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青春は駆け足で6




「売り上げ全然目標に届いてないじゃん」

「やっぱり九重さんのメイドじゃダメだったんだ。麗雷さんのツンデレメイドじゃないと!」

「キモいこと言うな変態」

実行委員に一日目の売り上げが書かれた紙を返す麗雷。さんざん罵倒されている康介だが、その顔には満足気な笑顔が浮かんでいた。

康介はあれからずっと麗雷について回っている。初めは気持ち悪がっていた麗雷だったが、もう慣れてしまったようだ。それに、結歌や凪砂が間に入ってくれている。璃夏だけは黒い笑みを見せていたが。

「麗雷、放課後どうする?」

「私はバイト。あんたらは残るんでしょ?」

「璃夏は帰るって。私は凪砂ともっかい回るわ」

通常授業だったらもう学校が終わっている時間だが、まだまだ遊び足りない生徒も多い。文化祭は、この時間になると帰る人と残って遊ぶ人に別れる。だいたいの人は学校に残るが、中には麗雷のように乗り気じゃなく帰る者もいる。

三年A組では、売り上げがイマイチだったので、放課後も店を開けることに決めた。今は教室で今後の店番係を決めている。

残るつもりのない麗雷には関係のない話なので、先に帰らせてもらうことにする。

「んじゃ、私帰るけど……璃夏は?」

「さっさと帰ったよ」

麗雷は、付き合い悪いなぁ、と心の中で悪態をつく。自分もあまり良い方ではないが、璃夏はそれよりさらに自己中心的だ。たまに殴ってしまいたくなる。

結歌と凪砂に挨拶をして、実行委員の女の子に近づく。クラスの雰囲気を乱して先に帰ろうと言うのだから、黙って帰るのは失礼だ。

「じゃあ悪いけど、私先帰るわね」

「うん。また明日ね、鳥山さん、高野君」

「ん、また明日……って、なんで一緒に帰ろうとしてんのよあんた!」

麗雷は実行委員の女の子に手を振っている康介に怒鳴り付ける。康介は帰る準備を万全に整えて、麗雷の隣に立っていた。

「今日メイド服着てもらえなかったから……」

「関係ないでしょッ!」

「やっぱりバニーガールの方が……?」

「どっちもイヤに決まってんでしょもう一回殴られたいの!?」

埒が明かないと思ったのか、麗雷は康介を置いてさっさと歩き出した。

「あっ、待ってくれ」

慌てて康介が後を追うが、

「ついて来んな変態。警察呼ぶぞ」

ものすごい形相で睨まれてしまう。手に持っているケータイの画面に表示されている【一一〇】が麗雷の本気を表していた。

「じゃ、じゃぁ麗雷さん!明日のライブを見てくれ!僕も出るから!」

数メートル先でくるりと振り返る麗雷。その顔には、明らかにイヤそうな表情が浮かんでいた。

「はぁ?私放課後バイトだし」

「そ、そこを何とか……」

「無理無理。あんたと違って忙しいのよ私」

「そうですか……」

肩を落とす康介。そして「仕方ないですよね……」と呟いた。

「仕方ないから、明日から麗雷さんの後ついて回りますね」

「はぁッ!?フザけたこと言ってんじゃないわよ!」

麗雷は康介の言葉に本気で引くいた。しかし康介は当たり前のように言う。

「だって麗雷さんが明日のライブ見てくれないから……僕はもうストーカーになるしか……」

「ストーカーって自覚してんのかい!」

つい全力でツッコミを入れてしまった麗雷。しかし康介が明日からついて回るというのは本気のようだ。麗雷はしばらく考えたが、渋々こう言った。

「わかったわよ、明日行ってあげるから、そのかわり二度と私に関わらないでよね!」





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