第7話 物々交換
「うおおりゃーー!待ーちーやーがーれーーー!」
「レ、レミさん……待って下さい!」
私たちは今日は森の中にいました。レミさんは鹿を見つけた瞬間目の色が変わって走り出してしまいました。
「レミさん!待ってください!武器も持たずに狩りは無謀です!」
「武器?あるよーー!」
そう言ってズボンのポケットから取り出したのは石のナイフでした。
「ま、まさかそれで刺して……」
「うりゃーー!」
レミさんはそのまま鹿の背中に乗って石のナイフを鹿の頭に突き刺しました。
「う、嘘……」
「よっしゃー!今日はご馳走だーー!」
これには流石に驚きました。ナイフ一本で鹿を狩っちゃうなんて……普通にありえません。男性でも狩りには槍を使います。貴族だと銃を使う方もいると聞きますが……
「ん……どったの?アリス?」
ほぼ素手で狩るなんて正気の沙汰とは思えません。
「い、いえ……なんでも……」
「なら手伝ってー!今日はお肉だよ!早くしないと狼たちに盗られちゃうよ!」
「は、はい!」
これが命を戴くという事……昨日お魚を食べる時も少し考えました。命を戴くとは殺さなければなりません。それは自分が生きる為に必要な事……そこにそれ以外の感情を持ち込んではいけない。持ち込めば自分が食べられるのだから。
「あの、この鹿は一頭全て私たちだけで食べられるのですか?」
「無理だよ。だから一旦持ち帰るよ。そしてこれを……売るんだよ!」
まさかの発言に少し驚きました。売るという選択肢があるという事、それはレミさんがまだ人との繋がりを持っているという事だからです。
「あの、解体はレミさんが?」
「私は出来ないよ。だからお肉屋さんに持って行くの。でもその前に家にある薬草とかも売るんだ。まぁ売るというか物々交換だよ。」
「まぁ見ててよ。」
「は、はぁ……」
私は不安な気持ちの中少しワクワクしていました。商売などした事がなかったのもありますが、私自身も少し興味があったのです。
「あの……どちらに向かうんですか?」
「あの町のお肉屋さんだよー。」
森を少し抜けた時町の時計台が見えました。私が住んでいた屋敷から2つほど離れた町でした。同じ国の中ですが知り合いもいないでしょう……
「おっちゃん!久しぶり!鹿捕まえたよ!あとこれ薬草!今回は少ないからおじさんに全部あげるね。」
「おおー、レミか!久しぶりだな!分かった解体してやるからちょっと待ってな。あと、薬草ありがとうな!」
「うん!いつもありがとう!」
ここに来るまでに結構な方がレミさんに声をかけていました。その中で私を知る者はおらず私も平穏にこれました。
「おばちゃん!野菜下さい!」
「あら、レミちゃん。そちらは?」
「ん?友達のアリスだよ!今一緒に住んでるの!」
「へぇーそうかいそうかい!じゃあいつものね。」
八百屋のおばさんが出してきたのは複数の野菜でした。
「あー、ちょいちょい……」
八百屋のおばさんが私を呼びとめ耳打ちしました。
「レミはあぁ見えて寂しがり屋さんでね。なるべくなら一緒に居てあげてね。その内あなたも去ってしまう人間なんだろうからさ……」
「……はい。」
この言い方は恐らく今までもレミさんと一緒に居た方はいたのでしょう。そしてその全員がどこかに去ってしまったのでしょう……そして私もいつか……
「でも、大丈夫です!あの子を悲しませるつまりはありませんから!」
八百屋のおばさんは驚いた顔をしていました。そして前からはレミさんが呼んでいます。
「アリスーーー!いくよーー!」
「は、はい!では!」
私は八百屋のおばさんにお辞儀して向かいました。
「ふはは!レミ……今回は長く居てくれるかもよ。」
私たちはお肉屋さんに戻りました。戻るともう鹿の形は影も形もありませんでした。
「流石、おじさんもう解体出来てた!」
「おうよ!じゃあこれはレミの取り分だ。他はいつも通りで良いんだな?」
「うん!八百屋のおばちゃんと金具店のおじさん。後は町の人たちに早い者勝ちで!」
「おう、任せな!」
金具店はまだ行っていませんでした。つまり今から行くのでしょう。その予想通りでした。帰り道に金具屋さんに寄りました。
「ちょっと待っててね。」
「行かなくても大丈夫ですか?」
「うん!捌く為のナイフを研いでもらってただけだからね。すぐに貰ってくるよ。」
私は壁に背中を預けて立っていました。しかし私は背筋が凍る様な感覚に襲われました。
「あら、お久しぶりね……アリスさん?」
「あ、あなたは……フリーラ……さん……」
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