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第39話 終息

 ボスの部屋に足を踏み入れた俺が最初に感じた事は寒々しいだった。


 部屋の中央には一頭の漆黒の狼が鎮座していた。黒王狼とは明らかに威圧感が違う。


「アホ妖精。コイツは?」


「ヘルハウンド。狼系の魔物はウルフタイプとハウンドタイプが居るの。今まで戦ってきたのはウルフタイプだったけど、ボスはハウンドタイプらしいわね」


 狼系?ハウンドって確か犬の種類じゃなかったか?まあ、犬も狼も魔物では似たような物かもしれないが。


「強いのか?」


「銀王狼と紫皇狼の間くらい」


 なるほど。確かに強いが今の俺なら勝てそうだな。


「悪いな。お前を倒すぜ」


「………」


 『ハザン』を構える俺を、そいつは鳴き声一つ出さずにじっと見つめる。いや、睨みつける。正直言って異常だ。今までの魔物とは決定的に違う。


「………」


「……ちっ!」


 何を狙っているのか分からない。得体にしれない恐怖が有る。


「コアは?あれか」


 先ずはコアから破壊しようとコアに向かって歩み始めるが…


「ワォォォォォン!!」


「っっ!!」


 狼どもお得意の衝撃波によって行く手を阻まれる。


「戦う気が無いわけじゃないのか」


 じゃあなんで動かないんだコイツ?座ったまま俺に勝てると思って舐めきってるのか?


「グルゥ」


 一声唸ってそいつは不快そうに頭を振る。


「ねえ蓮」


「何だアホ妖精」


「アイツがなんで動かないのか解った」


「ほう。なんでだ?」


「アイツ、メスだよ。妊娠してる。だから動けないんだ」


「はぁ?」


 ボス部屋に着いたらボスが妊娠中で戦闘できなかった。そんなダンジョン有って良いのか?


 いやまあ、ゲームじゃないんだから常にボスが万全の状態で居るとは思えないけどさ。


「どうするか」


 そりゃあボスだから倒さないといけないんだけどさ。妊娠してるってなるとどうにも倒しづらい。最悪「狂化」使って理性が吹っ飛べばそんなの気にせずに殺れるんだけど、でもなぁ〜


【人間よ。強き人間よ】


「は?」


 どうしたものか考えていると、頭の中に声が響いて来た。


【我はヘルハウンド。このダンジョンのボスである】


 どうやら頭に響いてくる声はヘルハウンドのテレパシー的な能力らしい。


【強き人間よ。どうか我を見逃して欲しい。我はこの子を抱えたまま死ぬわけにはいかぬのだ】


 どう聴いても命乞いである。脳内に響く声にも必死さが伝わってくる。


「それは出来ない。ダンジョンを潰さないと犠牲者が増えるんだ。俺達とアンタ達は共存出来ない。悪いが諦めてくれ」


【共存できぬと何故決めつける。妥協点を探れるかもしれぬではないか】


 何か、犬のくせに大分賢いことを言う。まあ、犬は賢い動物か。


「妥協点?そんな物ないぞ。お前らが生きていたら俺達人間は生きづらい」


【ダンジョンが邪魔だと言うのならコアは壊してくれて構わん。それでダンジョンの機能は麻痺する。どうだ】


「悪いが駄目だ。コアだけ壊してもボスが生きていればまたコアが復元されてダンジョンは再稼働するはずだ」


【確かにな。では、我がこのダンジョンから出よう】


「いや、出られたら余計に困るけど!て言うか、出たから何だって言うんだ?」


【我がお主の使い魔になろう】


「使い魔?何だそれ?」


【圧倒的な力を持つものが弱きものに名を与えた時、名を与えられた弱きものは、アカシックレコードに名を与えられた時と動揺ネームドとなるが、名を与えたものの魔素が存在自体に刻まれる為、名付けたものに逆らえなくなる。それが使い魔だ】


「そうなのか?アホ妖精」


「そうだよ〜」


 アホ妖精も肯定してくる。どうやら本当らしい。


「使い魔に成るとボスじゃなくなるのか?」


【ダンジョンとの繋がりが切れるからな。新たなボスが発生するまで、一時的にボスが死んだ時と同じ状態になる。そうなってからコアを壊すと良い】


「餌とかどうするんだ?お前人間とか喰うんじゃねえの?」


【餌に肉さえくれれば、それが何の肉かは拘らない。取り立てて人肉が好きと言うわけではない。食えないなら食えないで十分だ。だが、肉は欲しいな。鹿だろうが熊だろうが、犬だろうがそこは拘らんがな。何なら魔物の肉でも良い】


 なるほど。それならそこまでデメリットは無いな。コイツ、デカイからエサ代が心配だけど、最悪大隅警視正に頼もう。被害を減らすためと思えば何とかしてくれるだろう。


「解った!そういうことならお前を使い魔にしよう。どうすれば良い?」


【何でも良い。我に名を付けよ。それで我はお主の使い魔となる】


「名前ねぇ〜」


 黒いからブラック?安直すぎるな?黒から連想して夜でナイト?ああ!ちょっと洒落てノワールはどうだろう?うん!何か語感も良いな。


「じゃあ!ノワールで!」


【ノワール!】


 ノワールが呟いた瞬間、頭の中に声が響く。


“アカシックレコードより通達.個体名大神 蓮と個体名のノワールに主従の回路(パス)の形成を確認。条件を満たした個体名大神 蓮の進化を確認通達終了”


 え?何だ今の?俺が進化したのか?


