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人×人外百合短編集  作者: 焔摩下広鬼
1/6

マーキング(人×吸血鬼)

ルームシェアしてる人間の女の子と吸血鬼の女の子話です。

 じー……。

 

 長くて綺麗な銀髪の少女が私をじっと見つめていた。

「ど、どうしたの? じっと見て」

 その銀髪の少女に問いかける。

 銀髪の少女はゴスロリな服を着ていて、鋭い犬歯が特徴的だった。

 この少女吸血鬼なのである。

 名前はシルヴィ、私の彼女だ。

 シルヴィと私は東京新宿にあるマンションの一室でルームシェアしている。

「う~ん、友希って肌綺麗だよね」

 シルヴィが私を眺めながら言った。

「そ、そう? ありがと」

 少し照れくさいが、彼女にそういわれるのは嬉しい。

 ふと隣に座っていたシルヴィが私の右肩に左手をのせた。

「どうしたの?」

 私は聞いたが、シルヴィは答えない。

 

「がぶっ!」


 そして、急に左の首筋に痛みが走った。

 シルヴィが私の首筋に鋭い歯を立てて吸血していた。

 

「ちょっ! いきなり吸わないでよ!」

「ふへへ。ごちそうさま」

 私の抗議にシルヴィは悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。

「まったく……」

「嫌だった……」

 私の呟きにシルヴィは少しだけ不安そうに問う。

「大丈夫よ、少しびっくりしただけ」

「ユキの身体眺めてたら無性に吸い付きたくなって耐えられなかった」

 この彼女は恥ずかしげもなく、こういうことを言う。

 吸血鬼は相手に性的興奮を覚えた時に吸血衝動を覚えるらしい。つまりこの吸血鬼の彼女は私の身体を見て性欲を感じてくれたということだ。そう思うと私は嬉しくてたまらなかった。だけど、私は恥ずかしいからそれを口にはしなかった。

「ねえ、もっと吸っていい?」

「どれだけ性欲強いのよ」

「友希が可愛いすぎるのが悪い」

「は!?」

 余りにも理不尽な言い草だが、そんなストレートで恥ずかしげもなく恥ずかしい台詞を吐くことができる彼女のことが私は好きだ。私ではこうはいかない。誤魔化したり、隠したりしてしまう。

「だめ?」

「うぐっ」

 シルヴィの潤んだ瞳で見つめられ私は狼狽える。

「し、仕方ないわね」

「やった!」

 私が了承するとシルヴィが嬉しそうに表情を綻ばせた。

 私は自ら首筋をシルヴィに差し出す。

「……」

 しかし、シルヴィはしばらく私を見つめていたが、何もしてこない。

「どうしたの?」

「脱いで」

「え?」

 いきなりそんなこと言いだすシルヴィに私はぽかんとしてしまった。

 そして、シルヴィが私の着ているTシャツに手をかける。

「ちょ、ちょっと待って!」

「ヤダ」

 私が慌てて制止しようとするが、シルヴィは止まるどころか、私の両手を魔法で拘束して動けなくした。拘束された両手を魔法で強制的に万歳させられ、着ていたTシャツを脱がされる。

 上半身下着だけの姿になった。

 着ていた花柄の白いブラジャーが露わになった。

 私は頬を膨らませて、シルヴィを睨んだ。


 〇


 ゾクっ!


