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第2話 妖精と魔法道具

 とりあえず電話は繋がり、すぐに助けに来てくれるとのこと、リュックを回収して大きめの岩に腰をかける。


 なるべくゴブリンの死体を見ないようにしながら助けを待っていると洞窟の方から声が聞こえてくる。


「タスケテー」


 一瞬幻聴かと思ったが、その声は繰り返し聞こえる。しかも、洞窟の奥から薄緑色に光る物体がふわふわ飛んできたので、幻聴ではないと認識。


 とりあえず何事かと光に近づこうとすると、その奥から更にゴブリンが2体走ってきた。


「うげぇ、マジか」


 げんなりしたが、とにかくゴブリンは排除する必要がある。


 すでに俺は右手にカッターナイフ、左手に傘、装備状態。


 立ち上がると同時にゴブリンに接近。カッターで斬り掛かり、今度は首を切り裂く、なんだかさっきよりもものすごく体が軽く感じる。


 気にはなるが、今はそれどころではない。突然の事に呆然とするもう一体のゴブリンを傘で思いっきり突く。


 傘から嫌な音がなったが気にせず力一杯突くと、硬いものを砕く感触と『グギィー』と断末魔の悲鳴を上げて2匹目も倒れる。さっきより大分簡単だった。


 一息つくと光がふわふわ舞いながら目の前に降りてくる。


「助けてくれてありがとー。いやーまじで死ぬかと思ったよー」


 フランクにそんなことを言いながら目の前に降りてきた光る物体は妖精だった。


 何を言っているか解らないって?俺も解らない。そいつの見た目は15cm程の小さな少女。しかもご丁寧に背中には透けるほど薄い緑色の蝶の羽が生えている。


「透明化と気配遮断の魔法があるから大丈夫かと思ってたら魔力切れちゃって」


 やけに明るく話ていたが俺の反応がないのを不審に思ったようで、一旦言葉を切ってキョトンとこちらを見る。


「どうしたのよ。やけに静かね?まあエルフは大人しいやつが多いか?」


「いや、色々驚きすぎて情報処理が追いついて無いんだよ。お前なんなんだよ。魔法って何だよ。エルフって何だよ」


 とりあえずツッコミ、聞きたいことを一気に聞く。


「うわ、いきなり大声出さないでよ。ていうか、魔法やエルフを知らないってあんたどんだけ無知なのよ。

 そもそもあんたエルフじゃないの?確かにエルフにしては不細工だけど、ドワーフにしては背が高いし、獣人でもないでしょ?」


「誰が不細工だ。これでも人並みだぞ。あと俺は人間だよ。魔法やエルフはファンタジーではおなじみだけど現実にそんな奴ら居ないだろうが」


「はあ?人間。嘘言わないでよ。人間が居たのは世界が別れる前。数千年は昔の話じゃない」


「嘘なもんか、どっからどう見ても人間だ。エルフみたいに耳が長いか?」


 エルフがどんな姿か知らなかったが、とりあえずお馴染みのファンタジーな見た目と仮定して話す。


「ほんとに人間?」


 いきなり神妙な顔になる妖精。


「そうか。繋がっちゃたんだ。どうしよう」


「『繋がった』て、どういう事だ」


 考え込んでいた妖精は『ハッ』と顔を上げた。


「ひょっとしてあんた今何が起こってるか、この場所がどういう物か知らない?」


「知らないけど」


「そっか。あんたの態度からして人間は完全に魔法から離れたみたいだし。よし。解った1から教えてあげる」


 そして妖精が今の状況について語ったわけだが要約するとこういう事らしかった。


 “世界には元々魔素があり、その魔素から魔物が生まれたり、魔法道具(通称:魔具)が出来たりしていた。


 人間やその他の知的生命体(エルフ・ドワーフ等)は体内に溜まった魔素を使って魔法を使うこともできた。


 しかしある時、人間が魔物の襲撃に耐えきれなくなり、魔素と魔物を三大陸に隔離し、三大陸を特殊な魔法を使って別次元に封印した。この時、それまで人間から被害を受けていた知的生命体達は三大陸側に残ったらしい。


 こうして地球には魔物や魔法、人間以外の知的生命体が居なくなり、一方別次元に封印された三大陸側には人間が居なくなった。


 そして双方が不干渉だったまま数千年が過ぎたらしい。双方を行き来する方法は普通無いからだ。


 しかし、ひとつだけ例外がある。それが今俺がいる場所ダンジョンだそうだ。


 次にダンジョンの説明だが、魔素が溜まって出来る生きた建造物で三大陸側では珍しく無いものらしい。


 しかし、このダンジョンの厄介なところは限界まで成長すると地球側に支部の様なダンジョンを作ってしまう点にある。


 大本のダンジョンと支部ダンジョンは一部繋がっており、行き来が出来るらしい。基本的に強い魔物程、魔素が濃い所を好むので、大本のダンジョンに居る強い魔物が支部ダンジョンに来ることは無いが、何事にも絶対はない。


