第10話 手紙
時間が少し進みアリス達が山頂の花畑を楽しんでから3日後のゲイル家では……
「クソ!やっぱり違ったんじゃないか!」
俺は読んでいた資料を投げた。何故ならそれらは全てアリスが無実である証拠だったからだ。
「坊ちゃん……落ち着いて下さい。」
「ハァハァ……これが落ち着いていられるか!俺は無実の人間を貶めてしまった。しっかり確認もせず無実の人間を大勢の前で辱めたのだぞ……アリスに……なんと詫びればいいのだ……俺は……」
金を使えばすぐに裏は取れた。情報屋では有名な話だったそうだ。金を使い遠回しにアリスをいじめ、口裏を合わせる為にまた金を使う。そして今回の教師の自殺も学校側に金を払い隠蔽と捏造をした様だ。しかし裏社会の情報屋はそれをも掴んでいる。巧みに隠そうとも簡単にバレるのだ。
「それを言い出せば私にもその責任の一端はあります。」
「いいや、爺やに責任はない!決めたのは俺だ。俺の責任だ!」
「では、どうなさいますか……?」
「まずはアリスの名誉回復だ。各所に手紙を出す。その後私は責任を取り家督を放棄し屋敷を出る。」
「そうですか……わかりました。では、紙と書くもの、そしてあの晩参加した者達の名簿を持ってまいります。」
「頼む……」
爺やが部屋を出たと入れ替わりで1人の侍女が入ってきた。
「失礼します。アルセイヌ様。」
「どうした?」
「あの……その……」
なんとも歯切れの悪い返事、少し怯えた様な雰囲気だったので少し柔らかい雰囲気と口調にした。すると少し落ち着いたのかゆっくりと話始めた。
「どうかしたのかい?」
「はい、アルセイヌ様宛にお手紙がきておりまして……」
そのくらいの事で何故ここまでビクビクしているのかわからなかった。つまり差出人に問題があるのだろう。
「差し出し人は誰なんだい?」
「はい……アリス・グラン様です。」
俺は椅子から立ち上がり侍女から手紙を奪い取った。本来の俺ならこんな事はしない。だが今はアリスという名に敏感になっていたのだ。
「あっ……すまない。怪我はないか?」
「は、はい!」
「そうか……驚かせたな。下がってくれ。」
「か、かしこまりました。」
俺は少し汚れた封筒を開け手紙を読んだ。あの一件でアリスは家を追い出されたという。グラン家の家族がアリスを探す一助となってくれればと思い所在地を知ろうとしたのだ。しかし手紙の内容は全く違っていたのだった。
『拝啓アルセイヌ様、
不躾な手紙大変申し訳ございません。今は私の名前すら見るだけで不快かと存じます。申し訳ございません。ですがどうかフランクという町をお救い下さい。この町の住人はとある貴族により不当に扱われております。中には町を追い出された者もいると聞きました。どうかフランクの町に住む人々をお救いください。私を助けるために手を差し伸べた町の方々が処罰される前に……どうかお助け下さい。』
フランクは確かベラ家の領地だったな……そして2日後にフリーラはここに来る……ならばやる事は1つだな。
「坊ちゃん。こちらに一式取り揃えておきました。」
「ありがとう。あともう1つ頼みたい事があるんだが……頼めるか?」
「なんなりと……」
(どうやら俺にはまだ仕事がある様だな……)
逃した魚は大きい……これは捕まえる寸前で逃してしまい後悔するという事のようだが……今回は逃した女は俺には勿体無いほど心が綺麗だった様だ。その証拠に手紙には謝罪文はあっても反抗、抵抗の言葉なかったのだから。
(俺から解放されて良かったな……アリス)
俺は机に向い招待客50名全員にアリスの無罪とフリーラの悪事を書き綴った。これでまだ何かを言う者がいるのなら自ら行って証拠を見てもらう。それが今の俺に出来る贖罪なのだから。
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