みだりに愛をうたわないで
みだりに愛をうたわないで、
自分に酔っているだけでしょう。
私たちはみだれた夜を楽しめばいいのよ。
そこに愛なんて高尚なものは存在しないし、
理性なんてものが働く余地はない。
難しいことを考えていたらイケなくなるわ。
キスをして、舌を絡めて、互いに貪りあえればそれでいいじゃない。
それなのに、ねえ、なにが不満なの?
首筋に歯を立てるような可愛さが欲しいの?
それとも愛されている実感が欲しいの?
多くを望まないでよ。
私たち、そういう関係じゃないわ。
みだりに愛をうたわないで。
ことが終われば、そっぽ向いて眠るくせに。
あなたが愛をうたうのは、孤独な夜を終わらせるため。
でもその夜が明けることはないのでしょう。
あなたは愛のカタチは一つだと思い込んでいる。
高純度のダイヤモンドのように、傷つくことなく、
永遠に輝き続けるものだと。
そんなわけないじゃない。
私たちは老いには勝てないわ。
永遠なんてもの存在しないのよ。
みだりに愛をうたわないで、
自分に酔っているだけでしょう。
私たちはみだれた夜を楽しめばいいのよ。
刹那的な快楽を貪って、愛の意味なんて犬にでも食わせておけばいい。
ねえ、楽しみましょう?
夜は存外短いわ。
だから愛をうたわないで。