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guilty 8. メンヘラ女に迫られた

「ミ、ミツケタアアアアアア!!」


 櫻井と別れたあと、ホームで電車を待ってると突然甲高い声が響いた。何事かと声のする方向に振り向くと、女がこちらへ掛け寄ってきた。うわ、薬師寺とかいうメンヘラ女じゃん。


「ハー……ハー……え、エへヘ。コッコォコニャニャチワワ!」


 え、何て?今、チワワって言った?

噛みすぎて何を言ってるのかよく分からない。肩で息をし、必死に掛け寄ってくる姿はナニか鬼気迫るようなものを感じた。つまり、怖すぎる。


「や、薬師寺さん……き、奇遇ですね」

「エへヘ、私の名前、覚えててくれたんデスねKさん。でも、奇遇じゃないデス。貴方が駅に入ったときからつけていました……ヒヒッ」


 やだ、怖い。そして意味なく笑うのもさらに怖いからやめてあげて。


「でも、これからは薬師寺じゃなくてハニーって呼んでもらえるとう、ウレシイ……ウレシイ……ウレシイデェエエエス!!」


 突然、シャウトするのもやめて。情緒不安定か。


「い、いや、ハニーはちょっと……そ、それより、薬師寺サン。な、何か、僕にご用ですか?」

「ハニーって呼んでくれないと、ホームから線路へダイヴします」


 薬師寺サンはニコリと恋する少女のような素敵な笑顔で呟く。いや、台詞と表情が絶望的に噛み合っていない。俺、何か悪いことしたかなあ……何でこんな罰ゲームみたいな会話をしてるんだろ。


「は、早まらないで。わ、分かりました……は、ハニー」

「……キュルルンッ☆」


 何だ、今の変な効果音。


「はぁはぁ……エへヘ、し、仕方ないなあ、ハニー」


 俺も君のハニーなの?

ていうか、誰も得しないこの時間は何なの?茶番過ぎる。だが、絶賛、脅迫されているので下手に逃げることも出来ない。地獄すぎる。こういう時にこの場に折原が入れば距離感を保ちつつ上手いことやってくれそうではある。折原を召喚しようにも帰宅しているため、すぐに駆けつけてくれそうにはない。一応、折原にラインだけは送っておくか。


『タ ス ケ テ』


 これが俺の最後の遺書となるとは思ってもいなかったのだ。やめよう、洒落にならない冗談は余計に怖くなる。


「……クンクン。Kさんから……女の匂いが……する……デス!!」


 色々と考えていると、メンヘラ女は俺の制服を嗅いでいた。近い近い、突然、ゼロ距離はやめてあげてちょうだい。


「さ、さっき、ラーメン食べてたから……あ、あそこ喫煙可だったし、煙草の臭いが服に着いちゃったかも」

「クンクン、クンクン……ニンニクや煙草の不快臭のなかにほのかな、メス犬のあま~~い香りがする、デス!!」


 痛い痛い、俺の乳首をグリグリと摘まむのはやめて。


「ご、誤解だよ……あ、俺の隣に豚の餌のようなラーメンを喰ってる奴がいたから、そいつの体臭かなって、あは、アハハハ……」


 うん、嘘は言ってないな、嘘は。

しかし何で俺は弁解しているのだろう。まるで不倫を必死で隠しているヤリ●ンみたいである。こういうのは折原の専売特許だろ。


「そうデスか。今回は許しますが、次に嘘吐いたらちん●みじん切りにしますデス」


 メンヘラ女はどこか焦点があってない瞳で淡々と口にする。ホラーかな?俺は近々、女の子になるかもしれない。


「そ、それで、ハニー。お、俺に何か用かな?」

「あ、そ、そうだ……あの時のお礼をしますデス。私を痴漢から助けてくれたお礼に……あれ、どこいったんだろ……」


 メンヘラ女は手持ちの鞄を漁り、何かを探している。自分に都合良く過去の出来事を改変するのはやめて欲しい。君が俺の尻に痴漢を働こうとしたのを止めさせただけだろ。怖いから言えないけど。


「ご、ごめんなさいデス!! Kさんに食べて貰おうと手作りのオケラを持ってきてたんデスけど忘れちゃいましたアアアア!! アウアウアあ゛あああ!! こんな馬鹿なワタシヲ犯してエエエエエエ!!」


 メンヘラ女が喚くと周囲が何事かとざわつき始める。お、オケラ?それって食べ物なの?Gの亜種みたいな奴じゃなかったっけ?ていうか、とんでもないことをわめき散らかしながら泣くのはやめて?俺を社会的に殺す気ですか?また、駅員さんを召喚されちゃうよお。


「お、落ち着いてよ、ハニー。別に忘れたからって気にしないからさ。てか、忘れて下さいどうか宜しくお願いします」

「うう、ひっ、ヒック……ご、ごめんなさいぃ、い、いつもの……全裸土下座で許してもらえませんデスかご主人様?」


 メンヘラ女は涙ぐみ、真っ赤な顔で俺に許しを請う。ご主人様とかやめろ。そして、全裸土下座とかAVでしか見たことがないプレイも口にするの止めて。いつものとかやらせたこともないだろ。


「いいって、許すも許さないも怒ってないし」

「ありがとうございますデス……では、改めて後日に何があっても絶対に確実に私のハウスに招待して、必ずや手料理を完食するまで喰らわせますデス……」


 それ、招待という名の拉致監禁じゃないの?


「いや、本当にそんな気合い入れなくても良いから。何ならカップラーメンでも良いし」

「Kさんにお礼したくて大事なところがウズウズしているのデス!! ハアハア、はあはあ……じ、自己満足かもしれないですが、私の愛を是非受け取って欲しいデス!!」


 本当にそうだよ、自己満足にも程度がある。ていうか、俺にお礼したくて発情しているのは何故ですか?怖いから変なところで興奮しないで欲しい。


「あ、そろそろ電車がくるから、今日のところはこれで……」


 電車が到着するアナウンスが流れてきたのでメンヘラ女と別れることにする。一刻も早くこの謎のガスで汚染された区域から逃れたかったのでタイミングが良かった。


「あ、ハイ……。あ、ちょっと待って下さいデス。私のハウスのアクセスデス。後日、追って連絡しますからここに来てくださいデス」


 紙切れを渡された。

何か怖いから簡単に個人情報を渡さないで欲しい。 

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