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ため息注意報3




「何で私を巻き込むんですか」

「アホかお前!アタシがチョコレートケーキなんて作れるわけないだろ!」

アホはあなたですよ。まったく、作れないくせに妙な意地張るからこうなるんですよ。呆れる私の隣で、深夜さんは「あいつ昨日はかわいかったんだけどなー」とボヤいている。

「深夜さん、さっきも言いましたけど、お菓子は私も得意じゃないですからね」

「クッキー作ったじゃねーか」

「あんなの混ぜて焼くだけですよ」

「チョコレートケーキは混ぜて焼くだけじゃできねーのか?」

「そ、それは……私は作ったことないから何とも……」

ああもう、本当にこの人は。出てくるたびに余計な事しかしてくれないよ。私はもう何度目かわからないため息をついてから、これからどうするべきか考えだした。

まず、深夜さんがどれくらいお菓子作れるかだよね。でも深夜さんだって一応女性だ。それに、集団生活してるって聞いたし、料理くらいは作ったことあるだろう。

「深夜さん、料理はどれくらい出来るんですか?」

「そりゃーカレーくらいは作れるぜ」

カレーって……。そんなの野菜茹でてルー入れれば出来るじゃないですか。

「今までご飯とかどうしてたんですか?」

「メシは下っ端の仕事だしなぁ。高校出たくらいから、料理なんて全然してねーよ」

作ってもらって食うだけか。何ともまぁ王様みたいな生活をなさっているんですねぇあなたは。とにかく、料理はほぼ初心者。お菓子はさらに初心者。一体どうやって店長をギャフンと言わせるんですか。私は出そうになったため息を、ハッと気づいてこらえた。いけない、こんな人のせいで幸せが逃げちゃう。

「なぁ、チョコレートケーキって何があれば出来るんだ?」

「え?えっと……小麦粉と、砂糖と、あとバターと……卵?生クリームとかも入れるのかな……」

「曖昧じゃねーか」

「そりゃそうですよ。だって普段お菓子なんて作りませんもん」

自分で蒔いた種でしょう。花が咲くまで自分で面倒見なさい!

「お菓子の本とか……買った方がいいか?」

「テキトーに作っても店長に馬鹿にされるだけですよ」

深夜さんは「それだけは絶対にイヤだ」と鼻息荒く言った。そのやる気をちょっとでも技術に変えることができたらなぁ。

私はしばらく悩んだが、仕方がない。助っ人に助けを求める事にする。そうと決まればさっそくスマホを取り出す。深夜さんは顔面に「?」を貼り付けながら私の行動を見守っていた。

多分今授業中だろうから、緊急事態だが電話ではなくメールを送る。私が助けを求めたのは、高校二年の友達、にっしーだった。にっしーの趣味はお菓子作りだ。料理の方は壊滅的だが、お菓子の事なら何か助言がもらえるはずだ。というか、そう信じたい。

「誰に連絡したんだ?」

「友達です。授業中にメッセージ返してくれるか分かりませんが……」

そう答えたが、メッセージはすぐに返ってきた。しかもかなりの文章量だった。何この能力。ただのバk……いや、おっちょこちょいだと思ってたら、こんな能力隠し持っていたの?

私と深夜さんは、スマホの小さな画面を覗き込んだ。

【材料です。

チョコレート(板チョコでいいです。ビターがオススメ) 、百二十グラムくらい。

砂糖 、百グラム。

バターか製菓用マーガリン、百グラム。

卵、三個。

薄力粉か強力粉、六十グラム。

ココア、大さじ一くらい。

飾り用の粉砂糖とか生クリームとかあればいいと思います。

作り方を説明します。

まず型にクッキングシートをひきます。二十センチの丸型がいいです。

薄力粉とココアは振いにかけておきます。オーブンを百八十度に余熱し始めます。

チョコレートを細かく包丁で刻んでおきます。ボールを湯銭にかけ、チョコレートとバターを入れて溶かします。絶対に水が入らないようにしてください!

卵を卵黄と卵白に分けて……】

「ちょ、こいつ書きすぎだろ!アタシギブ!」

まだ半分も読んでいない所で、深夜さんがリタイアした。にっしー……ちゃんと授業聞いてるのかな……。私はにっしーに【ありがとう】とスタンプを返して、とりあえずスマホから顔を上げた。

「でも深夜さん!作り方さえ分かればこっちのもんですよ!」

「でもそれ……アタシに出来んのか?」

「深夜さんが言い出した事でしょう!私も手伝ってあげますから!」

「お、おお……。そうだよな」

怖じけづく深夜さんを引きずって、私は近所のスーパーに向かった。




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