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第12話 魔具・ピュータス

「見えた」


 2分と掛からずにアイツの家が見えてくる。今気づいたが、時速400kmで走る俺も何気にヤバイ存在だ。誰かに見られたら大騒ぎだろう。


「おお、来たか。入ってくれ」


 家の呼び鈴を鳴らすと直ぐに浅野が出てきて、俺を家に招き入れる。


「どうやってダンジョンの位置が分かったんだ?」


 早速本題を切り出す。


「1つは魔具の効果だよ」


「魔具?」


「ああ、お前こないだのファングウルフの魔石くれただろ?」


 浅野は得意げにスマフォを見せてくる。


「本当にスマフォを魔具にしたのか?」


「おうとも、これを妖精ちゃんに見てもらいたいんだ」


 既にリュックから出てきていたアホ妖精は気軽に「OK」と言って紙にスマフォの効果を書き出す。


 魔具化した浅野のスマフォの効果はこれだ。


 “スマフォの性能”


 銘:無銘


 ランク    :普通級<コモン>


 ウェポンスキル:音波(弱)コスト1


 ウェポンスペル:叡智(弱)コスト1


 バフ     :天眼(弱)コスト1


 マナ充填率  :20%


 

「なるほどな。このスペルはさっき使ったんだが、スキルとバフも有ったんだな」


「これらの効果は?」


「えっとね。音波は指向性の有る音を発する能力。指向性が有るから効果範囲外の者には影響なし、つまり、味方を巻き込むような心配は無いってことね」


「音を向けられた相手はどうなる?」


「音波は振動だから威力が大きければ物理的にもダメージを受ける。解りやすく言うと、ブラッドファングの『咆哮』と似たような効果ね。ただ、(弱)なら威力が弱いから五月蝿い程度。効果範囲を絞りまくればなんとか鼓膜ぐらいは破れるかもね」


 聴く限り、成長すればソコソコ使えそうだが、現時点では役に立ちそうにない。俺はそう感じたが、しかし、浅野は違ったようで、少し考えた後、笑みを浮かべた。


「なあ妖精ちゃん。音の大きさは大したことないとして、音の高さとか種類は好きに出来るのか?」


「多分、ある程度は」


「なら、ある程度使えそうだな」


「何か思いついたのか?」


「ん?ああ、色々試してみる。で妖精ちゃん。他の能力は?」


「『叡智(弱)』はアンタもう使ってるんだったわよね?大分マナが減ってるし」


 アホ妖精の言う通り、浅野のスマフォのマナ充填率は20%。よっぽどスペルを使ったんだろう。


「ああ、情報検索能力みたいなもんだと思ってるけど?」


「大体は有ってるわね。『叡智』は確かに何か質問を行うと、その回答が返ってくるスペルなの」


 ちょっと待て、それって…


「チートじゃねえか?」


「そうでもないわ。それは使ったアンタが1番よく解ってるわよね?」


 アホ妖精の問いかけに浅野が頷く。


「ああ。俺が調べたのはファングウルフのダンジョンの位置は何処かだけ、それで一気に8割のマナを持って行かれた。大分燃費が悪い」


「それだけじゃないわ。調べる情報によってはもっとマナが必要だったり、そもそも無理な場合も有る。 ただ、『叡智(弱)』である以上は更に上がある。強化されれば得られる情報も増えるかも?」


 なるほど、何でも解るというわけじゃ無いのか。


「最後にバフだけど、自分の上空100mの位置から、地上を俯瞰出来る能力よ」


「とりあえず、索敵と情報収集がメインの魔具って感じか?」


「そうね。今の所その認識で間違ってないわ」


 そうか。それなら、


「なあ、浅野」


「ん?なんだ?」


「その魔具、ネームドにしてみるか?」


 先日機動隊を襲っていたファングウルフの魔石は全て回収したし、ゴブリンの魔石も1000個以上死蔵している。もう1つ魔具をネームドにするくらいの量は有るだろう。


「良いのかよ?お前、確かまだネームドにしてない魔具が3つも有るんじゃなかったか?」


 浅野は気を使って、聴いてくるが、正直オレが持ってる3つよりも浅野のスマフォを魔具にしたほうが良い。


「『叡智』のスペルは今後も重要になりそうだからな。そっちを優先したほうが良いだろう?」


「あたしもそう思うよ」


「ん〜そうか。分かった。なんかワリイな」


 そう言った後、浅野は何かを思い出した様に「ああ〜」と声を上げた。


「どうした?」


「いや、今思ったんだが、妖精ちゃんに聞きたいんだがよ?」


「ん?何?」


「『叡智』が強くなった時のコストは幾つなんだ?」


 浅野は何時になく真剣な顔で言葉を続ける。


「蓮がカッターをキャパオーバーが起きたんだろ?ネームドになった時に、『叡智』が強化された場合にコストは幾つになるんだ?」


「そんなの分かんないよ」


「はぁ?」


 浅野ではなく、俺が変な声を出してしまった。


「なんで解かんないんだよ?お前、スキルやスペルについてよく説明してるだろ」


「あれは『鑑定』で見た情報を言ってるだけで知ってるわけじゃないの。『叡智』の強化後も、そのスキルを見ればコストの量は解るけど、知識として持ってるわけじゃないから、見てないと解かんないよ」


