人が死に絶えてるけどエルフにあったから気にしない
添削で誤字脱字もですが描写を膨らましたり削ったりも歓迎してます。どんどん良い作品にしてください。
深淵のような闇中が眩むほどの閃光で満たされ、その中心からゆったりと光を纏いながら一人の青年が降り立つ。
凛々しい顔つきに蒼の一式、伝説の剣エクスカリバーを携えいまここに、勇者が誕生したのだ。
勇者に自我が芽生えるまでにはもう少し時間を要するだろう。光は長い間勇者から離れることはなかった。
~~
全てが手に取るように分かった。それが何故だか俺には理解できなかった。
人を守るという使命だけを抱き生まれ落ちたはずの俺が、人の根絶した世界で何をすればいいというんだ…?
暗い何処かをなんとか手探りで這い出でると、初めてそこが洞窟だったこと知った。
見渡す限りの大草原の中、ぽつんと取り残された洞窟の入口だけがそびえる。時折心地のよい風が緑の海を波打つ。
とりあえず歩いた。西も東も分からないほど辺りには何もないないし、ほんの少しだけ森のような物がちょこんと見える。とりあえずはあそこを目的地としよう。
草原を抜ける途中完全に白骨化し風化した人間の骸骨を見つけた、もはやなんの感情もわかなかった。
器に注いだ水が少し溢れれば勿体無いが、全てこぼしてしまったのならそれは最早諦めるしかない。心境としてはそんなところだろうか…
俺は彼の、もしくは彼女の古めかしいボロローブを剥ぎ取り深く羽織る。もし魔物に人間だと気づかれれば命はないだろう…いや勇者は厳密には人ではないのだが、それももうどうでもいいのかもしれない。
そもそも生きる事すら無意味とさえ思えるこの現状にただ茫然と立ち尽くし、ただ漠然と考える…
ならもう死んでしまった方が楽なのではないか、答えが見つからないということは、なにも考えていないのと同じだ。何も考えないのは死んでいるのと一緒だろう。
つまりもしかしたら俺は生きながらにして死んでいる…とか…哲学のような煙のような、まして雲のような、掴めそうで掴めない取り留めのない感情を吹き飛ばす出来事が起きた。
俺は目的地の森へとついた。豊かな森がうっそうと生い茂っており、鳥などの野性動物の声が響き渡っていた。
美しい木漏れを浴びながら沢で顔を洗うと魔物の統治も悪くないような気がする。
もっと紫の空や毒々しい沼などが広がっている物だと思っていたが、とても綺麗な空、空気、自然が広がっている。野性動物もなかなかに繁栄している。それはもちろん魔物もだが…人がいればこの景色ももう少し変わったのだろうか…
それが今よりよく見えるかどうかは分からないが、それが実現することはないと言うことだけは理解していた。
歩き続けること一週間はたったか。これだけ日々を重ねると、魔物の生態も大分分かってくるものだ。魔物はこちらの存在に気付きはするものの襲っては来ない。
というのもやはり野性動物は襲うようだが人のいない世界で襲う対象また食料の対象であった人間を失った魔物達もまた、天敵と使命を同時に失ったのだ。
人を失い使命を失ったのは俺だけではなかった…そう思うと少しだけ…生まれて初めて笑みを浮かべたような気がした…
それはそうと、やはり魔物も腹は減る様だ、肉食系は特定の野性動物と食物連鎖の自分より下位のモンスターを補食する。
とても長く続いた新しい食物連鎖は遺伝子に食べられるものとそうではない物をしっかりと書き込むには十分だったようだ。魔物は俺を襲わない。
自分達の世界の外の物に手を出すわけがないよな。俺だって未知の物を口にするわけがないんだ。
まぁとにかくゆっくりと眠る事が出来るのはいいことだよな。そしてまた日が沈んでいくんだ。
辺りが濃い藍色に染まる頃、野うさぎと川魚の串焼きを焚き火で焼いていた…パチパチと音を立てる火だけがゆらりゆらりと揺らめく。それに合わせ黒く伸びる2本の影は焚き火の立てる音に合わせ揺れる踊り子のようだ。
「!?」
音がした…防衛本能が働き周囲に五感を満たすように散りばめる…
『グル…』
微かにだが聞こえる…獣の警戒するような…
『グルルルル…』
今度は確実に聞こえた、俺は使うことはないと思っていた剣に手を伸ばし、音のした草むらに近づく…
ようやく俺もこの世界の食物連鎖の中に組み込まれたのか……よし、やってやる…どうすれば肉を裂き骨を断てるか手に取るように分かる。
俺は焚き火の光の届くギリギリの範囲まで近づき暗闇に目を凝らし見る
ガサガサと音たち何かがいるのがわかった
「!!」
こ、これは…
『ま、まって!』
驚いたような可愛らしい高い声が不意に聞こえる
「ッ……」
俺は声の出し方を忘れていた
「わ、私は…敵じゃない!…迷ってて…!その!」
勇者は安堵したようにため息をつく
「ふぅ…」
あまりの殺気の無さに思わず剣を鞘に納めた。そこには耳の尖った女の子が驚いた表情で小さく震えていた。
「よ、よかった…!」
それにしてもさっきの獣の声はなんだったんだろうか?