 シルヴィは友希の鋭い視線を受けて快感を覚えた。

 シルヴィは友希のこの視線が好きなのだ。

 この視線を見てるとどうしても彼女をいじめたくなる。

 だからいつもなにも言わずに急に彼女を襲って驚かせる。

 そして、上半身下着だけになった友希の乳房にシルヴィは手をかけ、揉みしだく。

 最初はブラジャーの上から。上からでも友希の大きな乳房は弾力があってとても気持ち良かった。

 そして、次はブラジャーの下へ手を入れて、友希の肌を直接触れる。直に触れる友希の肌はすべすべでサラサラしていて気持ち良かった。

「シルヴィっていつも下着つけたまま下から触ってから、もう一度触るけど、それ意味なくない? どうせ脱がすんだし」

「お、脱がされる気満々?」

「そういうことじゃないから!」

 シルヴィが言うと、友希が慌てて否定する。

「わかってるってば。ただの趣味だから」

「シルヴィって、結構変態よね」

「友希に言われたくないよ」

「私は違うし……」

「ほんとに?」

「ええ、本当よ」

「じゃあ、確かめてあげる。もし下濡れてたら、噓ついたってことでお仕置き、ね」

「お仕置き?」

「うん」

「ど、どんなの?」

「ハードなやつ」

「そのハード具合が知りたいんだけど」

 友希が顔を引きつらせて言う。

「お、どんなハードなやつがくるか楽しみで仕方ないみたいね」

「違うわよ!」

 友希が再び否定する。

 しかし、シルヴィは知っている。実は友希が無自覚なドMなことを。

 シルヴィは友希の履いていたショートパンツに手をかけた。そのまま下にずらして、外す。

 ショートパンツがなくなり、下半身も下着だけになった友希のパンツはぐっしょり濡れていた。


 〇


「う、噓……」

 ぐっしょり濡れたパンツを見て私は顔を青ざめさせる。

「お仕置き確定ね」

「な、何をする気?」

 不安げに私はシルヴィに尋ねる。

「そんな台詞が出てくるなんて結構ワクワクしてるでしょ、友希」

「言いがかりはやめて」

「これから友希のことクッ殺と呼ぼうかしら」

「下らない冗談言ってないではやく教えて」

 じゃないと不安でどうしようもなくなる。

「お仕置きといったらアレしかないでしょ」

「どれよ」

 私の問いには答えず、シルヴィはベッドの下で何か探り始める。

 そして、何やら箱を取り出した。中には色んな道具が入っていた。バイブ、ローター、麻縄、鞭などがあった。全部アダルトグッズだった。

「これ」

 シルヴィはその中に入っていた鞭を手に取って私に見せる。

「え、噓でしょ?」

「本気よ」

 シルヴィが鞭を振りかざす。

 

 びゅん!


 鞭が風を切る。

 私は咄嗟に目をつぶった。


 バシィン!


 鞭が叩きつけられた音がした。

 だが痛みは感じない。それどころか体に当たった感覚すら感じなかった。

「アレ?」

 目を開いて見ると叩きつけられた鞭は私の体の横にあった。

「うっそ~」

 そして私の正面にはニヤニヤ悪戯ぽく笑うドS彼女。

「むう~」

 私は再びハムスターみたいに頬を膨らませる。

「アレ、本当に叩いてほしかった?」

「なわけないでしょうが! ほんとにびっくりしたんだから!」

 涙目で私はシルヴィに抗議する。

「ごめんごめん」

 シルヴィは謝った。

 ただし結構適当に。

「ほんとに反省している?」

「うん、してる」

「ほんとかなぁ、まったく……」

「あ、でもいつでも鞭打ちプレイしたくなったら言って」

「しないわよ!」

 やっぱりこいつ全然反省してない。

「えー」

「何度も言ってるけど私はMじゃないんだから」

 不満をこぼすシルヴィに私は言う。

「ほんとに?」

 目の前にはシルヴィの美しい顔があった。

 雪のように透き通った長い銀髪が、二つの滝をつくり、シルヴィ自身の控えめだが、決して小さいわけではない二つの果実へと流れていた。夕焼けのように紅い瞳でシルヴィは私を見つめて、顎を軽く左手の親指と人差し指で挟んで囁いた。

