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第10話 動き出す者たち

「多いな。特にアイツが厄介」


 俺はブラッドファングウルフに目を向ける。


「ワォォォォン」


「嘘だろ!」


 いきなり衝撃波付きの咆哮を放たれ、俺は『ハザン』でなんとか防御する。


「「ガゥ」」


「いてっ。糞が」


 そのスキを待っていたかのように、普通のファングウルフ達が俺に食いつく。


「離せ」


 『狂化』と『身体強化』で底上げされた膂力でファングウルフ達を振り払い、離れたところを『ハザン』で切り刻む。


「グラァウ」


「な、ぐあぁぁ」


 ファングウルフに気を取られていると、ブラッドファングが襲い掛かってきた。


 咄嗟に左腕で殴って反撃しようとしたが、逆に左腕に噛みつかれてしまった。


 『狂化』が痛みを感じなくすると聞いたが完全ではないようだ。大分和らいでいるのかも知れないが、痛いものは痛い。


「でも、おかげで冷静に慣れたな」


 『狂化』は理性はなくなるが、思考まで飛ぶわけではない。戦い方を考える必要が有る。


「接近したのはミスだろ」


 俺を押さえつけようとブラッドファングが前足を出してくるが、逆にその足に『ハザン』を突き刺す。


「喰らえ」


 『ハザン』の切っ先から『トルネード』を放出する。


「よっしゃ」


 ブラッドファングの四肢は砕け、腹部には大量の切り傷が出来る。


「クゥゥゥン」


 ブラッドファングは俺の腕を離し、苦しそうな悲鳴を上げて、倒れる。


「「「ガゥゥゥ」」」


 ボスを助けようとファングウルフ達が襲い掛かって来るが、空中に避難。


 この時『ハザン』の刃を1枚置いていくのを忘れない。


「終わりだ。『トルネード』」


 テンションが上がっていたので格好を付けて叫んだが厨二病は患っていないので誤解しないで欲しい。


 更に言えば、“終わりだ”とカッコを付けて言ったが、『トルネード』で仕留めるつもりもない。


 『トルネード』の効果範囲を広げれないか実験でやってみたが、結果は成功で、今までよりもずっと大きな竜巻が出た。


 しかし、範囲が広がった分、威力は落ちており、上空に放り出されたブラッドファングに新たな傷は無く、ファングウルフ達でさえ、全身に切り傷こそ作っているが生きている。


「まあ、これで十分だけどな」


 そう、空中では奴らは動けない。


「いけ『ハザン』」


 大量の刃を巨大化させ、ブラッドファングとファングウルフ達を空中で切り刻む。


 奴らは回転する無数の刃の前に為すすべ無く、ミンチに変わっていった。


「よし、勝利」


 俺は地上に降り立った。  


「すげえな、蓮」


「ああ、帰ろうぜ。流石に疲れた。後腕の治療」


「ああ、そうだな」


 魔石だけをとっとと回収した俺達は帰路につく。


 しかし、その道中で異変に気がつき、俺は立ち止まった。


「どうした蓮」


「乾いた破裂音。パンッパンッて、体育祭のスタートのピストル、アレのもうちょっと重い感じの音。多分銃声。後狼の唸り超えみたいなの」


「それヤバイんじゃ?」


 とりあえず市内に入る。それが第1だと思い、山を降り市内に入ると、驚きの光景が広がっていた。


 見渡すばかりのファングウルフの群れ、対抗しているのは警察の機動隊。


 隊列を組み重火器で応戦する機動隊に対してファングウルフは縦横無尽に動き、銃弾の雨を掻い潜って接近し、その牙や爪を突き立てていく。


 時折銃弾を頭や腹に受けて倒れるモノも居るが全体から見ればほんの僅か、殆どの個体が完全に避けるか、掠る程度の最小限の被害で機動隊に接近し、盾や防刃チョッキをやすやすと切り裂いていく。


