第9話 お休み
私が目を覚ました時。そこは見慣れない天井が広がっていました。
「ここは……?」
「私の家だよ。」
そこに居たのは八百屋のおばさんがいました。
「ご、ごめんなさい!すぐに……」
「気にしなさんな。聞けばアンタもあの貴族に嵌められたんだろ?なら、私たちの仲間だよ。」
「仲間……ですか?」
「そうだよ。近々国に訴えるんだ。圧政を敷く貴族に一泡吹かせるんだよ。」
「……恐らく改善はしないかも……」
「えっ……」
「国は……貴族を優遇します。理由は国にお金を納めるのは平民より貴族です。よほどの悪事、もしくは貧困貴族でない限りはお取り潰しはないかと……」
「でも、やらないよりはマシさね!」
「……そうですね……おばさん。封筒と紙はありますか?」
「ん?何をするんだい?」
「ええ……知り合いにちょっと手紙を書きます。」
「アリス起きた⁉︎」
「ええ、ご心配をおかけしました。」
私を見ると少し泣きそうな顔をしてレミさんは私を抱き締めてくれました。
「良かった……本当に良かった!」
「ごめん……なさい……ご心配を……おかけしました。」
「うん!心配した!」
こんなふうに泣いてくれる方はいませんでした。周りから孤立していく私を助けてくれる方はアルセイヌ様だけで……そしてその絆も儚く消えてしまいました。
「ありがとう……ございます。」
「うん!今日はどうする?帰れる?」
「はい!」
私は力一杯頷きました。そして八百屋のおばさんと助けてくれた方々にお礼を言うと帰宅しました。私の手紙は八百屋のおばさんに渡しました。恐らく読んで頂けると信じて……
「ねぇー!本当に大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。気が抜けて倒れただけですから。」
帰り道からずっとレミさんは心配してくれていますが……気にし過ぎな気がします。
「あの、本当に大丈夫ですから……気にしないで下さい。」
「うん……ならいいけど……」
レミは何故か目を逸らしました。それはまるで大丈夫という言葉を信じてない様子でした。
「……レミさん……もしかして私が何処かへ行ってしまうと思っているのですか?」
身体が少しピクッと動きました。どうやら当たりのようです。
「だって、今までも大丈夫って言ってくれた人はみんな何処かに行っちゃったもん……アリスもきっと……」
私は次の言葉を言う前に抱きしめました。
「安心して下さい……私はあの方には屈しません……」
「でも……それでアリスが傷つくのは……嫌だ!」
「大丈夫ですよ。たぶん……あの方が手紙を読んで貰えれば……ですがね……」
「あの方?」
「ええ、悪人は絶対許さないお人ですから……」
「ふーん……」
「だから大丈夫です!私はレミさんとずっと一緒です。例えここを離れるとしてもその時はレミさんと一緒ですよ。」
「それは……プロポーズってやつ?」
「えっ?」
私は顔が赤くなるのを感じてしまいました。そしてドキドキしだしました。
「そ、そんな……大袈裟なものでは……」
「あはは!だよね!でも……嬉しい!ありがとう!」
よほど嬉しいのでしょうか……抱きつく腕の力が強くて離せません。流石にこの状態では休めないので出来ればそろそろ離れて欲しいのですが……
「……もう少しだけ……」
「えっ?」
「もう少しだけ……このままいたい。」
「……はい。」
レミさんは眠くなるまで私を抱きしめていました。そして翌朝起きるといつものレミさんに戻っていました。
「おはよーアリス!」
「おはようございます。レミさん!」
「今日はのんびりしてようか!」
「えっ?いいんですか?」
「うん!それよりさ!今日は連れて行きたい場所があるんだ!」
「えっ……では、エスコートよろしくお願いします!」
私はレミさんの連れて行きたいという場所に行く事にしました。
「レミさんの連れて行きたい場所とは何処ですか?」
「ん〜〜山の上の方!」
「えっ……」
「だから丸一日休みにしないと行けないんだ!へへへ!」
「わ、私そんなに体力ないですよ?」
「大丈夫!大丈夫!その時は私がおんぶしてあげるから!」
ニコニコ笑っていますが私としては恥ずかしい事この上ないです。私は意地でも自分の足で登る事にします。
「ほらほら!あと少しだよー!頑張れ!」
「ハァハァ……はい……」
最初の意地を捨ててしまいたい気分でした。想像の5倍くらい険しい山道でした。帰り道なんてもう覚えていません。でも、レミさんはもうそこで待っていてくれます。私は最後の力を振り絞って足を前に運びます。
「ハァ……ハァ……」
「アリスとうちゃーく!ほらほら!顔を上げてみて!」
「えっ……………………………す、凄い……」
そこに広がっていたのは色とりどりの花畑でした。
「今日はここで休んでから帰ろう!こっち来て!」
「わ、はい!」
私は腕を引っ張られて連れて行かれたのは湧き水の出てる場所でした。私は湧き水に手をつけましたが反射的に手を引っ込めました。
「つ、冷たいですね……」
「湧き水だもん!冷たいよーでも……美味しい!」
レミさんは湧き水を手で掬って一気に飲み干しました。私も先程手を付けて冷たさは分かったので再び手をつけて水を掬い一口飲みました。
「美味しいです。」
「でしょー!」
ここに来てからはずっとニコニコと笑っています。お気に入りの場所なのが分かります。
「さぁ、今日はあそこに泊まるよ。」
そう言って指差したのは大きな木の下でした。
「あ、あそこで休むんですか?」
「大丈夫だよー。何故かここにくる動物たちは穏やかだからね。襲われた事もないよ。」
「いえ……食べ物も何も持ってきてませんよ?」
「えっ?1日くらい食べなくても大丈夫だよー。」
私は一瞬驚きましたけど……すぐに気を取り直しました。
「そうですね!でも、その分沢山お話しして下さいね!」
レミもさんは少し驚いた顔をしていましたがすぐに調子を取り戻しました。
「うん!眠くなるまで一緒にお話ししよ!」
そうして私たちは木の下に座って火が沈んで……お月様が出てきてお星様が空いっぱい広がっても話ました。好きな物、これまでの人生での苦しかった事、楽しかった事、沢山話してましたが途中で眠くなって寝ちゃいました。そして朝起きると私の腕を枕にして寝ているレミさんがいました。それが何故か愛おしく思えました。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新もお楽しみに!
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