ゲーマーの彼女
橘結華ちゃんが愛しの彼氏こと彼ぴぃと出会ったのは大学生のときです。講義が一緒だったんです。でも仲を深めたきっかけは大人気ゲームのThe Four Major Powers――通称FMPを遊んだことです。
FMPはいわゆるMOBAと呼ばれるジャンルに分類されます。五人制のpvp。簡単に言えばバトル有りの陣取りゲームですね。
当時FMPはアニメ化が決定しており、二次創作も盛んでした。結華ちゃんはこの手のゲームが初めてでしたが、流行に乗り、参加した次第です。
彼ぴぃはこのFMPがめちゃめちゃ上手なんです。結華ちゃんは彼ぴぃから基礎を教わりながら一緒に遊びました。いっぱい遊んでるうちにつき合うようになったのです。
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結華ちゃんはどこにでもいる普通の女子大生ですが、そこそこの自己顕示欲の持ち主です。今日も日課のSNSを眺めてると、気になる投稿を見かけました。
どうもFMP絡みの話題ですね。投稿には試合の動画も添付されており、この状況に置ける正しい行動について議論されているようです。
まあ簡単に言えば詰将棋のようなものですよ。
結華ちゃんも彼ぴぃのおかげで今では立派な高位ランカーです。さっそく意見を投稿します。が、予想に反し、返ってきたのはバッシングの嵐。
以下批判の内容です。
『なに言ってんの?』
『エアプは黙ってろ』
『こいつ知ってる。典型的なサポメス。いつも男にキャリーしてもらってる』
等々。
「死ね」
結華ちゃんは机を叩きました。正直言い返したい気持ちはあります。でもぉ、やっぱし女の子ですし、叩かれるのは怖いんです。
というわけで、いったん落ち着き、手作りキッシュ(海外の料理に挑戦してみたんです)の写真をカチャリ、SNSに投稿します。このとき、自分の指先が映るようにするのも怠りません。こういうときでなきゃ、キラキラネイルを自慢できませんからね。
その後愛しの彼ぴぃに電話しました。
もはや復讐は望んでおりません。目的はただひとつ、彼ぴぃに慰めてもらうこと。
「どしたの結華?」
彼ぴぃの低い声が電話越しに聞こえます。なんて安心できる声でしょう。
「あのね、聞いて聞いて――」
結華ちゃんは甘えるように言いました。大概の女の子たちの例に漏れず、彼氏の前では普段より声が二トーン高くなります。
「なになに――。うん、うん」
「ね、酷いでしょ?」
「ネットの話なんか気にするな」
とまあそこそこの正論を述べます。
「でもぉ」
「しょうがないよ。無視無視」
「今から会える?」
ここは当然甘えんぼボイスです。
「なんで?」
「会いたいから。ダメ?」
と上目遣い。もっとも、電話越しですが。
「まあ、いいよ」
彼ぴぃのちょっと緊張した声。
萌です。
「ありがとう。待ってる」
結華ちゃんは電話を切り、ニヤッと笑いました。タンスから勝負下着を取り、風呂に直行。
今日はいい夜になりそうです。
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嬉しい知らせがあります。彼ぴぃがFMPのプロゲーマーになりました。
結華ちゃんが大学三年生のときです。
彼ぴぃの就職? にもちろん結華ちゃんも大喜び。自己顕示はうなぎ登り。さっそくSNSにも匂わせ投稿。いいねをいっぱい貰います。
ただプロゲーマーは大変な仕事です。彼ぴぃは大学の合間を縫って、時間を調整し、夜中までスクリム(練習試合のことですね)です。
しかも、あんまし金にならんから、配信したり、解説動画出したり、もう大忙し。彼女と遊ぶ余裕なんかあるはずもなく、当初結華ちゃんは寂しい思いをしました。
が、すぐ新しい生きがいを見つけます。それは彼ぴぃを支えること。料理を作ったり、動画編集をしたり、試合の応援にも駆けつけます。
プロゲーマーなんか、野郎ばっかしですからね。チームメイトたちも結華ちゃんには姫プオーラ全開。結華ちゃんの自己肯定感は急上昇。気持ちは甲子園常連校のマネージャー。チームを支えます。
応援の席では、
「まずい。このままじゃジリ貧だ」
ってリザーブ君の焦りに対し、
「だいじょうぶ。あいつ(彼ぴぃ)はこんなところで諦めるような奴じゃないから」
ってなんか後方彼女面。まあ彼女ではあるのですが。なんか達観してます。
ああ、ちなみにその試合は彼ぴぃたちの負けです。とは言えシーズン全体を通してみれば、プロチームとしては中々の業績を残しました。
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彼ぴぃは一年間だけプロチームに在籍し、その後ストストリーマーになりました。この決断は収入の安定が理由です。プロとしての知名度もあり、配信や動画投稿だけでも充分やってけると判断したのです。
実際彼ぴぃの落ち着いた低音ボイスの配信にはそこそこの人気があります。また彼の作る毒にも薬にもならない解説動画も、初心者たちには人気なんです。
こんな事情もあり、大学卒業少し前に結華ちゃんと彼ぴぃは結婚しました。もちろんSNSにも投稿。祝福の言葉をいっぱい貰いました。
この後もたまに炎上(主に結華ちゃんが原因が)することはあれど、ふたりはそこそこ幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。




