玉が」

「みー」

「……」

「みー」


 朋弥と毛玉が見つめ合ってる。私はラピスの猫耳と戯れてる。本体が抵抗しだしたけど気にしない。


「刈るか」

「ちょっと、刈ったら魅力なくなるじゃない」

「見てて暑苦しい」

「うにゅあ、いつまで触るんですかっ!」


 するりとラピスが私の腕の中からすり抜けていった。さすが猫。


「えー、いいじゃないもう少しくらい」

「もう少しって、あれ以上されたら……」

「んー? どうなっちゃうのかなぁ?」

「バカやってないでさっさといくぞ。こんな虫の惑星にいつまでもいられるか」


 痺れを切らしのか、毛玉をビビらせたあげくにさっさとしろとか言い出した。なんて身勝手な。


「わかったわよ、ほらいくわよ」

「いくって、どこに?」

「地球」

「ッ!?」


 どこにって聞くから地球って返したら、体をびくつかせてその場にへたり込んだ。え、何? なんかまず事言った?


「なにいじめんてんだよ」

「いじめてないわよ」


 とりあえずへたりこんだラピスにしゃがみ込んで頭をなでる。


「何、どうかしたの?」

「地、球? じゃあ、2人は地球から来たの?」

「あー、そうなるわね。とは言っても、私はコイツにティアから拉致されたんだけど」


 朋弥を指差しながら言うと、ラピスはすこし呆けた顔になった。そこまで変なこと言ってないでしょうに。


「なんでへたり込んでるのかしらないけど、ほら、行くわよ」

「ッいやっ」


 引き起こそうとしたら振り払われた。しかも目に涙をいっぱいに貯めた状態で。いやいやいや、普通じゃないでしょこの反応。


「地球になんて、絶対に行かないッ」


 ありゃ、これはこれは……。


*** *** ***


 まあ、なんとか抵抗に抵抗を重ねて、暴れまくったラピスを宥めて今現在リビングにいる。ティア出身の私はともかく地球人の朋弥には警戒心丸出し。そのせいか、私の腕にしがみついて朋弥のこと睨んでる。


「で、なんで俺睨まれてんの」

「地球に限ったことじゃないけど、“世界”で言えることね。獣人の扱い、知ってる?」

「あー、そういうこと。それで睨まれてるわけか」


 何よ、知ってんじゃない。


 獣人が隷属(れいぞく)として扱われてるって。


「まあ、隷属って言っても爬虫類とか両生類とかそのへんの異質なのだけだけど。でもまあ、獣人=隷属って枠組みが出来上がってる以上そんなの関係なし、獣人全てが隷属として見られてる、あるいはそう思ってる輩がいる」

「地球に過剰反応したところをみると、シークが獣人狩りでもしにきたのか?」


 またいらんことを……。


「ラグジュアブール唯一の獣人って、そういうことでしょ?」

「……」


 ラピスは何も言わずにただうなずいた。はぁ。


「そいつらの人相、憶えてる?」

「……うん」


 よーし、なら話は早い。


「人相うんたら聞きだしてどうするんだよ」

「どうするって……ねえ?」


 あ、やば。


「ッ!?」

「み゛ー」


 ちょっと頭冷やさないとねぇ。殺気とかいろんなもん出しちゃった。

 とりあえずビクついたラピスをなでて、毛玉も宥める。威嚇してたみたいだけど全然、かわいい。


「まあ、その人間どもは置いといて。ラピスは地球に行くのがいや?」


 こくりとうなずいた。というか喋る気ゼロっぽいんだけど、この子。


「また狩られるとか思ってるんでしょ?」

「……私のお母さんとお父さんも、目の前で連れて行かれたから……」

「それっていつ?」

「もう……だいぶ、前」

「1年前? それとも5年前?」

「私が、6歳の頃」

「じゃあ10年間一人暮らしってわけか」


 朋弥の声に反応してラピスの肩がビクついた。ほんと、この男死ねばいいのに。


「てか、10年って事はあんたここでの事知ってたんじゃないの?」

「ここの10年とあっちの10年じゃ時間軸が違うからな」


 一応朋弥でも時間軸の事は知ってたのね。まあ、ここの10年は……地球じゃ50年くらい? まあ、そのくらいの時間差なら人間どももなんとか生きてるでしょ。


「でだ、いい加減決心ついたか?」

「せっかちね」

「せっかち以前の問題だ。さっきから地鳴りがやんでない、しかもこっちに向かってだ」

「……まあね、そんくらいわかってたわよ」

「???」


 ラピスにはわかんないみたいだけど、さっきから小刻みに地鳴りがしてる。これは正直、ラピスの返事は待てないかな。


「もういい、行くぞ。群れがきてる」

「……群れ?」



 腕にしがみついてるラピスごと体を引き起こして、玄関に向かう。もちろん毛玉も回収。


「さてと、いかがなもんか……」

「なによ、どうし……た」


 外に出るとあら不思議。地鳴りはきれいさっぱりにやんでるかわりに、ぐるりとクソムシに囲まれてる。まあ、あれね。

 ピンチ? というか、こいつらこんだけもいたのね。


「こりゃ、まあ」

「ざっと見何匹かしらね、これ」


 さっき追われてた時より量マシみたいだし……うーん。


「数千匹単位はいるんじゃないか?」

「本当、虫の惑星ねここ」


 訳がわかんないといった感じのラピスに毛玉を預けてとりあえず、一発。


「取り合えず500匹くらいっと」


 加減なしで放ったヴィマナは、目線上にいたクソムシを消済みにした。したのはいいけど、全然数減らないんだけど。


「あのさ、これ相手にするくらいならさくっと帰ればいいんじゃないの」

「ラグジュアブールは特殊なんだよ。本来の目的はハンター承認試験の場としての世界だ。だからこのラグジュアブールにおける空間転移は他の世界と違う」

「結論にいなさいよ」

「申請して受理されたらワームホールが開く」

「……申請した?」

「受理されるまであと5分」

「この前さくっと開いたじゃないの」

「あれは事前申請してたんだよ、すぐに帰れるように」


 つまりはあれか、あと5分は虫の惑星に留まらなきゃいけないって事? はぁ。


「ラピス、5分ばかし家の中にいて」

「え?」

「一応、ワームホールは家の中に設定してもらってるから開いたら先に飛び込んどけ」

「え?」


 状況についていけてないラピスを家の中に押し込む。

 まあ、家の中にワームホール設置ってとこは気がきいてるじゃないの、こいつ。


「さてはて」

「嫌気がするわね」


 臨戦態勢を取った瞬間、クソムシどもが土煙を上げて突っ込んできた。


久々の更新。


昔アゲハの幼虫に偉い目にあわされたことがあるんですよ。あの頭からYってのだすあいつです。

ちんまいころばあさまの家にいってベランダで遊んでた時、部屋に戻ろうとしたときサッシに手のひらだいのがうねうねと動いてたんですよ。15センチくらいですかね。もうパニックになって泣き叫んだ憶えがあります。

結末を言えば、虫が大っきらいです!

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