表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/378

錆びついた耳鳴りが叫んでいる5




大人として、「貪欲な向上心を持て」「何にでも進んでチャレンジしろ」と語った事があった。次の日の夕方、ニュースの速報を見て、私は自分の言葉を後悔した。

そんなつもりで言ったんじゃない。当たり前だ。私はただ大人として、社会人として必要な向上心を教えただけだった。

あのあと、私は殺害すべき女性の情報と浮島さんの連絡先を神原君に教えた。やはり私は彼の低すぎる温度に怯えていたようだ。

ニュースでは、身体を八つ裂きにされた女性の遺体が発見されたと報じていた。遺体の近くに落ちていた荷物から、被害者は市内に住む花木咲さんだと判明した。浮島さんが殺してくれと願った、あの女性だった。

私はテレビを消した。報告書を載せたら部下達もすぐに知る事になるだろう。私は店を出て、階段を上った。まだ何も知らない部下達の顔を見ているのが辛かった。

神原君は、今日は仕事に来なかった。

その三日後の事だった。私が妻の作った弁当を食べていた所、高瀬君が慌てて店に入ってきた。お昼時、店には数人の部下しかいなかった。

「店長!見ましたか!?これ!」

高瀬君は一目散に私の方に近寄ってきて、手に握りしめていた新聞をデスクの上に開いた。小さな記事を指差す。

「ここ!この前の浮島さんが……」

そして周りを見回す高瀬君。だが、報告書がパソコンを通じて公開されている。社員どころかアルバイトまでこの依頼を知っていた。皆、「浮島」という名前に反応し、こちらを見ている。

私は高瀬君の指差す記事を読んで愕然とした。

【女子大生、頭殴られ死亡】

見出しの下には、浮島円香さんが何者かに鉄パイプで頭を殴られ工事現場で亡くなっているのが発見された、と説明されていた。

「どういう事だ?まさか神原君が……」

慌てて口を押さえた。だが、同じことを思っていたのだろう、高瀬君は何も言わなかった。

そのあと、仕事に来た神原君を問いただしたが、彼は「それはボクやないですわ」と笑っただけだった。

正直私は神原君のその言葉を信じてはいなかった。もしかしたら。そう思っていた。結局、後味の悪いままこの仕事は終わり、私は荷太郎に店を任せ黄龍へ移動した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