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独白3 強者達(進藤 翔馬編)

 いい気分だ。自分を虐げていたアホどもは順番に魔物の餌にしている。


 僕が虐げられるのを見ながら僕をキモいと罵っていた頭の湧いた雌豚共は下僕達の慰みものにしている。


 そして、僕が虐げられるのを無視し続けてきた臆病者や無責任な大人は全員今では僕の下僕になっている。


 最高だ。気分が良い。狼どもの襲撃を愚かな人々は災害だと嘆いているが、違う。


 この狼どもの襲撃は僕のような選ばれた人間への神からの試練であり、愚か者達への裁きだ。


「翔馬様」


「どうした?」


「狼どもがココへ向かってきます。数は5頭」


 狼どもかコリもせずにまた来たのか。まあちょうど良い。


「餌を用意しろ。15番から17番だ」


「え、餌をでございますか?」


「どうした?速くしろ」


「ははあ」


 僕が手から炎を出すと、モタモタしていた下僕は平伏して去っていく。そして、すぐに命令が実行された。


「離せコラ」


「ふざけんなこの」


「翔馬テメエ、こんなことしてただで済むと思ってんのか」


 手足を縛られた状態で転がされ、口々に叫ぶ3匹の餌共。相変わらず見にくい。


「黙れ」


「ギャァァァァ」


「「ひっぃぃぃ」」


 あまりにも五月蝿いので、ビー玉サイズの炎の玉を弾いて15番の右目に当てる。


「あ、あ、あぁぁぁ」


 炎によって右目を焼かれた15番はたちまちおとなしくなり、16番と17番も青い顔で黙り込む。


 やっと静かになった。


「狼どもが走り出しました。こちらに気づいた様です」


「15番を出せ」


「は、は」


「あ、あ、や、やめてくれ」


 15番が狼どもの前に放り出される。


「グルゥ」


「ガウ」


「ひっ、く、来るな」


 15番は身をよじり、なんとか狼どもから離れようとする。


「ガウ」


「ワフン」


「た、助けて。ギャァァァァァ」


 しかし当然無意味であり、生きたままその身を狼どもに食いちぎられていく。


「はは、下品な悲鳴だな。あのクズにはお似合いだ。そうは思わないか?」


「は?はあ」


「ま、全くその通りでございます」


 ずっと見ていたくなるような良いショーだが、そろそろ狼どもを殺らなくてはいけない。別にクズの踊り食いが見たくて狼どもに投げたわけではないのだ。


「アレだけ血が出ていれば狼どももその匂いと味に夢中だろう」


 バスケットボールサイズの炎の玉を手元に作り、それをビー玉サイズに圧縮する。


「まずはアイツにするか」


 ビー玉サイズの炎の玉を狼の目に向かって弾く。


「ギャウン」


 見事に命中した炎の玉は狼の眼球を焼いて更に奥へと進む。


「ギャボ」


 そのタイミングで圧縮を解くと頭の内部で膨れ上がった炎に脳を焼かれ、狼は絶命する。


「仲間が死んだのにお食事に夢中か?よっぽど腹が減っていたのか?それともよっぽどあのクズが美味いのか?まあ、どっちでも良いことだな」


 もう1頭を同じ方法で倒すと、流石に気づいたのか、残り3頭が此方を見る。


「やっと気づいたか?」


 此方を見た瞬間に放った炎の玉で3頭目も絶命するが、次に放った4発目は躱されてしまう。


「ちっ、流石に素早いな」


 狼どもがこちらに向かって走ってくる。


「2頭なら直接戦っても問題ないが、まあ、折角餌を用意しているのだ。安全策を取るに越したことはない」


 ナイフを取り出して16番に近づく。


「ま、待ってくれ翔馬。俺達同じクラスメートじゃないか」


 餌が何か鳴き始める。構わずに作業を続けようと餌に近づく。


「そ、その今まで、悪かったな。俺だってホントはあんな事したくなかったんだよ。でも藤堂に言われて逆らえなくて。なあ、仲直りしようぜ。同じ高校の仲間じゃねえか」


 ナイフを餌の首筋に当てる。


「な、なんとか言えよなあ」


 死ぬほど深く成らないように、しかし血は大量に出るように、力加減に気を付けて餌に傷を入れる。


「いってぇぇ」


 いい感じに血が出ているのを確認して16を持ち上げる。


「や、やめてくれ。助けてくれ翔馬」


「翔馬様。狼どもが」


