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Who can you be?3




その後、私達はやって来た黄龍の従業員に男性を引き渡すと、鍵を職員室に返して店に帰った。校舎内を歩き回っていただけだから報告書は書かなくてもいいと言われ、テンションが少し復活する。

「でも本当に幽霊だったらどうしたら良かったんですかね」

「その時は癪だけど例の知り合いに頼むしかないね」

私は鞄を肩にかけ直す。店長はソファーに座って、自分で淹れたコーヒーを一口飲んだ。

「その幽霊関係のお仕事してる友達って、やっぱり霊媒師なんですか?」

「友達じゃなくて知り合いね。除霊師兼イタコって感じかな。幽霊のことは正直よくわかんないし知りたくもないけど」

「そういう仕事してる人が実際にいるってことは、やっぱり幽霊って本当にいるんですかね……」

ここで店の奥から瀬川君が出て来て、この話はここで打ち切りとなった。私と瀬川君は店長に「お疲れ様です」と言い、店長の「気を付けて帰ってね」という言葉を聞きながら店を出た。並んで自転車を漕ぐ。確か一年くらい前もこうして並んで帰ったっけ。

最後に、深尾高校にいたあの男性の話をしておこう。後から店長に聞いた話だと、あの男性は近くの住宅街に住んでいた人らしい。男性は黄龍の従業員を警察と勘違いしたのか、聞いてもいないのにペラペラと喋ったそうだ。

男性は定職に就いておらず、七十九歳の母親と二人で、母親の年金だけで生活していた。母親は足を悪くしていて家の中を歩くのも困難な状態だったが、男性はそんな母親の面倒を見るのを怠っていたようだ。毎日パソコンでアニメを見たりゲームをしたりして、母親にろくに食事を与えず、母親はついに布団の中で餓死してしまったという。

男性は母親を殺したのが自分だと警察にばれるのを恐れて、無計画で家を飛び出した。警察が家で自分を待ち構えているのではと怖くなり、家に近付けなかったという。実際は、足が悪くて家にこもっている母親が一、二週間姿を見せなくても近所の人達は気にもしなかったようだが。

とにかく、男性は行く当てを求めて、結果辿り着いたのが深尾高校だった。昼はコンビニの裏などで残飯を漁り、夜は校舎で寝泊まりしていたらしい。

男性が私達を襲ったのも、自分がここで寝泊まりしている事がばれるのが怖かったからだ。男性は私達の懐中電灯の明かりを常に目で追って私達と出くわさないように行動していたが、ちょっと目を離した隙に光が見えなくなって、慌てていたら階段を上った所で私達とばったり。ということらしい。

顔を見られた為、護身用に調理室からくすねておいた包丁で私達を襲ったというわけだ。オッサンニートなので、若者の全力疾走には敵わなかったようだが。

黄龍はこれを聞いて男性を警察に突き出した。金曜日の夕方、学校に潜伏した犯人ということで意外に大きくニュースで取り上げられていた。が、このニュースを見た依頼人の友人達が「幽霊じゃないなら肝試ししなくてもよくない?」と言い出し、結局肝試しは中止になったという。いったい私は何のために頑張ったんだ。

ということでまぁ、何でも屋朱雀店の肝試し大会は、生身の人間とバトルして幕を閉じた。正直、幽霊だのお化けだのはもう勘弁してほしいところである。




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