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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編

独占欲

作者: 譚月遊生季

その指を一つ一つへし折って、切り取って、ぐつぐつ煮込みたい。

その目を2つともくり抜いて、口の中に放り込んで、よくよく噛み砕きたい。

その歯を散々に叩き割って、すり鉢で粉にして、飲み下したい。


指は細くて長くて白い、赤いマニキュアが似合うあの子から。

目はアイプチもコンタクトレンズもなしでキラキラしているあの子から。

歯は真っ白なのを覗かせて並びもいいあの子から。


そうしたら、私も綺麗で優しくて素敵な人になれるの。そうしたら、大好きなあの人も私に振り向いてくれるし、憎たらしいあの子達も消えてなくなるもの。

……なんてね。

綺麗で優しくて素敵な人はそんなことしないし、私の好きな人も、そんなサイコ女に振り向かない。


あ、また目が合った。微笑んでくれた。ラッキー。

……だけど、あなたは誰にでも優しいもの。きっと、偶然よね。


あーあ、あなたが私のことばかり見てくれたら幸せなのに。

……そうしたら、他人から奪おうなんて浅ましい感情すら消し飛んでくれる。それだけで、素敵な人になれる。


お願い、私だけを見てよ。

他の女なんか見ないで、私だけ褒め称えて。


私だけを愛して。




***




僕の指を一つ一つ舐って、噛みちぎって欲しい。

僕の目を2つとも撫でて、そのまま抉り取って欲しい。

僕の歯や骨を惨々叩き折って、川や湖にでも突き落として欲しい。


こんな衝動をどうして抱いたのか分からない。

その物憂げな瞳を見た時から、彼女に踏み躙られたくて仕方がない。

でも僕は優等生だから、そんな欲望は見せられない。優等生は誰にでも慕われて、分け隔てなく笑顔でいるべきだから。

自分じゃどうしても解けない呪縛。他者から押し付けられた鎖。……君ならきっと、跡形もなく引きちぎってくれる。


その指が僕の血で汚れて、その瞳が僕だけを写して、最後にその歯が君と僕をひとつの身体にしてくれるなら、限りないほどの幸福だ。

でも、きっと、君はそんな男は嫌だろうね。当たり前だ。


……ああ、また、クラスの女の子たちを眺めている。

もしかして、女の子の方が好きなのかな。……僕より、彼女たちの方が魅力的なのかな。

今は、わがままは言わない。……せめて、僕のことを見て。


僕を、君だけのものにして。

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