「ッ!!」ギュルルルル…
獣のうなり声のようなけたたまし怪音をたてるお腹を押さえながら、エルフは顔を真っ赤にした。
「そ、その…これは…2日も何も食べていなくて…」
もうあれだ、涙目だ、どうやら恥ずかしさのボルテージが決壊したらしい
俺はゆっくりとそいつを刺激しないように焚き火へと戻った。
「………」
その間何をするのかとジーっとこちらを見つめるエルフ。なるべくゆっくりと焼きあがった川魚の串をエルフに差し出した。
勇者「ほ、ほら」
「くれるの!?」
エルフは気持ちのいいくらい食い付き、無我夢中で頬張る。美しい顔のほっぺが強引に膨らみ、数秒前に見た美しい印象より数段あどけなく見える。
俺は少しだけ高揚していた、勿論人間ではないしエルフだと理解もしている、しかし目も鼻も…ほとんどの容姿がさほど自分達と変わらないソレがとても、いとおしく感じたのだ。
耳は俺よりも尖っているが…今はそんなこと些細なことどうでもいいんだ!
「君は…なぜここに?」
自分の声を確認しながら恐る恐る発声してみた、まずまずのできだ
「へ?」
エルフは魚を頬張りながらなぜその様な事を聞かれたのか心底疑問に思ったようだ。
森にエルフがいて何がおかしいのか…という所だろうか。勝手な推測だが、まぁそれもそうだな、話題を変えよう…
エルフの少女、金色の髪、透き通った緑の瞳、長いまつげ、触れれば壊れそうなほど透き通った白い肌…
ふぅ……
さて一体なにから聞けばいい?
「あなた、種族は?」
しまった、先手を取られてしまった、やるなこのエルフ正直動揺を隠しきれない
「俺は…っ!」
あー、しまった…そうだ今は人間はいないんだ…存在に疑問を持つのも仕方がないな…
「俺…は…」
「それになんでそんな深いローブを羽織ってるの?」
「あ…」
そうだ、俺はこんな深いフードのローブを羽織っていたんだ…顔もほとんど見えていないじゃないか…
立て続けに聞いてくるエルフにすこし気押しされる
「もしかしてあなたもエルフでしょ!」
「え、?」
嬉しそうに綻ぶその表情にNOとはいいずらい。さて、どうしようか……
「考えたらローブは旅人や魔法の象徴だもんね、旅人って今はあまりいないし…魔法といったらエルフかなって。同じ亜人種っぽいしさ」
「そ、そうだ…俺もエルフ…だ」
とっさに嘘をついてしまった…仕方ないだろう。本当の事を言えばその瞬間何かが壊れそうだったから…
「と言うことは…近くにエルフの里があるんだ…?」
「…え?」
俺の疑問に疑問で返してくるエルフの顔には純粋な感情しか無さそうだった
「え?ってなに?だってあなたエルフでしょ?近くにあなたの里があるんじゃ…」
「わ、分からないんだ…」
苦し紛れにそう答えるしかなかった、俺は慌てたように肉を頬張る
「えぇ…あなたってもしかして…」
しまった…!なにか怪しまれたか?人間ってばれた?
とにかく嫌な感情だけがぐるぐると全身を駆け巡る
「あなたも里を飛び出したのね!?」
…は?
予想だにもしない返答に勇者の目は点になっていた。
「いいって隠さなくても!実は私もなんだ~!」
屈託のない笑顔で嬉々として答える、そんな笑顔もかわいい。
勇者は目をそらすようにまたはぐらかす。
「あ、あぁ!そんなとこ」
「こんな所で貴重な旅仲間に会えるなんて…奇跡だよ!」
そういいながらエルフはじわじわとこちらに寄ってくる。
「たしかに…そうかも…」
エルフ「でしょでしょ!」
エルフ「やっぱりさ…!君の里も掟が厳しかったりしたの?」
近い!近すぎる!いや、触れるような距離ではないにしても人と会うことすらしなかった俺がこんな美少女に近づかれたら胸が高鳴ってしまう……しかしなにか返さないと
「まぁ、そんなとこだ」
「やっぱりどこも同じか~!外に出れば何か変わるって思ってたんだけどな~…」
急にエルフは遠い目をした。
「君は里が嫌いなの…?」
するとエルフは焚き火を見つめたまま、すこし今までとは違う静かな笑顔をした。
「うーん、嫌いじゃないけどさ…なんというか…
このまま里のなかで生きて里のなかで死ぬのってなんというか…
生きてる意味があるのかなって……急にそう思っちゃったら居ても立ってもいられなくてさ…」
エルフにもエルフなりの事情があるのだろうか?
