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guilty 13. クレーンゲームでエッッな本を狙っていたらヤバい女に見つかった

 休み明けの月曜。

欠伸をしながら、駅から学校までの道のりをのんびりと歩いていると何やら校門のあたりで騒ぎが起こっていた。


「おるあああ!! なんだいっ、そのだらしない恰好は!!」


 バッチン!バッチン!


 白衣を身に纏った女性教諭が校門前で四つん這いになっている男子生徒の尻を鞭でしばいている不思議な光景が広がっていた。う、う~ん、現実だよな、ここ。


「アァン、ごめんなさい! ゆるしてぇ……」


 女性教諭にしばかれている四つん這いの男子生徒は許しを請いながら卑猥な顔して嬌声を上げていた。暴力を振るわれて嬉しそうなのは何故なのか。


「なんだ、この世紀末な光景は」


 休みから一番遠い月曜日ってだけでもゲンナリしているところにこんな濃いSM現場を見せられては牛の妖精さんに無理矢理、牛脂をたらふく喰らわせられているような気分になる。見ているだけで胃下垂になりそうだ。


「おいおいおいおいっ、テメーなんだその金箔振りかけたような髪の色はあ!! 犯すぞ、コノヤロー」

「ヒエエイッ、ありがとうございまちゅ!!」


 四つん這い男子を無視して、今度は違う男子生徒に罵声を浴びせる女性教諭。てか、よく見るとあの人、行かず後家の大沢先生じゃねえか。何で保険医がここにいるんだ。この世の嫌なものを煮染めたような地獄口調だが、内容から察するに朝の生活指導ってやつか?いい歳した女性教諭が幼気な男子生徒に犯すとか言うなよ、訴えられるわ。


 バッチン!バッチン!


「アウウウッ、ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! た、助けてぇ……」


 また、鞭でしばかれる四つん這い男子生徒。

四つん這いはデフォかな?男子生徒は口からだらしなく涎を垂らし、尻を左右に振りながら必死で耐えており、助けを求めるような円らな瞳で近くにいる俺を見つめる。アウウウッじゃねえんだよ、こっち見るな。


「ギャハハハハ!! なんだい、その情けないツラはあ!! もっといじめてやるから覚悟おし!!」

「アァン、もっといぢめてぇん……」


 …………。

ヨシッ、今日は元気に思い切りサボろう!!

心の底から決意した俺は校門をUターンし、駅前に向かうことにする。


 ──駅前繁華街。


「サボるとは言ったものの、さて、どうするかな」


 先程の凄惨な絵面の記憶を消すためにも楽しい思い出で上書きしなければならない。学校の最寄りの駅前はもともとはベッドタウンであったが、近年は近辺に専門学校が増えたせいか、学生を狙った飲食店やアミューズメント施設が建ち並ぶようになった。


 適当にぶらぶらと歩いているとゲームセンターのクレーンゲームの一角が目に入る。


「やべえな……最近のクレーンゲームはエッッな本まで景品になってんのか」


 箱に入ったフィギュアでよくあるタイプの橋渡しタイプのクレーンゲームの景品がスケベ本で度肝を抜いたでござるの巻。エッ、一応ここ未成年も入る店だよね?世紀末か?モヒカン姿の店員が徘徊していそうである。


 ……。

ちょっ、ちょっとチャレンジ一年生してみようかな?

べっ別に景品のエッッな本の表紙にある胸元に黒子がトレードマークの爆乳女優に惹かれたとかそういうのではない…。自分が初めて踏み込む土地で珍しい食べ物があった際、それは果たしてどんな味なのか自分の舌に合うのか体感してみたいという知的な好奇心と似たような感情である。決して俗物的な感情ではないので悪しからず。


「ハハッ☆さーて、やりまショウ、ネッ☆」


 周りを見渡して知り合いがいないことを確認した後、恐る恐る硬貨を入れる。や、やべえ、緊張してネズミの国に棲息しているキャラクターみたいな裏声になってしまった。今は余計なことを考えずに目の前のお宝本に全集中の呼吸である。すーはー、すーはー、すーはあはあ。よし、整った。


 アームをお宝本の右側に寄せる。

箱渡しのクレーンゲームは見かけは簡単そうに見えるが、その実、奥が深く難易度が高いクレーンゲームである。クレーンゲームのアーム力なんざ赤さんの握力のようなものと考えた方が良い。だから、持ち上げて落とすと言うより、爪で引っかけて向きを変えながら落とすという数回のチャレンジを想定したクレーンゲームである。大抵の奴は欲張りで一発で落とすことを考えるから散財しがちである。フン、10回だ……いや、8回でお宝本をゲットすることを誓おう。


 ──5分後。


「……お、おかしい。このクレーンゲーム、ぶっ壊れているんじゃないだろうか」


 10回やっても横に数ミリずれるだけで落ちる気配が全くない。箱に入ったフィギュアに比べて体積が小さいから簡単に落ちると思っていたが、アーム力が赤さんどころかナメクジレベルの力だったでござる。


 後ろのガキ共が『おっさん、下手くそでかっこわりー』だとか『目が血走っててやべえよ、こいつ』だとか俺の悪口を言っていた。


 ちくせう!な、なんで、ど平日の真っ昼間に小学生がいるんだよ!クレーンゲームに馬鹿にされ、小学生にも馬鹿にされ、こんな薄いガラス張りの向こう側にいる一冊の大人の絵本も取れずに私は惨めにトボトボと帰らないといけないのでしょうか……。


