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増えると嬉しい秘密4




「荒木!ちょっと待ちなさい!」

白虎店の店内から出て、外壁に取り付けられた階段を下っている時、私は自分を呼ぶ声に振り返った。見ると、私達がさっき出て来たばかりのドアの前に、少し顔を赤くした鳥山さんが立っている。

店長は「先に行ってるよ」と言ってさっさと階段を下って行った。店長がいなくなったのを見ると、鳥山さんが私のいる所まで下りてくる。

「えーと……。鳥山さん、怪我は大丈夫?」

まぁ、白虎店の店長さんを殴るくらいには元気だと思うけどね。

それにしてもいったい何の用だろう。彼女の方から話し掛けてくるなんて。先日の仕事の時のダメ出しでもしに来たのだろうか。

「そんなやわな鍛え方はしてないわ」

私の質問に腕を組んで答える鳥山さん。しかしスカートから覗く足には、白い包帯が巻かれているのが見える。

「あんたこそ腕大丈夫だったの?」

「あ、うん。まだ痛いけど、たいした怪我じゃなかったみたい」

「そう」

そこで鳥山さんはちょっと黙ったので、私は意を決して聞いてみる。

「そういえば何の用事だったの?」

何だか私から聞かないといつまで経っても本題に入らないような気がしたから。

私の言葉を聞いた鳥山さんは、組んでいた腕をほどいて、右手を私に突き付けてきた。一瞬「殴られる!」と思ってしまったことを心の中で謝りながら、突き出された彼女の右手に注目する。そこには、黄色いカバーを纏った鳥山さんのケータイが握られていた。










「お待たせしましたっ」

駐車場に停めてあった店長の黒い車に駆け寄り、助手席のドアを開けて中に乗り込む。すでに運転席に座っていた店長は、シートベルトを絞める私に尋ねた。

「何話してたの?」

「えーと……」

さっきの鳥山さんとのやりとりを簡単に説明しようとして、そこで私はいいことを思い付いた。私は笑顔で店長にこう答える。

「内緒です」

「内緒?」

「店長だって内緒たくさんあるから、私も内緒です」

そう言ってやると、店長は面白くなさそうな顔でぶーぶー文句を言った。私は少しだけいい気分になりながら、まだ手に持ったままだったケータイをポケットにしまった。




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