錆びついた耳鳴りが叫んでいる
「ふぁああ……」
目を覚ますと、いつもの朝だった。命を狙わせているなんてうっかり忘れてしまいそうだ。私はモゾモゾと布団から出て着替えると、朝食を摂るために一階のリビングへ向かった。
「おはよ~」
「おーう」
「あれ?お兄ちゃん今日休みだっけ?」
一階に下りると、リビングの隣にある台所でお兄ちゃんが牛乳を一気飲みしていた。
「お前感覚マヒしたのか?今日日曜日だぞ」
「春休みで時間感覚おかしくなったのかも」
どうやらお母さんは朝早く出かけたようだ。キョロキョロと見回してみるが姿が見えない。私はとりあえず食パンをトースターに入れた。
「そういや、昨日のあれは何だよ。寝ようと思って部屋行ったらビビったぞ」
「あ……ごめん。何かあったらお兄ちゃんに頼ろうと思って」
私は昨日の夜、お兄ちゃんの部屋の前にたまにしか使わないお父さんのゴルフクラブを置いておいた。だって冴さんが攻めて来たらと思うと怖かったんだもん。
トースターがパンが焼けたことを知らせる。お兄ちゃんは洗面所の方へ消えて行った。
パンを皿に乗せてイスに座り、テレビをつける。テレビを見つつダラダラとパンを口に運ぶ。ちょうど食べ終わった時にお兄ちゃんが洗面所から戻ってきた。
「あれっ?お兄ちゃんも出かけるの?」
洗面所から戻って来たお兄ちゃんは上着を着て鞄を持っていた。
「まぁな」
「彼女っ!?」
「アホか」
そのまま玄関へスタスタ歩いて行くお兄ちゃん。私は姿が見えなくなったお兄ちゃんに「行ってらっしゃい」と声をかける。それから「行ってきます」と返ってきて、ドアがパタンと閉まる音がした。さて、私もバイトに行きますか。