表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満載グリム童話・昔話集:その重みに耐えかねて  作者: イグアナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/17

ふしぎな森の、たくさんのおにいさんとおねえさん〜Many Hansel and Gretel〜

むかしむかし、あるところに、とってもとっても大きなお屋敷がありました。

 そこには一組の木こりの夫婦と、その子供たちが住んでいました。

 子供たちの名前は、男の子はみんなヘンゼル、女の子はみんなグレーテルといいます。

 お父さんは、子供たちをとても愛していました。その愛は、数にすればそれぞれ百万ずつという、空に輝く星々にも負けないほどのものでした。

 お父さんは毎日、数えきれないほどの金貨をパンに変えては、子供たちの口に放り込みました。けれど、どれほどパンがあっても足りません。

 ついに貯金箱は空っぽになり、家の重みで地盤沈下が始まりました。お父さんは痩せ細って、泣きながらお母さんに言いました。

「このままでは、世界の小麦が尽きてしまう。明日、みんなで森へ行こう」

 翌朝、二百万人の子供たちは「はーい!」と返事をしました。

 その声があまりに大きかったので、近隣諸国の窓ガラスはすべて粉々に砕け散りました。

 お父さんは、二百万人の子供たちを連れて森へ入りました。

 ヘンゼルたちは、帰り道の目印にパン屑を撒こうとしました。けれど、一人が撒いたパン屑は、後ろに続く九十九万九千九百九十九人の兄弟たちの足によって、瞬く間に踏み固められてしまいました。

 森の奥まで続くその道は、目印どころか、白く硬く練り固められた「パンのアスファルト道路」となり、森の草木を一本残らず押し潰してしまったのです。

 やがて、お父さんは子供たちを置いて立ち去りました。

 夜になり、お腹を空かせた二百万人の子供たちの前に、お菓子でできた小さな家が現れました。

 中から腰の曲がったお婆さんが出てきて言いました。

「おやおや、可愛いお客さんだね。中に入ってお食べ」

 けれど、お婆さんは気づいていませんでした。

 その「お菓子の家」は、二百万人の一口にも満たないということを。

 そして、空腹に耐えかねた子供たちの群れが、アリの群れが角砂糖を消し去るよりも速い速度で、家そのものを分子レベルまで解体し始めていることを――。

 お婆さんが悲鳴を上げる間もなく、家は土台から舐めとられ、お婆さんの資産であった宝石の山も、二百万人の手によって一瞬で分配されました。

 一人当たりの取り分はほんのわずかでしたが、二百万人が一斉に村へ帰ったとき、王国の経済は宝石の過剰供給によるハイパーインフレで、音を立てて崩壊しました。

 お父さんは戻ってきた子供たちを抱きしめましたが、その目には「明日からの二百万食のパンをどうすればいいのか」という、深い、深い絶望の色が浮かんでいましたとさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