自分?悪党ですけど何か?
「お母さんお母さん、一緒に遊ぼうよ」
少年は母親に甘える様に接してきた。まだ歳は幼い4歳ぐらいの子供が親と一緒に遊びたいと思い近づいていた。
しかし、親は今は忙しいからと言って少年を持ち上げて遠くにおいたのであった。
少年はきっと良い子にしていたら来てくれると信じて親の言う通りに静かに待っていた。しかし、いくら待っても親が来てくれることはなかった。
ある日にいつも待っているから今日は遊んでといつも以上に粘っていた。すると帰っきたのは子供に対しての暴力であった。
子供はなんで僕はお母さんの言う通りに待っていたのになんでと言って泣き出した。すると騒ぎ出して親が黙らせようと更に暴力を重ねた。
いつしか子供は親から離れて一人静かに過ごすようになっていった。他の同級生ぐらいの子供たちを見てみると親と一緒に楽しく暮らしている光景を目にするたびに泣いていた。
それだけならばまだ救いはあったかもしれないけど親は血を分けた弟はとても可愛がっていた。自分にはされた事もないことをされて楽しそうであった。
なんで自分は他の子と違うのとなんで自分だけと泣くことしか出来なかった。小学生になると親は勉強でなんでこんなに出来ないのと言いながら更に暴力行為が増えていった。
そんな事だけでも辛いのにここで同級生からの虐めも受け始めていた。毎日毎日、生きるのが辛いと思えるぐらいに誰でも良いから助けてほしかった。
けれど助けなど来ることはなかった、中学生頃になるとこれらが更に激しさを増していた。何回、死にたいと考えたのか忘れるぐらいに追い込まれていた。
その為、この頃は本当に周りが全てが敵に見えていた。自分以外は自分を否定する者としか見えておらず友達などは誰もいなかった。
先生も信用せずに信用出来るのは自分自身だけ、その頃から自分は今まで自分の事を馬鹿にしたり否定した者たちを見返す為に努力に努力を重ねた。
それが平凡の人の数十倍だろうとも今まで受けた怒り、悲しみが支えてくれて成し遂げた。
その結果、周りよりもいろんな知識や力など手に入れた。周りからは気持ち悪いとか悪人とか言われ続いたが自分は負け犬が吠えているなと思うぐらいしか感じられなかった。
もう敵だと思っている奴らが何を言っても自分はどうでも良かった。そうして自分の周りには誰もいなくなり平和になった。
家でも力をつけて親に反撃できるようになっていた、親と弟からお前なんていなければ良かったと親は後悔の色をだし弟からは敵を見ているように言っていた。
自分はそれを聞いて喜びながらそうですかと皮肉の笑みを出しながら過ごした。自分は心から信用出来るのは自分のみ他は所詮、敵。
血を分けた弟も実の親も敵でしかなかった、味方など存在はしないそんなのは架空だと信じて生きてきた。
この世は本当に残酷だなと思い生きた。これを見て自分はなんで前世の記憶まで走馬灯する必要があるのかなとため息をつくように見ていた時に誰かがいると思って周りを見てみるとそこにはエルフみたいだけど明らかに普通のエルフと違うと感じた。
もしかしたら神様というものなのかなと考えていると向こうが静かにしながら自分の考えを答えてくれた。
「はい、私はリーフと申します、一応ですがエルフの神様をしている者です。どうかこの機会に覚えてくれたら幸いです」
あまりにも礼儀正しいのですぐに自分も名前を名乗ることにした。
「こちらこそ、分かってはいると思いますが自分は人間あり、アッシュと申します。失礼ですがエルフの神様が自分にどのようなご用件でしょうか。あんまり自分に期待はしないでくださいね、悪党ですから」
するとエルフの神様であるリーフはすこし笑みを出しながら本当の悪党は自分から言わないですよと言われた。
いやいや、自分のことだから自分がいろんな人を見てきたけどここまでの悪党はいませんでしたよ。何回もここまで自分自身がなんでこんな悪党を放置しているのかな神様はと思っていたぐらいだ。
そして今日でとうとう神様に捕まったかと思っているぐらいだ。やはり地獄行きかな、弁護など出来ないぐらいに色々とやってきたからな。
さあ、煮るなり焼くなりバラバラにするなり好きにするが良いと言って覚悟を決めた。言い訳するつもりはないしそこまで生きたいとも思っていない。
