1 : 農業、始めちゃいました。
どうもこんにちは、IFと申します。
今回が初めて、女の子が主人公の物語です。
一生懸命書かせていただきます故、
なにぞとよろしくお願い致します。
ある朝、少し肌寒い風に吹かれ、目を覚ますと、
「んぁ…?」
見知らぬ土地で朝を迎えた。
「はぁ……!?」
そこは薄暗い森の中だった。
「どこよここーーッ!!?」
私の名前は、白宮 舞。
16歳、女。ついでにまな板。
「なにここ…!?」
立ち上がり、周囲を見渡す。
「え、私ん家…じゃない…よね?だとすると…
ここって…まさか…“異世界“…!?」
異世界、というのは最近知った。ライトノベルだ。
学校の友人におすすめされ、仕方なく買ったところ、めちゃくちゃはまってしまった。
以降、異世界の存在、それが本当にあればいいなと日々思っていたのだ。
「いやまさか…夢…よね…」
近くをウロウロしつつ辺りを何度も見渡す。
大地を踏みしめる感触。ジメジメした空気。
そして、いつもとは違う光景。
確信した。
「え、ここ…ほんとに異世界…なの…」
すると、でっかいダンゴムシのような何かが目の前をゆっくりと横切った。
「…えぇ…」
そして、色々とこの状況を理解した。
「…つまり、ここは異世界ってわけね。」
結論は変わらなかったが。
「えっと…どうしよ。ここ薄暗くて気持ち悪いし…、とりあえず、歩こっか。うん。歩こう。」
立ち上がり、うっすらと霧のかかる奥へ奥へと歩いていく。
途中で巨大な虫や犬っぽい生き物にも遭遇したが、攻撃はされず、そのままスルー出来た。
「服も着ててよかった…、ちょっと寒いし。」
真冬、というレベルでも無いが、少し寒かった。
今の服装はただのジャージだ。
部屋着はジャージしか無いのだ。
不思議なことに運動靴も履いていた。
「…寝ぼけて来ちゃった…?でもこんなとこ知らないし…てかまずここ地球じゃないっぽいし…」
歩きつつ色々考えていると、森を抜けた。
「あれ、もう森抜けたんだ」
森を抜けた先にあったのは高原だった。
その前方は崖になっていて、崖のかなり下には人工的に作られたと思われる道が見えた。
「高原…!下には道…ってことは町か村があるのかな…?とすると人もいるかな…?」
とにかく、ここはどこなのかを聞きたい。
しかし地球でないとすれば、どうすればよいのか。
「と、とりあえずここいい場所っぽいし、覚えとこ。で、あの道をたどってみよっか。もしかしたら人がいるかもだし。」
そして、崖の下の道を目指して迂回。
崖から道に行くには、もう一度森に入り、ぐるっとまわって森を通って行ける、感じだった。
「あくまで見た感じ…だけどね」
飛び降りる、という選択肢もあったが、当然の如く却下。
そして、森を通り、坂をまわって降り、
崖の下の道に到着。
「はぁ…、はぁ…、え、ちょっ…」
ただし、何事も無かったわけではない。
「もう…!なによこれ!」
着ていたジャージには変な液体が付いていた。森に入ると黒くてデカい何かに追いかけられ、
その時に飛ばしてきた油っぽい液体が付着。
なんとか逃げ切れたものの…。
「うわっ…めっちゃベタベタするし…はやく村…探そ…」
そして、道をたどるとやはり村らしき物が確認出来た。
そこまで大きく無いが、それなりには発展していた。
「あ、村…?あった…よかった…」
道の途中で何人かとすれちがった。
それはどこか元気の無い旅人達だった。
「あの人達…この村から来てたんだよね…村に何かあったのかな?」
村の入口にある木の門を通り抜け村に入るとすぐ広場があった。
広場には木で出来たベンチがいくつかと、大きな噴水があり、村人と思われる人々でにぎわっていた。
しかし、その人達の顔もどこか寂しげに見えたり悲しげに見えたりもした。
「…?なんだろ、何があったんだろう」
すると、隣に白いヒゲを生やしたおじいさんが来てこう言ってくれた。
「…ああ、この村の唯一の薬屋のおばあさんが…亡くなってしまったんじゃ…」
「そ、そうなんですか…」
村人達が寂しげにしてるのを見ると、よほど村で大事にされていた人だと分かった。
「…おばあさんが亡くなったのもあるんじゃが…、それと同時に問題も起きてしまってな…」
「おばあさんの唯一の薬屋…あ、ってことは…」
「そうじゃ。薬草などを取り扱っておる店が無くなったのじゃ」
村で唯一経営していた薬屋が無くなった。
つまり、村の薬屋が無くなった、ということになる。
「あ、だから…旅人さん達も…元気が無かったのかな…」
危機的な状況で村に立ち寄った人もいたらしい。
そこに薬屋が無かったとなると、当然肩を落とすだろう。
「なるほど…そゆことね…おじいさん、ありがと」
