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それぞれの三日後3




四月七日、月曜日。午後五時半。何でも屋朱雀。

「店長、お茶どうぞ」

「新しいの開けてって言ったのに」

「馬鹿なこと言わないでください。そんなにぽんぽん開けたら湿気っちゃうでしょう」

ここ数日ずっとこの紅茶だったので、店長は味に飽きてきたのだろう。だが飽きたからといって新しい茶葉の封を切ることは許さない。いったい今までに、店長がどれだけの茶葉を湿気らせてきたと思っているんだ。

おそらく湿気た茶葉は捨ててしまっているんだと思うと、ものすごくもったいないと思う。これはお金に困ったことがない人の行動だ。まったく羨ましい。

ソファーに座る店長の前にコップを置き、自分はカウンターに座った。整理するために置いておいたファイルを開く前に、淹れたての紅茶を一口飲む。うん、美味しい。

ちらりと店長を見ると、きっちりと出されたお茶を飲んでいる。まったく何なんだか。味に飽きているのも事実だろうが、ただ構ってほしいようにも感じる。

私はコップを横に置いて、用意しておいたファイルを開いた。しばらく考えてから、背後の店長に尋ねる。

「店長、この前の仕事のファイル、もう整理します?」

私が言っているのは、もちろん先日の白虎店との協同任務のことだ。私個人の報告書はすでに昨日提出していたが、もっと大きな━━朱雀店で本部に提出する報告書がまだ出来ていない。このファイルを整理するのは、それが出来るのを待った方がいいだろう。

「あー、それ。まだいいや。なんか田中さんが追加で依頼してきたらしくてさ。向こうが報告書上げてくれるのを待とう」

「そうなんですか。わかりました」

そうなれば、このファイルの整理は今日は無理だ。なら他のファイルを整理するのもいいが、その前に店の掃除をしてしまおう。昨日は左肩が痛くて掃除ができなかったから、よく見たら部屋の角に埃が溜まっている。

私は立ち上がってファイルを本棚に戻すと、そのまま掃除用具を取りに裏へ向かった。

ホウキとチリトリ、それとバケツとモップを持って店に戻ると、店長は相変わらずソファーでくつろいでテレビを見ていた。あまりのやる気のなさに少し呆れる。

「店長もたまには働いたらどうですか。毎日毎日テレビ見てるだけじゃないですか」

「店長は働かないのが仕事なの。大丈夫、雅美ちゃんの仕事ぶりはちゃんと見てるから」

ちゃんと見てるなら怪我人に掃除させるなよ。心の中で文句を言いながら、私は床の掃き掃除を始める。土足で上がる店内は、どうしても土や泥で汚れてしまう。

十五分後、とりあえず掃き掃除を終えて、ふぅっと短く息を吐く。振り返ってみると、店長はまだテレビを見ていた。

店長はせっかく店にいてもソファーから動かないし、瀬川君は毎日毎日自分の部屋に引きこもっているし、ほとんどの雑用が私の仕事なんだけど、でもまぁ、居心地がいい場所である。




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