「それで飛び出したのか…?」
「そう!結構行動力あるでしょ?」
そう言うエルフの顔はまたいつもの笑顔に戻っていた。
「そ、そうだな…」
「なにその反応…やっぱり生きてる意味なんて探すの自体おかしいかな?」
「そんなことないッッ!!」
不意に声を荒げてしまった、失敗したと思いながら俺は平静を装った
「…え?」
エルフは戸惑いを隠せないようでこちらをじっとみて様子を伺っている
「あ、いやすまない、素晴らしい考えだと……思ったから……」
そういうとエルフはニヤリと微笑しすぐに気をよくした。
「ふふ、いやいいよ!そういってもらえて嬉しいから!」
勇者は焚き火をみながら優しく答える
「生きる意味を探すのは生きる意味を失うよりずっといいと思う…」
「ふーん、難しいこというんだね…えーと…」
どうやら名前を探っているらしい
「…あ、えと…レインでいいよ」
それを聞くと意を決したように立ち上がり手を指し伸ばしてきた
「レインね…いい名前!!私はエリー!良かったら私と旅をしてくれない?」
俺に断る理由はなかった、
「…もちろん!」
手を握り返すと、エリーはふーっと息を吐きながら脱力するように座った
「ふふふ、よかった!結構勇気のいる言葉だったよ!?」
恥ずかしさか照れか、そんな顔をしているエリーをみて何だか胸が温かくなった。この数週間、初めて誰かに接触した。
「そうだな…はは…」
もう少しだけ…もう少しだけ生きてみよう…
久方ぶりの会話に心地よく心が満たされていく、食事をすませると俺たちは他愛もない話をしながら自然に微睡みに落ちていく…
あとに残されたのはこぎみよく音をたてる焚き火と細い二本の串の影が交差し揺らめいていた。
~~
少しだけ肌寒い煌めくような森の中を獣の声のような音が響く、あわてて周囲の小鳥がちりぢりに飛び上がる。
「ガルルルル!!!」
「はうっ!?」
急な快音で飛び起きる。そして3秒ほどじたばたした後に状況を理解した。エリーの腹の虫である。
「ご、ごめんなさい…昨日もお魚1匹だったからさ…」
あぁ、そうだ……今日からはエリーがいるんだ。
「あ、ははは…目覚ましにはちょうどいいさ…」
そういうとエリーは頬を膨らませる、一夜で大分打ち解けられたような気がする。
「もー、いじわる…それよりごはん探さない?」
まぁ、そうだよな。自分の腹も少しすいてきている。
〜〜
この森は豊かで食物が多い。キノコ、山菜、果実、野生動物。どこで見聞きしたかは分からないがハッキリと食用か、そうでないか分かる。ただその名称などは出てこないが…
どちらにせよ、把握していることに損は無いわけだ。
ハヒュンッ
一瞬の風を裂く音。そして牡鹿が倒れる。
数メートル先で立ち上がったレインは弓を肩に預けながら鹿に近づく。
エリーは感心したようで手を叩いている。
「すごーいレイン!弓に秀ているのね!エルフの中でもダントツじゃないかしら?」
「そ、そうかな…?」
俺は自分以外の弓使いを見たことがない、それに使い方は弓を手にした瞬間分かってしまうからスゴさって物がよくわからない。これが当たり前のことだからだ。
「もぅ!謙遜しちゃって!動く鹿の脳天に一矢なんてまさに神業だよ!」
「胴部分に当てたところでこんな細い矢じゃ逃がしてしまうだろ。心臓に当てても具合によっては5から10分は逃げられるさ」
どこで知ったかも分からない知識を披露するとエリーは不思議そうな感心したような複雑な顔をする。
「ふーん、知識にも優れてるんだね?前の里では戦士長とかしてたの?」
慌てて返答する、そこら辺の設定はまだ出来てないのだ
「え、あ、いや…!俺なんてまだまだヒヨッコだったよ!」
するとエリーは大きく目を見開いて驚愕の表情をした、実に表情の豊かなエルフだ。
「いっ!あなたがヒヨッコってとんでもない戦闘民族のエルフ里もあるのね!エルフって今は魔法がほとんどでしょ?そこまで弓にも秀ているなんて…」
あー、そうなっちゃうかー……俺は心底後悔した。
「魔法はさぞかしすごいんでしょう?」
エリーは凄むように聞いてくる
「え、あぁ…まぁな…」
くそ、うそを重ね続けてる…こんなんじゃバレるのも時間の問題ではないか…!せめて実在してくれ!筋肉隆々の戦闘民族のエルフ里よ!!
