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戻ってきたのだろうか?4




「青龍店の人のこと、店長に聞くのもなぁ……」

やっぱり瀬川君に聞くのが良いだろうか。リビングでテレビを見ながらそう考えていると、お兄ちゃんが「何がだ?」と声をかけてきた。どうやら私は考えていた事を声に出してしまっていたらしい。「何でも」と言うと「そうか」と言って彼はあっさり引き下がった。バラエティー番組を流すテレビを見てお父さんが笑う。お母さんは黙って夕飯のカレーの皿を洗っていた。

鳥山さんに聞いただけだが、店長は青龍店の店長が嫌いらしい。あの店長に嫌いな人がいることがだいぶと驚きである。とりあえずそんな事だから、今日会ったあの姉弟のことを店長には聞きにくい。仕方がないから明日瀬川君に聞こう。夜にメッセージを飛ばすほど、私と瀬川君仲良くないのだ。モヤモヤは残るが、諦めて今日はさっさと寝よう。店長だったなら遠慮なく夜中でも連絡できたのに。

「雅美、今日は早く帰ってきてたのね。明日はどうなの?」

「今日はたまたま」

今日、私が帰ってきたら家は無人だった。どうやらお母さんは今日のうちにゴミ捨てに行っていたようだ。確か明日は燃えるゴミの日。おかげで今はリビングのゴミ箱も塵一つ入っていない。

「そう……じゃあ明日は遅いのね」

なぜか残念そうな様子である。黙ってテレビを見ていたお父さんが口を開く。

「いやな、明日久しぶりにどっか食いに行こうかって話をしていたんだ」

「えっ、お父さん仕事は?」

そう尋ねたが、お父さんは「ははは」と笑っただけだった。

「雅美の帰りが早いんだったら久しぶりに行こうかなって言ってたの」

「いいよ無理に行かなくても」

「でも最近どこにも行ってなかったし」

最近というか、私がこのバイトを始めた辺りからだ。私の帰りが毎日遅いから、家族で夕飯を食べに行く機会がなくなってしまったのである。

「これいるか?」

その声に視線を動かすと、お兄ちゃんがさっきまで食べていたスナック菓子を差し出していた。どうやらあまり口に合わなかったらしい。私もちょっと食べてみたいと思っていたし、遠慮なくそれを受け取った。お兄ちゃんの一言で、明日夕飯を食べに行く話は無くなった雰囲気になる。テレビのチャンネル権がお父さんによって独占されているため、ここに居ても時間の無駄だと思ったのか、お兄ちゃんはさっさと自分の部屋に戻っていった。

「雅美、あなた英語の課題出たんでしょ?早めにやっとかないとまた溜まるわよ」

「は━━ぁい」

お母さんは台所の流しでゴシゴシお皿を洗いながらそう言った。その隣の冷蔵庫から出したお茶を一杯飲み、流しの隅に飲み終わったコップを置いた。課題やれって言われたらやる気なくなるなぁ……。私が二階にある自分の部屋へ戻ろうとリビングを横切ると、お父さんに「テレビが見えないだろ」と怒られた。私はついムッとして、何も言わずにリビングを出た。




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