 綺麗でよく通るソプラノボイスが私の耳に響き、脳を刺激する。

 それだけで私は何も言えなくなった。

 顔が紅潮してるのは鏡を見なくてもわかる。それくらい熱い。

「……え、ええ」

 ようやく絞り出した声はとても説得力が低く、力弱かった。

 だって仕方ないじゃないか、こんなに可愛くて綺麗で美しい彼女に見つめられたら誰だって何も言えなくなる。それはシルヴィが私の彼女ということを抜きにして、客観的に見てみても言える事実であると思う。

 シルヴィは私の顎を挟んでいた左手の親指と人差し指を離した。

 しかし、距離は離さない。

 シルヴィの頬は微かに赤みが差し、紅い瞳は物欲しげに潤んでいた。

 もう私がMかどうかなんて問答はお互いどうでもよかった。

「……」

「……」

 お互いずっと無言だが、私は彼女が私を求めてるのを感じた。

 そして、私も彼女を求めていた。

 シルヴィと私、お互い顔を近付けていく。


 2センチ―


 1センチ―


 5ミリ―


 2ミリとシルヴィと私の距離は近づいて行き、残り1ミリ。

 そして、遂に唇と唇が触れた。

 触れた唇を食むようにシルヴィが覆う。

 それに対し、私もシルヴィの唇を食むように覆う。

 お互いがお互いを求めあう。

 今なら、シルヴィのためなら、なんだってできる気がする。

 きっとハードなことだってできる。

 キスしてるうちに私の口内は唾液が溜まり、口元から唾液が垂れてきた。

 その唾液をシルヴィが舌で絡めとる。

 唾液はシルヴィからも垂れていた。

 私もその唾液を舌で絡めとる。

 シルヴィが私の頬に添えていた左手を下した。

 それに少し残念に感じた私だったが、彼女の左手は直ぐに私に新しい刺激を与えてくれた。シルヴィは左手を私の背中に回し、私のブラジャーのホックを外した。花柄のブラジャーが私の膝下に落ちる。