「お前はどうなんだエリー?弓は」
どうにか話を切り替える
「だめだめ、からっきしだよ」
エリーは似合わない、しかめっ面で手を左右に振る
「それはお守りみたいなもの。魔力が尽きた時にも戦えるようにって、旅に出る前におばあちゃんがくれたの。」
「そうだったのか、しかし魔法が使えるのならいいじゃないか」
「え?う、うん!そうだよね!あはは…!」
エリーはやけに動揺した素振りを見せた
「ん?どうかしたか?」
「いやいやいや!なにも!?」
やはり反応がおかしい
「あ、魔法が使えるのならもう少し簡単に狩りが出来たんじゃ…」
素朴な疑問をぶつけてみた。
「そ、そんな事ないよ!レイン弓上手だし逆に邪魔になっちゃうって!」
「そ、そんなもんかな?」
「そうだって!!」
まぁ、疑問は残るがそんなに食いつく所でもないか……
「あ、あぁ、わかった。じゃあこのまだ弓は借りておくよ…」
尻の穴を増やされたくないしな…
「そうそう!じゃんじゃん使って!」
そういうとエリーは落ち着いたようだ。
「血抜きするから沢まで運ぶのを手伝ってくれるか?」
「うん、いいよ!」
〜〜
すっかりと日が落ち、辺り一面は急激に夕闇を纏い始めた。焚き火だけが2人を照らしている。
「鹿のお肉なんて久しぶりだよ」
エリーは美味しそうに大きめの串を頬張っている。
「そうなのか?これまでの旅では狩らなかったのか?魔法で」
「え!?うん、まぁ森燃やしちゃうかもしれないし?」
ばつの悪そうに笑顔をみせる
「はは、そんな大魔法つかうのか?生木はそんな簡単に燃えるものじゃないさ。とくにこの季節はな」
不思議そうに聞いてくる、最近はこの顔をよくみるな
「春先って燃えないの?」
「まぁ、そこまで乾燥しているわけでもないからなぁ」
むしろ樹林は潤しく生い茂っているからそうそう山火事になるとは思えない
「ふーん、じゃあ次は魔法つかうよ…」
肉を頬張りながら焚き火を見ているエリーが呟いた
「本当か?」
「気が向いたらね」
横目でこちらを見る
「よかった、本当に使えるんだな。」
「え?」
安堵した俺を目を丸くしてこちらを見ている
「昼間に魔法の話した時にあたふたしてたからさ。まさか魔法使えないのかとな、はは」
純粋にそう思っていたがエリーは慌てて訂正する。
「つ、つかえるよ!!」
「悪い悪い!それはそうだよな!お前から魔法とったらサバイバル力ゼロだしな!」
「ちょっとー!そんなことないよ!」
笑う俺に歯向かってくるエリーは眉間にシワを寄せている
「本当か?何ができるんだ?」
「つ、釣りとか…」
「お前…釣竿作れんの…?」
「…」
「…」
お互いに沈黙が続いた……のち先に動いたのはエリーだった
「あ、お肉焼けたよ?」
「あ!誤魔化したな!」
「ほら!もう私のことはいいから食べようよ!」
頬を赤らめながら肉を頬張る横がおは耳まで真っ赤だ
これは追撃してやろう
「だめエルフだな…はは!」
「レインこそ、そんな深いローブ被っちゃって!どうせ顔に自身がないんでしょ?!」
「そ、そんなことは…」
「え…」
エリーは地雷を踏んでしまったかと顔がひきつっている
「か、顔に大きな怪我があるんだ…だから見せるようなもんじゃ…」
俺は咄嗟に嘘をついた。
「そ、そうなんだ…なんかごめんね…」
エリーの目がすこし潤んでいる、騙してしまったのが申し訳ないな……
「いや…いいんだ…それより他の肉も焦げる前に食べよう」
「そうね」
ギュルルルルルルッッ
最近でも希に見るモンスターのうめき声だ、もちろんエリーの。
「胃袋は素直なんだな」
「うるさぃっっ///」
また顔を真っ赤にしてプンスカおこっているエリーを横目にずっと続けばいいなと思う勇者であった。
使命を失った勇者だったがせっかくだしこの世界で生きていこうと誓った。
風が焚き火の火の粉を舞い上げる、空に上がった小さな光は星に紛れて分からなくなった。
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ありがとうございました!
添削やレビューコメントブクマほしいです!昔の下書きにあったのを改編したので名前が間違ったりしてるかもです。