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ため息注意報5




「で、何?これ」

「い、一応、ガトーショコラ……かなぁ……」

私は「ははは」と引きつった笑みを作った。深夜さんは「もう何を言われても構わない」と、むしろ開き直って堂々としていた。

「さぁ、食え」

「食えるかこんなの。ていうか雅美ちゃんがついていながらこの有様は何?」

私は引きつった笑いを更に引きつらせた。だって目の前にこんなケーキともお菓子とも呼べない「鍋底の焦げを拭いたスポンジの生クリームのせ」を出しておいて「一応頑張りました」なんて口が裂けても言えない。まぁ、私は一応どころかめちゃくちゃ頑張ったんだけどね。

「つべこべ言わずに食えよ。食い物混ぜて作ったもんなんだから、身体に害はないはずだろ」

「害があるとかないとかそういう問題じゃないでしょ。まず前提としてこれは食い物なのかっていう」

「だから食い物だって!食い物混ぜて作ったんだから食い物に決まってんだろ!」

「何で食い物混ぜて石炭とか雑巾とか精製できんのあんたらは。どこの錬金術師だよ」

「アタシは錬金術師じゃねぇ。殺し屋だ」

「そんなん知ってるし、深夜みたいな馬鹿じゃ錬金術師とか夢のまた夢だし」

「いいから食えよ!せっかく作ったんだから!」

「だったら深夜が先に食べてよ。雑巾食って死ぬとか僕ホントに嫌だから」

「だから雑巾っつーな!ケーキだケーキ!チョコレートケーキだろどう見ても!」

「……深夜、前からお前の頭は大丈夫かと心配してたけど、ついに目までおかしくなったか……」

「全然どこもおかしくねぇしお前が作れって言ったんだろ!食えよ!」

「深夜が勝手に作るって言ったんだろ。責任持って台所のごみ箱に捨ててきなさい」

「酷ぇ!アタシの渾身のチョコケーキが生ゴミ扱いかよ!」

「生ゴミってまだ褒めてる方だと思うよ。もとは食い物だったんだから」

「これは今も昔も食い物だろ!」

あ、にっしーからメッセージ。どうやら今日は短縮授業で、一時間ほど時間が空くらしい。バイトの前にチョコ交換をしないか、と言われた。私は目の前で言い争うおとなげない二人の大人を見た。

「雑巾を食い物って……深夜そんなに生活に困ってたの?募金募ってあげようか?」

「いらねぇよ!いいから食うか食わないかさっさと決めろよ!」

「食べないに決まってるじゃん。深夜はそんなに僕を殺したいの?十年来の友情はどこ行ったの?」

「その友情の結果がこれだろ!アタシの努力を無駄にすんなよ!」

「深夜じゃなくて雅美ちゃんの努力でしょ。……あれ、雅美ちゃんは?」

私はその声を、引き戸の向こう側で聞いていた。黙って出てきたけどそんなものは関係ない。呼び戻される前にさっさとにっしーの所へ行こう。

それにしても五時間目まで受けてやっと短縮授業だと気づくなんて、やっぱりにっしーはバk……いや、おっちょこちょいだな。ていうかもうハッキリ言っていい?バカだよ。どいつもこいつもバカだよ。

私は本日最後だと願いながら、またため息をついた。





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