鋼鉄のワイヤーと千人の求婚者 〜1000 Princes' 3D-Maneuver Engagement〜
五〇メートルのシンデレラたちが、その圧倒的な質量で大陸を揺らしていた、その時です。
雲を割って、キィィィィィンという、ガス噴射の鋭い高音が響き渡りました。
空を埋め尽くしたのは、白馬を捨て、腰に蒸気駆動のアンカー射出機——通称「立体機動・求婚装置」を装着した、「千人の王子様」の軍勢でした。
「硝子の靴のサイズを測る前に、その強靭なステップを封じてやる!」
千人の王子たちは、一斉にワイヤーを射出。超高硬度鋼のアンカーが、シンデレラの五〇メートルのドレスの裾や丈夫な生地へと次々に突き刺さりました。
彼らは「一千万人の精密法師」が設計した、〇・九一五二...寸単位で制御されるガス噴射により、重力を無視した軌道で巨女たちの周囲を高速旋回し始めました。
シンデレラたちが五〇メートルの腕を振って王子たちを捕まえようとしますが、彼らは「242cmの赤ずきん」の吐息による風圧すら利用して加速。千人の王子は、シンデレラの視界の外——うなじや背後へと、一斉に詰め寄りました。
「結婚の誓い(巨大な契約書)を受け取れ!」
王子たちが一斉にワイヤーを巻き取り、シンデレラたちの周囲を複雑な幾何学模様で縛り上げようとした、その瞬間でした。
戦場の中心、五〇メートルの質量が集中する空間の歪みに、突如として「漆黒の巨大な幾何学ゲート」が出現しました。
それはこの世界のキャパシティを超えた「五〇メートル×百人」という異常数値を修正するために現れた、次元の掃除機でした。
「あら? 足元がふわふわするわね……」
五〇メートルのシンデレラたちは、王子たちに絡め取られたワイヤーごと、抗う術なくその謎のゲートへと吸い込まれていきました。
まるで巨大な掃除機に吸い込まれるカーテンのように、百人の巨女たちは音もなく、その圧倒的な質量ごと次元の彼方へと消滅してしまったのです。
アンカーを切り離すのが遅れた王子たちも、その慣性のままゲートの縁へと弾き飛ばされました。
命に別状はありませんでしたが、彼らはそのまま成層圏までバウンドし、キラキラと輝く星となって夜空へと消えていきました。
あとに残されたのは、主を失い地上に落下した、数万トンの「硝子の靴」の残骸と、それを見上げる「182cmの星の金塊」の呆然とした表情だけでした。




