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第23話 刃の価値

 朝の日差しが窓から差込み、眩しくて目を覚ます。


「ああ、カーテン閉めてなかったな」


 昨日アホ妖精のとんでも発言を聴き、そのまま眠ってしまったので、カーテンは開けっ放し。当然朝日がサンサンと差し込んでいた。


「まだ朝の7時か」


 スマフォで確認すると時間はまだ早いが、とりあえず浅野に電話する。


「もしもし?こんな時間に何の用だ。蓮」


「至急調べてもらいたい事が有る。視聴覚室に来てくれ」


「了解」


 特に質問も無く了承すると、浅野は電話を切った。


 俺はスマフォをリュックに戻し、寝ているアホ妖精をデコピンで起こす。


「ブギャ。何すんのよ蓮」


「起きろ。昨日の話の続きだ。ホントなのか?」


「昨日の話?」


 俺の言葉にアホ妖精は最初、首を傾げたが、すぐに思い出したようで「ああ」と頷く。


「魔具のカケラの話ね。本当よ。実際、昨日作って見たでしょ」


 アホ妖精は部屋の隅に置かれた歪な形の即席の剣を見る。


「確かにそうなんだけどな」


 イマイチ大丈夫か心配だ。そんなふうに思っていると、浅野が視聴覚室に入ってくる。


「よう蓮。調べてほしい事って何だ?」


「『ハザン』から切り離した刃が今どうなってるか調べて欲しい」


「『ハザン』から切り離した刃?何でそんなこと気になるんだ?別に良いけど」


 浅野は『叡智』を発動すると俺にとっては予想通りの、そして浅野にとっては予想外の答えが出た。


 質問:『ハザン』が今まで切り離した刃はどうなっているか?


 回答:全て〈特別級〉スペシャルの魔具に成っている。

「な、何だこりゃ?」


 ヤッパリか。


 浅野が大口を空けて固まってしまったのでに事情を話すことにする。


「実は昨日アホ妖精に聞いたんだが、魔具が壊れた場合、その魔具の核が1割以上含まれているカケラは、元の魔具よりも2ランク下の魔具になるらしいんだ」


「まじかよ。ていうか、核?」


「魔具の力の源だ。そうだろ?」


「そうだよ」


 俺が水を向けるとアホ妖精が昨日と同じ説明を始める。


「一口に魔具って言っても、魔具の全ての場所が同じ効果をしてる訳じゃない。全ての魔具は、力の源である核とソレ以外の装飾に近い部分に分ける事が出来るの」


「つまり、俺のピュータスも核と装飾部に分けれるって事か?」


「そういう事。で、魔具が壊れたかどうかは核の状態で判断するの。例えば装飾部がいくら壊れてても核が無傷なら、厳密には魔具が壊れたとは言わないわけ」


 更にアホ妖精はドヤ顔で続ける。


「魔具の壊れ方にも2種類あって、一箇所に核が6割以上集まっている状態は破損と呼ばれるの。6割以上核が集まってる部分が本体で、破損なら壊れてても本体のウェポンスキル、ウェポンスペル、バフに一切影響が無いの。『自動修復』で治るのはこの段階だけ」


「つまり、俺が『刃操』の為に刃を切り離して、新しい刃が出来るのは破損と『自動修復』を繰り返してる状態ってことか?」


「そういう事。で、魔具の壊れ方にはもう1つ有るの。ソレが大破」


 アホ妖精は人差し指を立てて自慢げに続ける。知識を披露することが楽しくて仕方ないと言った感じだ。


「大破は本体が無い状態。つまり、6割以上の核が集まっている部分が無い状態のことよ。前に蓮がホブゴブリンの持ってる魔具を『ハザン』で壊した時に、魔具で魔具を壊すと能力を奪えるって教えたけど、この時に言う壊すとは大破の事よ。魔具を破損させても能力は奪えない。

 この状態に成ったらまず元通りに直すのは無理。でも救済措置があって、壊れた魔具のカケラの中で、1割以上核を含んでいる物は壊れる前の2ランク下の魔具になるの」


 2ランク下が無い魔具には適用されないけど、とアホ妖精が続ける。


「なるほど、つまり蓮が普段操ってる『ハザン』の刃には全て核が1割以上含まれていると?」


「たぶんね」


「でだ。何処が『ハザン』の核なのか、調べて欲しい」


 俺の言葉に浅野は大きく頷く。


「なるほど。やってみるか?」


質問:『ハザン』の核は何処か? 


