ーその崖の向こうには、人の思いがあったー
物語中の「僕」は高校二年生。展開をお待ちください!不定期投稿です!感想もお待ちしております!
『今朝のニュースの時間です』
『またあの崖から、転落者が現れました。これで一年で30人もの人々が、この崖から転落したと思われています。今回は女性が転落したということで・・・』
またあの崖から、転落者が出た。消息は不明。なぜその崖に人が転落するのかも、不明であった。不可解な点が多い中で、検察は取り調べを続けていた。
その日は丁度、僕は旅行へ行っていた。修学旅行、といったところか。見上げると早暁なのもあって空が淡い青だった。目を細めると一層それが明確に分かった。母がお守りがわりにくれたキャンディーを握りしめながら、バスにゆられながら、30人のクラスメイトと出し物をし合いながら、この国が定めた天然記念物の崖を見ながら。それは僕が見ると笑っているように見えた。はしゃぎ声というよりも、日々の屈辱に嘆いているように。そしてそれは僕にものすごい知的好奇心を促した。するとバスが共鳴するように、突然クラクションを鳴らし、ものすごいブレーキ音を奏でた。タイヤがローラースケートのようにくるくると回転しだし、気づけば僕は宿泊先の宿に着いていた。
宿では宿主が甘ったるい顔で僕たちを見ていた。僕たちは少し怖かったのもあるが、宿主のおもてなしだと思い、トランプの『ババ抜き』を続けた。やはり幼馴染の牧郎はいつになってもトランプに際しては軒並み外れていた。隣にいる転校生の貞方君も、愛想笑いが尽きないでいた。
「少しは手加減してやれよな」
「うるせえな。お前らが弱すぎるんだよ」
嫌みを言うのもこいつの特技だ。入学時は卓球が趣味だと言ってたくせに。あれはかっこつけか。
「あの、、ボク、勝っちゃったんですけど」
「はあああ!?」
「まあそれはさておき、、」
後ろで何やらヘンな雑誌を読んでいた桑原が言った。僕は真面目な方だったので、ああいうあり得ない話を訊くのは嫌だったが、この話には妙に関心を持った。
「三段崖っていう幻の崖がこの近くにあるらしいぜ」
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