暇つぶしに「イヴ」を数えませんか?ークリスマスイヴ×364回ー
「なろうラジオ大賞2」の参加作品です。1000文字以下の制限です。
選択キーワードは「暇つぶし」です。
12月23日。
カタッカタッカタッカタッカタッ。
今日もオフィスには無機質な音だけが響いている。
誰もが慌ただしく無言でキーボードを叩いている姿は、もうすぐクリスマスだと言うことを感じさせない。
早川穂香はそれを有難く思う反面、やはり寂しさも感じてしまう。目だけを右に動かすと桜井博昭の横顔が見える。早川が新人のときの教育係でもあり、所属する課の上司でもある、彼。プログラミングする手を止めることはないだろう。こちらを見ることもないだろう。彼の目も手も、パソコンが独占している。
少しでも距離を縮めたい。早川は意を決し、桜井に喋りかけることにした。
「クリスマスイヴイヴですね、桜井課長。」と、早川。
「クリスマスイヴイヴ?あぁ、そんな言い方するなんて早川さんも若いね。」と、目も手も動きを止めずに桜井が言う。
次の日。
「クリスマスイヴですね、桜井課長。」と、早川。
「クリスマスイヴだね、仕事だけど。」と、変わらない桜井。
次の日。
「クリスマスですね、仕事だけど。」と、早川。
「クリスマスに仕事は社会人になった証拠だよ。」と、桜井。
次の日。
「クリスマスイヴ×364回ですね。」と、早川。
「クリスマスイヴイヴイヴ・・・そうか。面白いね、早川さんは。」と、桜井がこちらを見て笑う。
半年後。
「クリスマスイヴ×何回でしょうか、博昭さん。」
「クリスマスイヴ×182回だね。暇つぶしに毎日数えているよ。穂香。」
半年後。
「メリークリスマス、博昭。」
「メリークリスマス、穂香。」
一年後。
「クリスマスイヴイヴですね、桜井さん!」
「クリスマスイヴイヴだね。そんな言い方するなんて、君もまだ若いね。」と、桜井穂香は新人男性に笑いかけた。
最後までお読み頂いてありがとうございます。ベースは舞台脚本家になりますので台詞が多めになっています。始めたばかりなので感想などを頂けますと尻尾を振って喜びます。