 下僕の声に釣られてみてみると、狼どもはバリケードのすぐ側に迫っていた。


「それ」


「やめてくれぇぇぇぇ」


 すぐそこまで迫った狼どもに16番を投げる。


「グルゥ」


「ガウゥゥ」


 狼どもは2頭とも敵と戦わなくてはいけないと解っている。しかし、まだ生きている新鮮な餌。しかも血を流していて本能を刺激する。


「「グゥゥ」」


 狼どもの動きが止まる。餌に齧り付きたい衝動を抑えるのに必死なのだろう。


「止まったら良い的だ」


 新たに放った炎の玉に4頭目が眼球を焼かれ、頭の内部で炎が充満して絶命する。


「ガゥ」


 とうとう最後の1頭になった5頭目がこちらに向かって構えを取る。


「うむ」


 出ていって戦おうか?敵はあと1頭。勝てるだろう。だがノコノコ出ていって他に潜んでいる奴が出てくる可能性も有る。ココは安全策を取ろう。


「敵意が何時まで持つかな?」


 次は圧縮していない普通の炎の玉を餌に向かって放つ。


「あ、熱いぃぃぃぃ」


 餌の表面が適度に焼け、その匂いを嗅いだ狼は誘惑に抗えず餌に齧り付く。


「ギャァァァァァ」


 餌を食いちぎり、血が新たに吹き出るたびに狼は夢中で食らいつく。


 最早敵の存在を完全に忘れてしまった様だ。


「ラスト」


「ギャウン」


 圧縮した炎の玉が最後の狼を絶命させる。


「終わったな。よし、お前」


「はっ」


「狼共の死体の中に有る石を採集してこい」


「畏まりました」

 

 命じられた下僕はすぐに動き、狼の体内から白っぽい石を5つ取り出して持ってくる。


「どうぞ」


「ああ」


 下僕から石を受取り、じっくりと眺める。これのおかげで僕の人生は変わった。正に宝石だ。


 早く食って力を更に増さなくてはいけないと解っているが、ついつい見入ってしまう。


「あの、翔馬様」


「ん?何だ?」


 下僕の声に楽しい時間を邪魔され、少し腹が立つ。


「その、16番はまだ息がございました。こちらに運んできて治療したいのですが、よろしいでしょうか?」


「別に構わないが無意味だろう?」


 腹を食い破られて居るのだ。今生きがあっても助かる見込みなど無い。


「やるだけやってみようかと」


「まあ、止はしないが」


「ありがとうございます」


 下僕は俺に深々と頭を下げると16番を回収に向かう。


「翔馬様」


「ん?」


 次は別の下僕が話しかけてくる。


「何だ?僕は今狼どもを倒したばかりで疲れているんだが」


「申し訳ありません。ですがお願いがあります」


「お願い?お前が?」


「はい」


「まあ良い。言うだけ言ってみろ」


 下僕の分際でこの僕に頼みごとなど10年早いが、今日は狼の石が5つも手に入って気分が良い。まあ聴くだけ聴いてやろう。


「もう狼たちとの戦いで囮を使うのを止めてください。彼等は餌ではありません。生きている同じ人間です。このような行い、人道に反している」


「ふざけたことを」


「へ?ギャァァァァ」


 作り出したビー玉サイズの炎の玉を弾いてその下僕の目を焼く。


「あ、あああ」


 目を抑えて倒れ込む下僕。いや、餌。


「誰か居るか?」


「「はっ、こちらに」」


 人を呼ぶと2人の下僕が駆け付ける。


「それはこの僕に逆らった反逆者だ。餌にする。倉庫に入れておけ」


「「は?ははぁ」」


 2人は一瞬呆けた顔をした後、意味を理解したのか、その餌を拘束して引っ張っていく。


「お、お待ち下さい。お待ちを」


 餌の悲鳴が暫く聞こえたが、すぐに静かになる。 


「もう良いか」


 近くに誰も居なくなった事を確認し、僕は狼から採取した石を口に入れ、一気に飲み込む。


「おぇ。食べる時は最悪だな」


 本来食べ物ではなのだろう。食べ辛いことこの上ないが、食べると、一瞬力が漲ってくる。

 

 すぐにその感覚は消えるが先程よりも若干力が強くなった。


 続けて残りも飲み込み、力を増していく。


「折角力を手に入れたんだ。もっと強くならないとな」


 世の中クズばかりだ。神に選ばれた僕が全員支配してやる事が正義なんだ。

ストックが尽きたので週1更新にします。

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