 そんな予感はしていたが、さすがはアホ妖精。肝心な所で頼りにならない奴である。それより…


「なあ浅野?」


「ん?」


「それを『叡智』で調べれるんじゃ無いのか?」


「いや、今使えないんだよ」


「マナがないからだろ?補充したらどうだ?」


 俺はゴブリンの魔石を幾つか浅野に渡す。


「え?魔石で補充できんのか?」


「ああ、そこは話してなかったか?」


 俺は浅野に魔石の使用方法について説明した。時々アホ妖精が話しに加わり、少々遠回りした感じもあったが、まあ、理解た浅野は早速マナを回復させた。


「んじゃあ、調べてみるか」


「どんなふうに調べるんだ」


「簡単だ。『叡智』」


 浅野の声を受けてスマフォの画面が真っ黒になる。


「これで後は知りたい情報を言うだけ、『叡智(中)』について」


 浅野の声を受けてスマフォの真っ黒な画面に白い文字が打ち込まれる。



質問:『叡智(中)』について


回答:エラー


「あれ?」


「駄目じゃん?」


「多分『叡智(弱)』で調べられる情報の限界を超えたんだと思うよ。もっと情報絞ったら?」


「なるほど。じゃあ早速」


「あ、待って」


 質問を言おうとした浅野の声をアホ妖精が遮る。


「ん?どうしたんだ妖精ちゃん?」


「さっきのでマナの充填率が40%まで減ったからまた補充しないと駄目かも」


「エラーでもマナ消費すんのかよ」


「本当に燃費が悪いな」


 改めて挑戦する。


質問:『叡智(中)』のコストは?


回答:5


 今度はちゃんと答えが出た。しかし…


「5か?足りないよな?」


「スペシャルのキャパは3。ネームドなら1.5倍だから4.5になる」


「何か方法ねえかな?調べてみるか」


 浅野が再び『叡智』を使おうとする。


「待って。マナの充填率0%だよ」


「マジか?」


 本当に物凄い燃費の悪さだ。


 マナを充填して再度挑戦。


質問:キャパシティーを増加する方法


回答:魔具の進化・魔具の最適化


 なんか、知らないのが出た。


「魔具の最適化?知ってるかアホ妖精?」


「聴いたことは有るけど詳しくは知らない。マナ補充して、調べたら?」


 最早1回毎にマナを補充するのが当たり前になっている。


質問:魔具の最適化とは?


回答:ウェポンスキル・ウェポンスペル・バフの3つの項目の内どれかのキャパシティー任意の量削って、その半分のキャパシティーを別の項目に振り分ける方法


「こんなことが出来るのか?」


「確かに、これなら使えるな?」


質問:魔具の最適化の方法


回答:マナ充填率100%の魔具に更にマナを補充すことで最適化状態になる。

   その後、念じることで可能


 結構色々なことが解った。と言うか、これを知ってたらゴブリンのダンジョン攻略ももっと楽だったんじゃ無いのか?


「とりあえず、進化させてみるか」


 浅野の言葉に従い、スマフォの角で魔石を潰す浅野に、新たに魔石を渡す地道な作業を続けていく。


「気が遠くなるな」


「なんとかモチベを保て」


 そして、辟易しながら潰し続けた結果、ついにそれは起きた。


“アカシックレコードより通達.一定以上の魔素を吸収した魔具に銘『ピュータス』を与える通達終了”


「やった」


「ついに成功だな」


「アホ妖精、性能はどうだ?」


「チョット待って。うん。これ」


 “スマフォの性能”


   銘:ピュータス


 所有者:浅野 健介


 ランク    :特別級<スペシャル>


 ウェポンスキル:音波(中)コスト3


 ウェポンスペル:over■叡智(中)コスト5■


 バフ     :天眼(中)コスト3 サモン コスト1


 マナ充填率  :100%


「予想通りだな」


「次は最適化か」


 そして調べた通りの方法で最適化を行う。


“スマフォの性能”


   銘:ピュータス


 所有者:浅野 健介


 ランク    :特別級<スペシャル>


 ウェポンスキル:音波(中)コスト3


 ウェポンスペル:叡智(中)コスト5


 バフ     :天眼(中)コスト3 サモン コスト1


 マナ充填率  :100%


「よし、完璧」


「これで前以上に使えるな」


 こうして俺達は、新しい戦力を手に入れた。


「て、いい感じになってるけど、ダンジョンの位置は?」


 そうだった。何とも締まらないが確かに戦力は増えた。


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