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日本人の髪色が紫なのは合ってる

作者: 黒森 冬炎

 以前、日本人少女の描写で、紫がかった黒髪と表現したことがありました。難色を示す方をお見かけしました。そろそろ時効かなと思うので、日本人の髪色について少々。


 日本人はかつて、美しい髪色を「みどりの黒髪」と申しました。「みどり」は「あお」ともしばしば同義です。黒馬や烏の色は、「あお」と表現されました。とくに光沢のある美しい毛並みを表して、そのように呼ばれました。


 「髪は烏の濡羽色」とは、美しい女性の髪の表現ですね。烏の濡羽色は、やはり「あお」と表現されます。濡れて青く光るという言い方もあります。日本人の頭は、光の当たり方によっては青っぽく見えますよ。



 お醤油を「ゆかり」と呼ぶように、黒は紫にも捉えられました。実際にお醤油は紫がかって見えます。もっとも、お醤油屋さんの解説などでは「醤油は赤褐色。古代人は赤褐色を紫と呼んだ」と言う説が推されておりますが。


 黒に見える色目には、濃紺(のうこん)濃紫(こむらさき)がございます。墨の色も、日本人は「あお」や「むらさき」と呼び習わしてまいりました。


 このように、日本人の髪が紫、まして紫がかった黒と表現されることは、歴史的に正しいのです。



 ところで、髪色問題はどうやらなろう異世界恋愛でのみ厳しく検閲される気がするのです。冗談として、アニメキャラについて、


「あいつら人間の髪色じゃねぇ!」


 と言うことは昔からありました。大人しい漫画主人公がものすごい髪型のツートンカラーヘアーであることを指して、


「あんな頭してるから孤立してるのではないか」


 などと揶揄されたり。そういうのは、ありました。でも、本気でオカシイヘンダと攻撃する人はいなかったように思います。


 漫画、アニメ、ラノベのキャラの髪の毛は、現代日本舞台で日本人キャラなのにピンクだったり青だったり緑だったりします。眉毛やまつ毛も同じ色なので地毛だと推察されます。


 それに文句言う人、ほとんどいませんよね?なぜ、なろう異世界恋愛だけに言われるのだろう?乙女ゲーム転生物語が流行った時には、本当に攻撃が酷かった。



 時には、ヨーロッパ風ゲーム世界に登場するキャラの「赤毛」を攻撃する人すらいた。「赤い髪の毛なんていない!」と。この人は言葉を知らないですね。どの国でも、赤みがかった髪の毛を指して、赤い髪の毛と言いますよね。真っ赤な髪とか、燃えるような赤毛というのは、カラーコード #ff0000 のことではありませんよ。


 作中で、地毛がルビーや鮮血に例えられているなら「現実にはいない」が成立します。しかし、ジャンル異世界です。作中世界の現実には、作中描写で存在しています。それが特殊なのか普通なのかは、作品によりますが。その点についても、現代現実社会で確認されている諸事象を根拠に「あり得ない」と言われましても。えぇー。としか。



 銀髪を水色や薄紫で表現するのは、黒髪を青や紫に塗るのと似たような習慣ではないでしょうか。光の当たり方によってはそう見えることが、現実でもあります。それどころか、金髪キャラが何の断りもなくピンクに塗られていても、文句はあまり言われないのが日本社会だったんですけどもね。



 取り締まりの成果なのか、現在異世界恋愛ものの異世界人も、現実世界の人間と髪色も目の色も姿形も同じ場合が大多数です。異世界ジャンルにいなければ、誰も異世界だとは思わない作中世界が増えてます。


 取り締まり対象になるような外見は、現代の市販化粧品なら、実現可能かもしれません。コスプレ的嘘臭さではなく、アート写真的な仕上がりにはなりそうです。コスプレ人より驚かれるかもですが。不気味の谷現象。


 私の育った地域では、すごい髪色、髪型、服装の人々がウロウロしておりました。それは確かに一般的でもなければ、地毛でもありません。うわって思ったりもするけどね。でも、「そんな人は実在しない」と言う意見には、「いや、普通にいる」と自信を持ってお答えできます。時代とともにカラフル頭率は変化いたしますけども。




 そんなわけで、私は元々、創作物に登場するカラフル頭の人物に違和感や嫌悪感を抱くことはありませんでした。現実で普通に見かけるもんね。そして、冗談以外でそうしたキャラの外見を批判する声も聞いたことがなかったのです。


 なろう異世界恋愛読者、なぜカラフル頭が許容できないのだろうか?とずっと不思議に思っておりました。冒頭の「黒髪」をめぐる表現の数々からわかるように、日本人は本来、色の感性が豊かなんですよ。


 黒髪については、「玉虫色に艶めく」なんて表現もございます。きゅーちくるですね。光源によってもいろいろ見え方は変化致します。詩的表現であれば、黒髪が真昼の太陽に染められて金色に輝いてもいいんです。現実にはそうはならないけど、それは表現ですから。



 カラフル頭反対の方々、印象派の絵画を初めて見た当時の人々の逸話を思い出しますね。


「肌が斑らで気持ち悪い。病気なのか」

「髪の毛にゴミがついているのか」


 異世界恋愛ジャンルの髪色に神経質な読者、リアル19世紀パリから来たタイムトラベラーだと思ったら納得できるかもしれない。そう言う方々には、是非とも虹色アフロをお試しいただきたい。最近あまり見かけませんけど、おすすめ。髪の毛の色なんかどうでも良くなるに違いないですよ。


 そもそも、あるかないかでドキドキしている方からすれば、色なんて大した問題ではありませんしね。


お読みくださりありがとうございます

誤字報告、熱烈歓迎致します

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― 新着の感想 ―
[良い点] 歴史を踏まえての知的な文章、大変面白かったです! なるほど、紫がかった黒…! 昔の日本の価値観や文化の紹介がとても好きなので、また書いてくださると嬉しいです。 カラフル頭が許容できない……
[一言] 多様性が叫ばれる昨今。 世界観にも多様性が認められてもいいんじゃないかと思う今日この頃。 髪の色なんてなんでもいいじゃんと思う反面。 ヒロインが虹色アフロだったらどう反応するんだろうと、自…
[一言] 「赤い髪の毛なんていない!」は流石に世の中知らなすぎですが、最近は「ピンクって遺伝子ヤバくない?(自然界で目立つ=狙われやすいこと考えると哺乳類で体毛ピンクはヤバイ。普通は血液の関係でピンク…
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