表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/378

どうしてなんですか7




「ロ━━ンっ」

「ま、また!?」

「うおお、やるなぁ荒木さん。わしゃもう引退を考えようか……」

「まぁまぁ、中村さん、荒木さんがちょっと強かっただけですよ。私達の麻雀魂は永遠に不滅です」

「さ、佐藤さん……」

よーしよし、三連勝~。しかもぶっち切りで。私は意気揚々と牌を混ぜ始めた。……あれ?何か違くない?

急に夢から覚めた私は、思わず両手を広げたままの状態で固まった。隣の席の中村さんが、牌を混ぜるのをやめた私に不思議そうな目を向ける。何故私はこんなにも馴染んでるのだろうか。何故こんなにも楽しそうにジャラジャラやってるのだろうか。

ハッとして壁の時計を見る。私がここに来てから二時間近くが経過していた。まさか、こんなにも麻雀にのめり込むだなんて。タイミングを見てさっさとお暇しようと思っていたのに。このおじいさん達が私を担ぐのも悪い。

急に目が覚めて、さて何て言ってこの場を立ち去ろうかと思案した時、上着のポケットのスマホが鳴った。おじいさん達が一瞬こちらを見るが、牌を混ぜる手は止めなかった。私は着信が瀬川君からだという事に驚きつつ、通話ボタンを押す。

「もしもし?」

《荒木さん?今どこにいる?》

「えーと、どこって言われても……」

近くに目立つ建物もなかったので、一言じゃ表しにくい。ひとまず相松市と答えようとしたところで、瀬川君の言葉に遮られた。こんなに焦ってる瀬川君は珍しい。

《店長と電話が繋がらないんだ》

「あれっ?瀬川君も?実は私も」

そこでようやく、私は自分が相松市にいることを伝える事ができた。

《僕も今店にいないんだ。店長に仕事を任されて、大阪にいるんだけど》

今日瀬川君が店にいない事を今初めて知った。私がここへ向かう際のやり取りもバタバタで、彼の自転車が店先にあるかを確認するのも忘れていた。

《荒木さん今すぐ帰れる?》

「う、うんっ」

私は慌てて荷物をつかんだ。おじいさん三人組が揃って顔を上げた。

《人払いするなんて絶対怪しいから。僕も今店に向かってる》

「わ、わかった!すぐ帰る!」

私は三人への挨拶もそこそこに、部屋を飛び出した。真っすぐ伸びた廊下が私の足音をグワングワンと反響させる。

停めておいた車に乗り込み、エンジンをかけるとすぐにアクセルを踏み込む。車がボコボコになったらすみません、と心の中で店長に謝罪しておく。

瀬川君の話によると、彼は別の依頼で朝早くに大阪に出かけたらしい。それは店長に言われた事で、店にはどうせ私がいるだろうと思って安心して向かったそうだ。

ところが仕事が終わって店長に連絡しようと電話をしてみると、それが繋がらない。不審に思った瀬川君は店の電話にもかけてみたが、それも繋がらなかったそうだ。そうして私が店にいない可能性を考えた。

そこで私に電話をかけると、案の定外出中。しかも店長命令で。自分が帰るにはまだ時間がかかりそうだから、急いで先に帰ってくれと言われた。店に帰った所で、店長がいるかどうかは分からないが。

とりあえず私は今こうして車を飛ばしている。行きの時とは違う意味でクラクションを鳴らされまくっている。今度はほんとうに奇跡的に車体に傷をつけることなく、私は店までたどり着いた。むしろあれくらいスピードが出てた方が運転しやすいのかも、頭の片隅で考える。

店の前に車を乗り捨てて、引き戸に飛び付いてそれを開け放った。

「店長……!」

そして私はそれを見た。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