 また、魔素があれば魔物は生まれるので出来たばかりの支部ダンジョンにもゴブリンや妖精などの弱い魔物は生まれる。(ココで知ったが妖精は魔物扱いらしい)


 そして一番問題なのが支部ダンジョンが限界まで成長すると封印が緩み、六大陸と三洋に限界まで成長したダンジョンが出現すると完全に封印が崩壊して三大陸が戻ってきてしまうらしい。”


「それで、この穴がダンジョン?」


「そういうこと。出来たてホヤホヤだから、1階層しか無いし、エリアも3つだけ、ボスも弱いけどね」


「ていうか今の話、本当か?とても信じられないんだけど」


「本当よ。嘘だと思うならその死体何よ。こっちの世界に今こんな緑色の気持ち悪い生物居るの?」


 ゴブリンの死体を指差して捲し立ててくる妖精。


「確かにそれは、うん。居ないな。てゆうか『気持ち悪い』って、お前もこいつらと同じ魔物なんだろ?」


「ムッカー!確かに魔物だけど気持ちの悪いゴブリンと可憐なあたし達フェアリーを一緒にしないでよ。


 大体魔物なんて広すぎる括りで一緒なんて言うなら、あんた達人間とゴキ○リは同じ動物でしょうが。魔物ってそれぐらい広い区分なの。『植物・動物・魔物』みたいな感じなの」


 ブンブンと顔の周りを飛びながら怒りを表現する妖精。


「解った。解った。ところで、さっきの説明からして、このダンジョン放置すると拙いのか?」


「ん〜そうね。ほっとくと時間とともに成長するから手が付けられなくなるかも?」


 可愛らしく首を傾げる妖精。黙ってそういう仕草をするとなかなか様になってる。口を開くと台無しだが。


「あんた今失礼なこと考えなかった?」


「別に。ダンジョンを消す方法は?」


「なんか怪しいな〜。ダンジョン自体は奥にあるダンジョンコアを壊して、ボスを倒せば消えるよ」


「ダンジョンコア?」


「そっ。すべてのダンジョンにはコアが有ってそれを壊すとダンジョンは崩壊するの。

 

 ただ気を付けないといけない事が有って、単独のダンジョンだとコアさえ壊せれば良いんだけど、支部ダンジョンみたいに他のダンジョンと繋がってる所はコアが壊れてもボスが生きてれば繋がってるダンジョンから魔素が供給されてコアが復元しちゃうからボスもきっちり倒さないといけない所ね」


「ボスから上手いこと逃げてコアだけ壊しても意味ないってことか?」


「コアが復元するまでの間ダンジョンは成長しないから時間稼ぎにはなるけど、それだけだね」


 今の話を聞く限り放っておくのはヤバそうだが、平凡な高校生である俺が世界のために命がけで戦う度胸も正義感もない。


「自衛隊か警察におまかせだな」


「自衛隊?警察?国軍のこと?」


「説明するのが面倒くさいからそう思ってくれてれば良い。大きく外れては居ない」


「ふ〜ん。そうしたいんならそれでいいけど自分でやった方がお得だと思うけどなぁ〜」


 思わせぶりなことを言う妖精。


「お得って?」


「ダンジョンを攻略するといくつかの特典があるのよ。

 1つは『ダンジョンの中に出来る魔具や特殊な鉱物が採集出来る』こと。とは言ってもこれはレベルやランクが高いダンジョンほど良いものがあるからこの出来たてほやほやのダンジョンだと望み薄、おそらく岩と石ころ以外何もない」


「駄目じゃん」


「最後まで聞きなさいよ。2つ目はダンジョンコアを壊したら貰える破壊者特典よ」


「破壊者特典?」


 胡散臭い言葉に半眼になって聞き返すと妖精は胸を張って答える。


「そっ、破壊者特典。ダンジョンコアを壊すとスキルが得られるし、壊す時に使った魔具は進化するのよ」


「スキル?」


「スキルって言うのは魔法以外の特殊能力のことよ普通人間や動物は持ってないけどダンジョンコアを破壊するとオドが急増して、習得出来るの」


「別にそんな変な力いらないけど」


 厨二病は卒業した。いや罹ってすらいない。別に『手から火を出したい』とかそんな願望は無いのだ。

 

 そんなことが出来ても何の役にも立たないのだから。しいて言えばテロには使えるかもしれないが、犯罪者になる気はない。


「お金儲けとかに使えそうなスキルもあるよ」


「何!」


 既に興味を失っていたが一瞬で聞く体制に入ってしまう。


「未来予知とかそういうスキルもあるからね。どう?使えそうじゃない」


 確かに、未来のことが解る様な能力があれば様々な分野で使えるだろう。一財産を築くことも夢では無いかもしれない。


「それに折角魔具も持ってるんだから上手く使えば出来たてのダンジョンぐらい攻略出来ると思うな」


「魔具?」


 そんなファンタジーなものを持っていた記憶はない。


「え、その変なナイフと棒魔具でしょ?」


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