「何だよこれ」


「うわっ、もうこんなに」


 追いついてきた浅野が呆然とその光景を眺め、アホ妖精が驚いた声を上げる。


「これがファングウルフの力」


 身体能力がスキルや魔具で強化されていたため気づけなかった。ファングウルフは十分人間の脅威になる魔物だった。

 視界の端でまた一人の警官がファングウルフに飛びかかられる。


「くそっハザン」


 咄嗟の判断だった。ハザンから切り離した6枚の刃を巨大化して、機動隊に飛びかかっていたファングウルフの首や胴体を遠隔操作で斬り裂く。


 姿を見せると面倒なことになる予感がするので、遠隔操作のままでファングウルフ狩りを続ける。


「何だこれは?」


「どうなっている?」


 遠くの機動隊の困惑する声が聞こえてくるが、気にせず、刃を操り、ファングウルフを狩り尽くすと、『チェンジサイズ』と『刃操』を解く。これで機動隊には刃が消えたように見えるだろう。


「最早チートだなお前」


「でもこの程度の威力じゃ無双できるのは下級以下の魔物相手だけだよ」


 浅野が唖然としてチートだと言うと、アホ妖精はなんか気になることを言う。


「下級以下な、魔物の強さはどんなふうに別れてるんだ?」


「えーとねえ、大体こんな感じ?」


 アホ妖精が木の枝で地面に書いた内容はこんな感じだ。


“魔物のランク”


魔王級:属性竜の竜王,限界まで育ったのダンジョンのボス,突然変異種


超級 :上位属性竜,竜属以外の突然変異種。


特級 :下位属性竜,竜属以外の突然変異種。


最上級:無属性竜,自然発生する魔物の最上位種。暴れれば小国が簡単に墜ちる。


上級 :亜竜種,亜竜に匹敵する魔物。国を上げて討伐するレベル。


中堅 :上級より弱いが小さな都市なら壊滅させられるレベル。


中級 :スキルやスペル、バフが無いと倒せない魔物。

    冒険者が一流に成るための登竜門。  


下級 :ギリギリスキルやスペル、バフなしで倒せる魔物。

    二流の冒険者が戦えば死人が出ることが有る


低級 :冒険者を名乗るなら倒せなきゃいけないレベル。


劣級 :一般人でもなんとか出来るレベル。


 それぞれ高位と下位に別れるため全部で20階級。


「ちなみにフェアリーは劣級下位、ゴブリンは劣級高位、ファングウルフは低級高位よ」


「俺が倒したブラッド・ファングウルフは?」


「中級下位よ。まさかサシで戦って無傷で倒せるとは思わなかったわ。中級下位が無傷で討伐可能なら、中堅高位くらいまでならギリギリ勝てるかも?」


 アホ妖精は楽観的なことを言うが、俺はそうは思わない。


 街中で戦った時は、こちらが飛べて、あいつは飛べなかった。しかも噛みつかれそうなギリギリで咄嗟に避けることが出来たが、一歩間違えれば大怪我をしていた。運が良かったのだ。


 実際、山で戦った時は噛みつかれて怪我をしている。

 

アレより階級が上の魔物と戦うのは勘弁して欲しい。


「てっ、のんきに話してる場合じゃないだろ速く家に帰らないと。」


 浅野はココに居るのは危険と判断して家に帰ろうと言うが、果たして家に帰って安全だろうか?もう1匹ブラッド・ファングウルフがいれば家の壁など意味をなさない。まだ応戦しやすい広い場所に居た方が良い気がする。

「さっき蓮が倒したブラッドファングが多分ニュースで言ってたやつだと思うぜ」


 俺の懸念が伝わったのか、浅野は家に帰っても心配ないと言う。


「まあ、大きさは合ってたな」


「ファングウルフ程度の力なら、家の壁を壊すことは出来ないと思うし、家の中はとりあえずしばらくは安全だろ?」


「まあそうだな」


新手のファングウルフが出る前に家に帰ろうという浅野の案に従い、俺達は浅野の家に向かった。

 

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