「…まあ、ゆっくりして行くがよいわ…」
その後、歩いて村をウロウロしながら見ていったが、おじいさんの言っていた通り、武器屋や防具屋は何軒もあるが、薬屋は一軒も無かった。
「残念だけど…私に出来ることは無いかな…」
そして、そんなことを思いながら広場に戻ってくると、小さな男の子がはしゃいで走っていて、
それをアタフタとお母さんらしき女の人が追いかけていた。
「こらこら…!はしゃぎすぎよ…!」
すると、男の子は盛り上がった段差につまずき、転んだ。
「あらあら…もう、危ないって言ったのに…」
お母さんがすぐに抱き抱え、男の子は泣いていた。
「うわああん!痛いよー!!」
膝からは血が出ていたのを見た。
その時、心のどこかで何かが燃えた気がした。
「別にここに来てやることも無いし、まあ、薬を作るとかなら簡単そうだし、やってもいいかな」
そう決心した。
あの男の子の様に、怪我をした人が痛み苦しむという光景を思うと見捨てられなかった。
「あ、あの、おじいさん」
「ん…おお、さっきの嬢さん…何か用か?」
そして、さっきのおじいさんを見つけ、力になりたいと言った。
…が、しかし。
「力になりたいと言ってくれるのはありがたいんじゃが…他所の者にそんなこと…頼めたものじゃないわい…」
「…そ、そうですか…残念です…」
何か思うところがあるのか、断られてしまった。
「なんでだろ…村の人からしたらすごく助かると思うんだけど…な」
まさか断られてしまうとは思わなかった。
ゆっくりとおじいさんはその場から立ち去った。
「どうしよ…何しよう」
薬屋が無くなってこの村がヤバイのは間違いない。
「あ、そうだ。」
村の入口を出て思いついた。
「・・・良い眺めの高原もあるんだし、自分で建てちゃおっか」
この村で薬屋を営むのがだめなら他の所でやってしてしまおう、ということである。
大胆な案だが、これにも問題が。
「あ、でもお金足りないや…ていうか持ってないわ」
薬草等を作るには畑が必要、畑を作るには道具が必要、道具を手に入れるにはお金が必要なのだ。
この世界のお金の価値観はよく分からないが、必須なのは間違いないだろう。
「ん…どうやってお金を稼ぐかなんだよね…」
そこで振り返ると、広場から少し奥の所に掲示板らしき物を発見した。
「お仕事の依頼とか募集は……あったあああ!!」
その掲示板には、色々な張り紙が何十枚も張られてあった。
『家のかたずけをお願いしたい!』
だいたい3000Gほどの報酬
= 結果次第で報酬金アップ! =
『馬小屋の掃除』
報酬 : 2000G
= 二時間ほど =
『庭の草抜き』
報酬金は1500G
念入りにお願いします
『くつが、ほしいです』
かっこいいくつを、ください
100G、あげます
『 アルカディオ討伐依頼 』
アルカディオ4匹の討伐を頼みたい。
その鋭い角が武器の強化に必要だ。
毛皮も装備の装飾に使おうと思っている。
報酬:3500Gほど
実に様々な張り紙があった。
「んー…どれでもいいけど…楽なのがいいな…」
G、とは何か分からなかったが、日本でいう[円]みたいな物だろうと特に気に留めようとしなかった。
そして、目に留まったのが、
「ん…?これ…」
『畑を作るのを手伝ってほしい』
今月は野菜の採れる量が極めて少ない、そこで、効率を良くするため畑をもう少し大きくしようと思っている。
= お手伝い募集 =
ー完成次第終了ー
ー働き具合に応じて報酬金を出すー
※2000G以上
「農家さんだ…!ちょうどいいや、畑を作る方法とか手順とか学んでおこっと」
畑に関する知識も学べて、実践できて、さらにお金も貰えるという、今の現状にぴったりな物だった。
「一応薬屋を開くってのは内緒にしとこ」
そして、その張り紙に書いてあった、【グルフ】という人を探した。
当然、顔を見ただけでは分からないので広場にいたお姉さんに聞いてみた。
「ああ、グルフさんね。あの人なら今は北の山にいるんじゃない?」
「や、山…ですか…」
「あの人は…もう60歳にもなるのに、毎日午前中は山に行っててね…」
「なにしてるんだろう…」
その後、お姉さんにお礼を言い、
再び村の入り口に戻って、遠くに見える薄く霧のかかった青い山を見た。
「あの山にいるのかな…?ていうか、北ってどっちだっけ…」
方向音痴もいいところだ。
「どうしよう。グルフさんは午前中は山にいるわけでしょ。なら、お昼過ぎたら戻って
来てくれるのかな?何してるかは分かんないけど。」
てなわけで、少し待つことにした。
お読みいただき非常に感謝です!
もしよければ評価やアドバイスなど、
いただけると幸いです!
本当にありがとうございます!