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無限ループの回答5




姉が朱雀店と別れを告げた翌日、僕の部屋には何故か店長が来ていた。一瞬上根さんかと思ったが、あの人ならノックなんてしないなと考え直す。じゃあ誰だろうと思いながらドアを開けると、そこには店長が立っていた。

「何か用ですか」と尋ねると、店長は前置き無しにこう言った。

「リッ君さ、空がやってた仕事と僕がやってる仕事、やるならどっちがいい?」

意味のわからないその質問に、僕は「はぁ……」と答えにならない声を出すしかなかった。

「どういう意味ですか?」

「空の仕事も僕一人でやるのは嫌だからどっちかリッ君にやってもらおうと思うんだけど、空みたいに外で実際に仕事するのと僕みたいに部屋にこもって裏方の仕事するの、どっちがいい?」

そんな言い方されたら後者を選ぶに決まっている。

「僕みたいな新人より、上根さんと久世さんに任せればいいじゃないですか」

「ああ無理無理、あの二人はただの脳筋馬鹿だから」

右手をぱたぱた振って笑う店長。だからと言って仕事をさせないのはどうかと思う。上根さんは報告書を書いている姿なども見られるが、久世さんに至っては毎日本を読んでいるだけじゃないか。

「……じゃあ裏方の仕事がいいです」

「りょーかい、ならリッ君のパソコンにデータ全部送っちゃうね」

不満がなくなったわけではないが、とりあえず返事をする。それに、何か仕事を貰える方が今よりマシだと思う。

僕の返事を聞いた店長は二階へ戻るのか踵を返した。僕はついその背中を呼び止めてしまった。

「あの、」

「何?」

振り返った店長にポツリと言う。

「僕に姉と同じレベルを要求しないでくださいね」

「そんなのやってみないとわからないよ?」

店長は不服そうな顔でそう言った。やらなくてもわかりきっている。それがわからないから僕はこの人が嫌いなんだ。

パソコンの前でしばらく待っていると、言っていた通りデータが送られてきた。様々な角度から見たこの辺りの地図や、情報収集しやすいSNSサイト、色んな意味で頭に入れておいた方がいい企業や人物のリストまで。ついでに上に送る報告書の書き方の例までくっついてきたが、これも僕がやれという意味だろうか。

送られてきたデータを確認しながら自分の使いやすいように分類し整理していると、再び店長がやってきた。

「ちゃんと届いた?」

「はい」

「じゃあこれからお願いね。わかんないことあったら聞いてね」

店長はそれだけ言うと店の方へ消えて行った。特に何も教えてはくれないということだろうか。全ての人が自分と同じだと思わないでほしい。

イスに座り再びパソコンと向き合う。画面にはたくさんのデータが並んでいる。これからは暇にならずに済みそうだ。




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