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三人寄らなくても文殊の知恵




「おはようございまーす」

挨拶と共に引き戸を開ける。目の前の木製の大きなカウンターは無人で、私は店の奥に進んだ。すると来客用のソファーの側に店に店長と瀬川君が立っていた。瀬川君が店に出てきているなんて珍しい。

「何話してるんですかー?」

声をかけながら近づくと、二人は顔を上げて私に挨拶した。先程の挨拶も聞こえていたはずだが、返事が面倒だからスルーしたのだろう。なんて奴らだ。まぁ今してくれたからいいけど。

「説明会の話してるんだよ」

「説明会……ですか?」

店長は瀬川君に見せていたものと同じ紙を私に手渡した。不思議と柑橘系のすっぱい香りが漂った。オレンジでも食べていたのだろうか。

店長にもらったA4サイズには簡単な文章と地図が載っていた。用紙の半分以上を地図が埋めており、あとは【何でも屋合同説明会開催のお知らせ】という文と日程だけ。ちなみに日時は明後日の三時だ。

「従業員用の説明会で、店のしきたりとか注意することとか、半年に一回やってんの。せっかくだし雅美ちゃんにも行ってほしいと思ってるんだけど……」

「行きますッ!」

「そう?また説明すんの面倒だなって思ってたんだよね」

食いぎみに答えた私に、少したじろぎながら店長はそう言った。店長の杜撰な説明によると、新人従業員が何人か一ヶ所に集められて、店の方針とか他言してはならないこととかを教わるらしい。説明も一時間程で簡単に終わるそうだ。

私は思っていた。これはチャンスだと。私にとってこの仕事はまだまだ謎だらけだ。何せ上司である店長がほとんど何も教えてくれない。そんな秘密主義なこの会社の説明会に参加できるなんてラッキーだ。この店に勤めて一年、ここらで丸裸になっていただこう。

「じゃあ二人とも今週の日曜日空けておいてね」

「はいッ」

伝えるべきことを一通り伝え終わった店長は、私と瀬川君の顔を交互に見る。そんな店長の言葉に私は元気いっぱいに返事をし、瀬川君は無言で頷いた。




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