「先輩先輩、とってあげましょうか?」


 クレーンゲームの前で項垂れていると救いの声が背後から聞こえてきた。エッッな本を取ってくれるエッッな天使が俺の前に舞い降りてきた!?俺はすぐさま振り返る。


「ゲッ」


 俺の背後にいたのはエッッな天使でも何でも無くうちとは別のセーラー服を身に纏った櫻井が腰に両手を当てて立っていた。


「車のバンパーみたいに歪んだ顔してどうしたんですか~?」


 笑いを堪えるように口を押さえる櫻井。

ま、まずい……景品のエッッな本を必死になって取ろうとしていた事実をコイツに知られるのがまずい。JKに見られて恥ずかしいYO!というのもあるが、こいつに馬鹿にされるのは腕にはんこ注射されるのと同じくらいの苦痛を伴う。絶対に知られてはまずいのである。もう一度言おう。俺のプライド的な何かのために絶対に知られてはまずいのである!!


「ゆ、歪んでいてもイケメンズだろ?」

「先輩、冗談は顔と存在だけにしてもらえませんか? キツいです」


 真顔で淡々と答える櫻井。

え、めっちゃ、きっついんですけどこの子。俺はトコロテンメンタルなのだからもうちょっと手加減してほしい。


「…………」

「てか、何で仮面ラ●ダーみたいに無言で仁王立ちしてるんですか? キメポーズですか、すこぶるキモいからやめてください。景品欲しいんですよね? そこどいて下さいよ」


 櫻井はクレーンゲームを隠すように立っている俺に怪訝な顔をする。さっきから問答無用で俺のトコロテンメンタルを傷つけるな、こいつ。


「お、お前には関係ないだろ……か、帰れよ」

「だって偶々見かけた知り合いがゴミを漁る浮浪者みたいに一心不乱にクレーンゲームをプレイしてる姿を見たら気にもなりますって」

「だ、誰が浮浪者だ。別にクレーンゲームに熱中してもいいだろ。俺とクレーンゲームはフレンズなんだよ」

「何を訳の分からないことを言ってるんですか。いいからヘタッピを認めて私に代わってください」


 へ、ヘタッピ言うな。

まずい、このままではアハ~ンな景品を見られてこの小娘に馬鹿にされてしまう。ど、どうすれば良いのだ。その時、俺の脳内に巣くう悪魔のような恰好をしたもう一人の俺が俺の耳元で囁く。


『ウケケケケッ、この女の足りない胸を揉みしだいて痴漢しちゃえば良いのよ! そうすりゃ、阿鼻叫喚の地獄絵図! クレーンゲームどころかポリス沙汰でお前の人生お先真っ暗闇!』


 とんでもないことを言うんですけどもう一人の俺。


 そして、またもやもう一人の天使のような恰好をしたもう一人の俺が耳元で囁く。


『ひゃあああ~ダメダメのダメです! そのような不埒な行いは! せめて脇の下を愛撫して痴漢してください!! そうすれば、彼女は地面でのたうち笑い転げてクレーンゲームどころではなくなるでせう!!』


 え、部位の問題?

俺の頭に巣くう悪魔と天使が似たり寄ったりの馬鹿すぎてヤバいんですけど。そして、またまた俺の耳元で囁くものが現れる。


『私に、思い切り、痴漢、してくれえエエエエエエ!!!!』


 バーコードみたいな頭をしたスーツ姿のメガネをかけたおやぢが耳元で絶叫する。え、誰ですか貴方、コワっ。未来の俺か?やめて、嫌すぎる。


「はいはい、どいて下さいよ~っと。さくっと取っちゃいますからね~」


 脳内で会話を繰り広げていると櫻井が手で俺をどかしてクレーンゲームの前に立つ。あ、終わった。


 ウィ~ン、ガッチャン、ゴトゴトン


「はいっ、ドーゾ!」


 これ以上無い全力笑顔で景品もといエッッな本を俺に手渡す櫻井。えっ、時間が飛んだ?今、何が起こったの?ものの一行くらいで事が済んだような気がしたけれど。


「あ、ありがとう」

「いえいえ~、どういたしまして。てか、普通に女子高生からエロ本を受け取る男子高校生ってドン引きですよね~」


 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる櫻井。

……げげげのげっ。な、なんで俺は普通に受け取ってんだ!目の前の櫻井の魔術のような神業で呆然としていた。俺は意気消沈し、櫻井の目の前で四つん這いになる。


「ご、後生だ……このことは皆には内緒にしてくれ」

「皆って誰のことですか? あ、あと、その低姿勢から私のスカート覗かないで下さいね。覗いたら通報します」

「覗かねーわ!! ていうか、よく考えたら初めてお前と会ったときに悪夢のようなエロ本見られてるから今更恥ずかしさとかこれっぽっちも無かったことに今、気付いたわ」

「先輩の開き直りの潔さには感心しますね~まあ、私としては貸しをまた一つ増やせたので収穫ありですけれど」


 櫻井は腕を組んで考えるように目を瞑る。

え、菓子?ナニソレ、美味しいの?


「そうですね~とりあえず、貸しを一つ消費してもらいましょうか。先輩、これから私に付き合ってもらえませんか?」


 つ、付き合うって何に?

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