回答:刃の部分全て。


「なるほど。つまり『ハザン』の刃に核が含まれてるんじゃなくて刃そのものが核か?」


「そういうことだろうな。つまり魔具を量産できるのか?」


 浅野は驚いた顔で此方を見る。


「試しに1本作ってみた」


 俺は浅野に歪な形の剣を見せる。


「おお、すげぇ、普通に剣だ」


 剣と言っても、元は『ハザン』の刃1枚に過ぎない。『チェンジサイズ』で刃の幅と厚みを倍にした後、長さだけを1m程に伸ばした。今まで『チェンジサイズ』では幅、厚み、長さを同じ比率で大きくしていたが、こういう使い方も出来るようだ。


「ん?これ取っ手の所は布撒いてるだけか?」


「ああ、そうだ。一応30cm程は刀の茎みたいな状態にしようと思って、切れないように刃先を潰したんだが、柄を作る材料も技術も無いから布を撒いただけだ」


「なるほど。刃先潰すとかの加工出来たんだな?」


 浅野が不思議そうに訊いてくる。


「『ハザン』本体の2ランク下だから『ハザン』で壊せる。そこを利用して上手いこと削っただけだ」


「そんな方法有るんだな。この剣の性能は?」


「スキルやスペルはまだ無いが、魔具の破片が下位の魔具に成った場合は、大本の魔具のバフをある程度受け継ぐらしい。今有るバフは『身体強化(弱)』『腕力強化(弱)』『斬撃強化(弱)』の3つだ」


「結構高性能。スペシャルだもんな。キャパシティは3か。魔石を砕けばスキルやスペルも手に入るしな。そういえば、これも銘は『ハザン』なのか?」


「いや、『刃操』を使って『ハザン』から刃を切り離した場合、『刃操』の影響下ではレアの魔具『ハザン』の1部と見なされるが、1度『刃操』を解くと魔具の破片と見なされて新たな下位の魔具になるから銘無しだ」


「つまり、銘が付いたらユニークになるのか?」


 浅野の質問に俺は首をひねる。理屈でいえばそうなるんだろうが、どうだろうか?


「アホ妖精。どうなんだ?」


「それ自体が魔具だからネームドにはなるけど、ユニークには昇格しないと思うよ」


「何でだ?ネームドには成れるんだろ?」


「そもそもネームドになるイコール1ランク上がると思ってる考え方が間違い。ネームドに成っても昇格しないケースが多いよ」


「そうなのか?」


 てっきりネームドに成れば1つ昇格すると思っていた。


「銘が付いてネームドに成れば力は多少増すけど、それで昇格するかはその魔具の元の状態次第。コモンは弱すぎるからちょっと強くなっただけで直ぐに昇格する場合が多いけど、スペシャル以上だと昇格しないケースが大半だよ」


 つまりユニークを量産は出来ない訳だ。


「でも逆に好都合だな」


「どういう意味だ」


「ユニークが大量に出来て敵に成ったら大変だろ。スペシャルなら売った後で買い取った連中が敵に成っても大して脅威じゃ無いだろ?」


「まあ、そうだな」


 浅野の言葉に思わず苦笑してしまう。浅野はぼかしたが明らかに言葉の中に、暴走した警官たちがユニークを持つと大変という意図が入っている。まあ、確かに「あの連中が全員ユニークで武装していたら」と思うとゾッとするが。


「売っても問題無さそうだな。大隅警視正に相談してみる」


「おう。それで良いと思うぜ」


 とりあえず、まずは大隅警視正にアポを取る必要が有る。俺は視聴覚室を出ておっさんを探す。


「あ、居た」


 案外すぐ見つかった。校舎の影でタバコを吸っている。俺は視聴覚室のあった3階からおっさんの下に飛び降りる。


「おっさん」


「うおわぁ」


 俺が目の前に飛び降りると、おっさんは仰天して尻餅をつく。


「何だ。坊主か。脅かすなよ」


「眼の前に降りたぐらいで驚くなよ」


「いや驚くだろ。目の前に突然何か振ってきたんだぞ」


 このまま漫才に成ってしまうと肝心の用を言えないので、おっさんのツッコミはスルーして話を切り出す。


「そんなどうでも良い事は置いといて、頼みが有るんだけど?」


「どうでも良いってお前。で、何だ?」


 おっさんは疲れたように俺に先を促す。


「使えそうな魔具を大量に入手する方法が有る」


「何。本当か?」


 先程とは打って変わって真面目な表情になるおっさん


「ああ。取引の話し合いがしたい。大隅警視正にアポを取ってくれ」


「解った。直ぐに話し合いが出来るようにする」


 おっさんは慌てた様子で本部へ走っていった。


 さてと、どんな条件になるか?頑張らないとな。

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