第2話 除名
昨日の話を知った両親は私に激怒した。
「この恥晒しが!」
「なんて事を……人様にいじめをして隠しているなんて恥ずかしい事この上ないわ。」
「違うんです。お父様お母様!私はやっていません!」
「ええい!貴様の様な愚行をする娘の言葉を信じる者がおるのか!?」
「本当にやってないのです……」
何故誰も信じてくれないのか……分からなかった。それでも、私は身の潔白を証明しようとした。しかし両親は聞く耳を持たなかった。結局私は自室待機を言われて現在3日目です。
そうして4日目の朝、父と母が部屋に入ってきて一言……
「お前を家系から除名する。」
「学院からも除名処分とすると先程手紙がきました。」
「そんな……私は何もしていないのに……」
「それとあなたの居場所はここにはもうないわ。出て行きなさい。服はこれをあげるわ。早く出て行きなさい!」
お母様から渡されたのはボロボロ洋服でした。私は泣きながら着替え、そのまま着の身着のまま屋敷を出て行くのでした。お金もない人脈もない。このまま誰にも知られないまま何処かで野垂れ死ぬ……そんな未来が頭の片隅に浮かびました。でも、そんな事にならない様に考えないといけません。
3日後……私は……死にかけていました……
「……私は……ここで死ぬのかしら……」
もう立てません、歩けません……こうして静かでお腹が空いていると神経が研ぎ澄まされてくるのがわかりました。ゆっくりとですが足音が聞こえます。複数の足音です。野生動物でしょう。私を食べに来たのでしょうか……良いでしょう……
「ガルルルル……」
「ガル……」
もう何も見えませんが……何かが近くにいるのは分かります。
(私は……幸せになってはいけなかったのでしょうか……?)
そんな自問自答をしている中で私は意識を失いました。
私はレミ・エーファ。1人で山に暮らす女の子です。山にある水や魚、キノコ、木の実は私の食料だ。生きる為ならキツネだって捕まえるよ。そんな私がいつもの様に散歩しているとオオカミ達が走って行くのが見えた。たぶん狩りだ。上手くやれば鹿肉のお溢れが貰える。私は走ってオオカミたちの後を追った。
(あれは……人?)
木に背中を預けて寝ている様に見えるのは女の人だった。私はすぐに飛び出した。その瞬間オオカミ達は一目散に逃げて行った。失礼な奴らだ。
「大丈夫?」
「……」
返事はなかった。だけど息はしてた。綺麗な人だった。髪は長い黒髪で肌は白い……きっとお嬢様だと思った。
ここに置いていたら今度こそ食べられる。私は家にしてる洞窟に連れて帰った。藁を集めて出来た簡易的な寝床に寝かせて。保管していた水を沸かした後に冷まして少し飲ませてあげた。呼吸はしているけどやっぱり目は覚さない。後は起きるのを待つしかなさそうだ。とりあえず起きた時にお腹が空いてるだろうから魚ときのこを焼いておく。
「ん……」
起きると私は藁の上で寝ていました。そしてその近くには1人の女の子がいました。
「おっ、起きたね!おはよう!」
「お、おはようございます。」
赤いセミロングの髪、少し焼けた肌。目は少し大きいかな?元気な子だった。
「お姉さんお腹空いてるでしょー!ほれ、魚食べなー!」
「えっ……あ、ありがとうございます……」
一口食べた感想は苦いだった。でも凄く美味しかった。
「美味しいでしょー、今日朝一で採って来たからねー!」
ニコニコと笑う少女は私には眩しく思えました。
「えっと……あなたお名前は?」
「ん?あー!自己紹介まだだったね!私はレミ!レミ・エファーだよ!よろしくね!」
レミさんは手を出して握手を求めてきました。とてもフレンドリーな方で私も手を差し出して握手します。
「助けてくれてありがとうレミさん。私はアリス・グラン。アリスと呼んで下さい。」
「アリス……良い名前だね!女の子らしくて!」
「それはレミさんも同じです。可愛いお名前です。」
「えへへ。ありがとうアリス!ところで……アリスは何であんな所で倒れてたの?」
「え、えーと……」
「道に迷ったのなら私が町まで送っていくよ。森で道に迷う事ってよくあるからさ。大丈夫大丈夫!」
「いえ、そういう訳では……」
「ん?訳ありみたいだねー……じゃあここに居たら?」
「えっ?」
突然の申し出に私は驚いてしまいました。
「良いん……ですか?」
「いいよ!私1人だけだし、話し相手も欲しかったから!」
私は少し考えました。そして……
「分かりました。私でお話し相手になれるのなら……」
「やったー!」
本当に嬉しいのでしょう。レミさんは飛び跳ねて喜んでいます。それを見て私も嬉しくなりました。なぜならこんなに喜んで貰えた事などなかったからです。いつもいじめられてて近くにいるだけでも巻き込まれてしまう為にみんなから煙たがられていた私にとって喜ばれるのは嬉しい限りなのでした。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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