「蓮!何か凄いけど、とりあえず、コアを砕こ!」


「ああ!」


 『ハザン』でコアを砕き、その能力を確認する。


“カッターの性能”


  銘:獣克刃・ハザン


所有者:大神 蓮


 特性:獣克(霊長類と哺乳類、またはそれらに酷似した形状の魔物や生態を持つ魔物に対して

       ウェポンスキル・ウェポンスペル・バフの効果を3倍にする)


 ランク    :幻想級<ファンタズマ>


 ウェポンスキル:自動修復(極)      コスト5 

         刃操           コスト3 

         自動魔力回復(極)    コスト8 

         飛刃(極)        コスト5 

         風操(極)        コスト12 

         気体制御(極)      コスト20

         天候操作         コスト20

         電気操作(極)      コスト12

         磁力制御(極)      コスト12〈New〉

         擬態(極)        コスト10〈New〉

         (空きキャパシティー1693)


 ウェポンスペル:身体強化(極)      コスト5 

         チェンジサイズ      コスト1 

         エンチェント       コスト2

         風魔術1種(極)     コスト100

         『内容:ウインドボール

             ウインドショット

             ウインドジャベリン

             アクセルウインド

             ウインドカッター

             ウインドハンマー

             ウインドウォール

             インビィジブルショット

             ウインドスキン

             エンチェントアクセルウイン

             トルネード

             トルネードジャベリン

             トルネードキャッスル

             クイックアクセル

             ウインドロード

             テンペスト

             テンペストアクセル

             クイックトルネード

             サイクロン

             サイクロンボール』    

         サンダーバレット     コスト3 

         サンダーフィールド    コスト10

         アダマンエンチェント   コスト10

         オリハルコンエンチェント コスト20 

         アイアンメイク      コスト50

         アルケミック(中)    コスト100〈New〉       

         (空きキャパシティー1499)

           

 バフ     :身体強化(極)      コスト5 

         腕力強化(極)      コスト5 

         サモン          コスト1 

         超人化(極)       コスト15 

         斬撃強化(極)      コスト5 

         硬化(極)        コスト10

         超回復          コスト3

         超再生          コスト60

         空立           コスト10

         大気操作(極)      コスト20

         転移(弱)        コスト50〈New〉

         高速回復         コスト10〈New〉         

         (空きキャパシティー1606)


 マナ充填率  :100%


  何気に能力増えてた。特にアルケミックって錬金術だよな?錬金術!心躍る言葉だ。


「戻るか!着いてこい!ノワール!」


【了解した!】


 こうして狼ダンジョンも攻略することに成功した。まだ国内には二つのダンジョンが残ってるし、海外でもかなり大変な事になってるらしいが、とりあえず、俺の街にはダンジョンの脅威が無くなった。


ー○●○ー


 一月後。俺が狼ダンジョンを攻略して三日後に最後のファングウルフが討伐され、完全に街に平和が戻った。これを受けて、政府はダンジョンと魔物について全国民に情報を伝えた。


 アホ妖精がアドバイザーとして首相官邸で働く事になったり、俺が英雄の様な扱いを受けたりと色々有ったが、その騒ぎはすぐに収まり、目下新聞を騒がせているのは九州ダンジョンの攻略状況と進藤翔馬、新城紅葉の動向だ。

 因みに、進藤翔馬と新城紅葉は、非常事態での話とは言え、二人共何名か人を殺めており、裁判が行われる予定だったが、どちらも行方が知れない。新城紅葉は居たコロニー(避難するために人々が集まっていた場所を便宜的にそう呼んでいる)が壊滅して以降の足取りが不明だし、進藤翔馬は、捕まえに来た剣客警官隊を食い殺して逃走した。政府で行方を追っているが、足取りは掴めないそうだ。浅野が情報提供をしているが、自身より強者の情報は、本人が知られたくないと思っていれば知りにくいそうで、苦戦している。


 そして俺はと言うと、一応普通に高校に戻ったが、少し特別な身分を貰った。それが冒険者だ。


 一応冒険者証と言う免許証があり、これが有れば、魔物を討伐するという名目なら学校を休んでも公欠扱いだ。


 因みに、ダンジョンの情報を世間に公開した際、冒険者に成りたいと吐かすアホが大量に出没し、政府も雇用対策の一環として認めたが、大半が九州ダンジョンで屍を晒すか、ギブアップしたので、今では試験を行って冒険者証を発行している。


 現在俺や愛理を含めて五人居るそうだ。


「おにぃ!時間だよ!!」


「ああ!もうそんな時間か!」


 愛理の慌てた声に急かされ、俺は朝食のパンを牛乳で流し込み席を立つ。今日から学校も授業再開だ。世界中に混乱をもたらしたダンジョン騒動だが、少なくとも、俺の周りでは日常が戻り始めていた。 


 一旦は完結します。

 駄作にお付き合いいただきありがとうございます。

 書き直しをしていますので、機会が有れば、修正版と九州編を別で上げるかも知れません。

 

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