 何も覆うものがなくなった胸元にシルヴィは左手を添え、そのまま乱暴に揉みしだく。欲望のままに力強く。

 そんな強引な揉み方に私は快感を感じてしまう。

 私も彼女を抱きたい。

 そう思って手を伸ばそうとしたが、未だ両手は魔法で拘束されたままだった。

「ねえ、シルヴィ」

 私はシルヴィを見つめながらつややかな声で彼女の名前を呼ぶ。

「うん、なに?」

 そして、シルヴィも艶やかな声で私に返す。

「私もあなたを抱きたい」

「!?」

 シルヴィが目をみはって、驚きで表情を彩る。

「ごめん、魔法かけたままだったね」

 そう言ってシルヴィは私を拘束した魔法陣に触れて術式を解除した。

 私は自由になった左手を彼女の背中に回して、抱きしめた。

 そして、再びお互い熱い口づけを交し合う。

 くちゅくちゅと唾液で唇を湿られせながら、互いにしゃぶりつくす。

 熱情は更に昂ぶり、気付いたら舌まで入れたディープキスを私とシルヴィもしていた。

 私の舌がシルヴィの口内をまさぐり、唾液を絡めとる。

 シルヴィも私の口内に舌を侵入させて、私の口の中で舌を這わせる。

 互いに昂った欲望リビドーはエスカレートし、口中で舌を這わせる程度では足りなくなる。

 先に動いたのはシルヴィだった。

 シルヴィは一度私の口から自分の口を離すと顔を私の胸元に近づけ、左の乳房に嚙みついた。

「っ!?」

 私の身体に痛みが走る。

 私の身体から血が出て行くのを感じる。

 だがシルヴィは一瞬で吸血行為をやめた。恐らくほとんど吸っていない。

 そして、胸元から顔を離したかと思うと今度はさらに下、腹部に顔を近付けて、再び噛んだ。今度は吸血すらしなかった。ただ嚙みついただけだ。

 私はシルヴィが何をしているかなんとなく気づいた。

 彼女はマーキングをしようとしているのだ。

 私の身体中に嚙みついて私をシルヴィだけのものしようとしている。

 それがとてつもなく嬉しかった。

 でもシルヴィも私のものだ。誰にも渡さない。

 だから私もやる。

「シルヴィ」

「ん?」

 私の身体に嚙みついてるシルヴィに私は話しかける。

 状態を起こしてシルヴィが私を見る。

 私はシルヴィを抱きしめて、その首筋に顔を寄せると、嚙みついた。

「がぶっ」

「いっ!?」

 シルヴィが痛みで顔を歪ませる。

 私の中で今までにない感情が芽生えた気がした。

 私はMじゃない。しかし、だからといってSだというつもりもなかったのだが、もしかしたらS気はあるのかもしれないな、これは。

 楽しい。凄く愉しい。恋人が痛みで苦痛の表情を浮かべてるのは。

 私はシルヴィの首筋から口を離す。

 シルヴィの首筋には歯形がくっきりついていた。

 私の身体のあちこちについてる吸血鬼特有の二本の牙のあとととは違い、普通の人間の歯形だ。

「まさか友希が嚙むとは……」

「私だってずっとやられっぱなしは嫌よ……かぷっ」

 私は友希の左頬に嚙みついた。

「痛っ! ……友希、顔はやめて」

「あ、ごめん」

 確かに顔はまずかったかも。シルヴィの綺麗な顔にあとが残ったら大変だ。じゃあ、ほかの場所ならいいのかということになるが、シルヴィの綺麗な顔に傷が残るのは私の本意ではない。

 私は衝動的に行動してしまった自分に恥ずかしくなる。

「そんな顔しないで。他の場所なら、いいからさ……」

 しゅんとする私の表情を見てシルヴィが言った。

「がぶっ」

「いっ!」

 シルヴィは私の右の首筋に嚙みついた。

 吸血もしている。しかも結構な量を。

「だめ……それ以上は……死ん……じゃう……」

 身体の中の血液がどんどん出ていくのを感じる。これ以上吸血されたら本当に死んでしまう。

「いつまでもそんな顔してる友希が悪いんだよ」

 そういってシルヴィは吸血を続ける。

 マジでヤバい。死んじゃう。

 あ、でもシルヴィに殺されるならいいか……。

 身体からどんどん力が抜けていくのを感じる。

 本当に死にそう。

 でも気持ちいい。

 ふとそこでシルヴィは吸血をやめた。

「どうしたの?」

「これ以上やると本当に友希が死んじゃいそうだから」

「今更じゃない?」

 既に結構瀕死なんだけど。 

「でもわたしは友希が本当に死んじゃうのは嫌だから」

「私は構わないけど」

「駄目。もっと自分の命を大事にして。散々恋人のこと吸血して瀕死な状態にさせてる人が言うことではないけど」

「わかったわよ……」

 仕方なく私が頷く。

「でも私老いたくないから、このまま殺して吸血鬼にしてくれたほうがいいんだけど」

「まったくわかってないわね……」

 あきれ気味にシルヴィが言った。

 だって私はいつまでもシルヴィにとって綺麗で美しいままでいたいから。

「吸血鬼になるってことは一度死ぬってことなのよ、それでもいいの?」

「うん!」

 笑顔で言ってやった。

「まったく……死んだら確実に吸血鬼になれる保障はないんだよ、それでもいいの?」

「うん」

 私は頷いた。

「わかった。そのうち殺してあげる」

「ふふ、楽しみにしてるわ」

「でも本当に死んだら許さないから」


 〇


 翌日。

 完全に忘れていた。

 大学があることを。

「ぶっ、はははははははっ! なにそれwwwwww」

 私とシルヴィの牙のあとと歯形を見た友人に盛大に笑われた。

 恥ずかしくてたまらない。

 でもとなりのシルヴィも同じように顔を真っ赤にして俯いてるのを見たら、ちょっと落ち着いた。同時に嬉しくなった。


 ちなみにその友人も吸血鬼です。


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