ならば最期ぐらいは潔くと考えていたので判決を待っているとリーフは慌てた顔をして自分に対して言葉をかけた。
「そんな恐ろしい事は全然、考えていないですから落ち着いて下さい。私は感謝したくて現れただけですから、だから死ぬ気で待ち受けないで下さい。こちらまで怖くなりますから」
自分は感謝?と何でだと分からなくなった、感謝などされる覚えは無い。恨みならば数え切れない程はあると思うけど。
「貴方は十年前に多くのエルフや他の種族達を助けてくれたのではないですか。あれで数千の命が救われた、これ程のことしてお礼をしないのは失礼と思って現れました」
それを聞いて自分はあまりにも可笑しいと感じて笑い出した、このエルフの神様は申し訳ないけどあんまり頭は良くないと思った。
よりにも寄ってあの事件を出してくるとはそれで自分に対してお礼をしたいと言ってきた。あんな光景を見てもお礼をしたいとは余程の阿呆だ。
「・・・貴方はそれで良いのですか、貴方のお陰で多くの命が救われたのに待っていた結末は命を狙われる、故郷から化け物扱いされる。そんなのあんまりじゃないですか」
「ならば言わせてもらいますが、それで命を奪っても正しいと言えますか。数千の命が、未来を救えるのであれば数十人の未来を奪っても正義と言えますか。ではそれが貴方の大切な人がその十数人に入っていたら貴方は自分にお礼をしたいと言えますか?」
自分の考えを伝えるとリーフは何も言えずに黙り込んだ。下を向いて何も言えずに向いていた、流石に自分にお礼をしたいと言ってきた人を困らせるわけには行かないなと思ってすぐに少しばかり穏やかにしながら話をした。
「すみません、少しばかり言い過ぎました。今の言葉は忘れてもらっても構いませんから、気にしないで下さい。それと失礼ですが私はもう死んでいると思うのですが、転生でもしてくれるのですか」
そう言うといいえと言って詳しい説明をしてくれた。長いから簡単にまとめると今現在は何とか生きているがこのままだと確実に死んでしまう状態。
そこでこのエルフの神様であるリーフが力を与えて回復させる。しかし、その強大な力のせいで自分は人間ではなくハーフエルフになってしまうという事だ。
種族が変わってしまうのでその確認と承諾が欲しくて現れた、これが彼女の目的という訳か。本当にそんなことをしても大丈夫ですかと思いながら自分は最後にリーフに忠告をしておこうと考えて話をした。
「ここまでの事をしてくれて有り難いのですがこんな悪党を助けたら後々、後悔をすると思うのですがよろしいのですか」
するとリーフはなんで自分をそこまで低評価にするのですかとすこし怒って言ってきたので自分は素直になんでそう考えているのかを伝えた。
「まあ、簡単なことですよ。リーフさんには分からないかもしれませんが前世の世界である有名な言葉があるですよ。彼を知り己を知れば百回負ける事はないと言う言葉が。自分は馬鹿ですから相手は分かりませんが自分ぐらいは理解はしているつもりです」
後で何か言われても前に伝えましたよねと言う為に今の内に忠告を伝えておいた。するとリーフはこちらを見つめていた、しばらく見つめてから私は信じますからと言ってやはり助けるつもりらしい。
自分は内心でため息つくようにしながらどこかで恩を返さないといけなくなった。なんでやらないといけなくなる事がこんな所で出てくるのかな。
考えているとそれを見ていたリーフは笑みを出してこちらを見つめていた。本当にあの時、助けなければ良かったと思わないように祈っていますよ。
そう考えているとだんだん視界がぼやけてきた、もう元の場所に戻るのだなとなんとなく分かった。
「それではアッシュさん、この先の幸福を祈っております」
まあ、こちらも出来る限りのことはやりますよ。どんな形でも恩は恩ですから必ず返しますよ。自分は借りっぱなしがとても嫌いですからね。
そう思いながら自分は戻ったらどうしようかと思いながら自分は次第に意識が戻ってくると泣き声が聞こえてきた。
そうだった、あのドジっ娘天使のことを忘れていたとまたため息を付きながら意識は元の場所に戻っていくのだった。