勇者という肩書きを捨てるためには?
魔王になるため、まずは勇者という肩書きを捨てなければならないと思った俺は、今まで培ってきた技を使って村を、町を襲うことにした
勇者と呼ばれているのなら、勇者がしないことをすればいい
「最初は影響力がありそうな大きめの町がいいかな…大きすぎても勝てなかってら意味無いし」
これでも世界中を旅した勇者だ、どの町がちょうどいいかどうか候補はある
だかふと思った
「襲うって…どうやるんだ?」
元勇者の身としては、襲い方など全く知らない
魔物が村を襲っている所に遭遇したことは何度かあるが、どれも兵士が戦っていて、そこに俺が手助けで戦ったことしかないから、襲われる前に返り討ちにしている所しか見たことない
「どうしたもんかなぁ」
そんなことを考えながら歩いていた
そんな時
「全体!攻撃態勢を整えろ!」
勇ましい声が響き渡る
「ん?」
見ると、そこそこ栄えた町の門の前にずらっと並んだ兵士たちと、その向かいに百はいるであろう魔物の大群がいた
「これは…」
勇者時代であれば手助けする所であるが、ここは陰で見守ることにした
「グルルルッ!!」
魔物は大きな犬型の魔物で、強さでいえば中の下くらいだが、頭がよく、群れで行動されれば上級騎士でも手を焼く魔物だ
「それにしてもこの数はどういうことだ?
普通、群れても20匹いくかどうかなんだが…」
今まで見たことの無い程の大群に不思議に思っていると、
「攻撃開始!!」
軍の隊長であるだろう男が指揮をとった
「「「「オォォォォ!!!」」」」
そんな雄叫びと共に一斉に魔物へ攻撃をしかける兵士たち、それを見て魔物も雄叫びをあげ、応戦した
〜数時間後〜
戦いは終わった、魔物が勝った
正直、結果は分かっていた、栄えた町といっても、王都には遠く及ばず、兵士の数も50程で、腕の立つ上級レベルの騎士すらいない、
町はひどい有り様で、そこら中飛び散った血で汚れ、上半身の無い死体、崩れた家、あちらこちらから聞こえる泣き声、叫び声、戦争のように火が無いから死体が焼かれることは無く、無惨な光景をよりはっきりと見ることができる
俺は、そんな町を見ながら思った
「こんな…これが襲うって事なのか?」
ものの数時間で廃墟と化した場所を眺めながら、これから自分がしようとしている事を思い知った
「できるのか?俺に… でも、平和を作るために必要なことなら、やってやる!」
勇者という肩書きを外すためには、残酷にならなければならない、人間を敵に回さなければならないと思った