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22 水浴び

「少し身体が臭ってきましたわね」


 自分の腕を嗅ぎながら不意にマリアンヌが言った。


 森を抜けたのはもう何日も前だ。しかし野宿ばかりで誰もお風呂には入っていない。


「そうだな。幸いここは見晴らしも良い。そこの川で身体を洗っていこう」


 クラストが指を指した方向には街道に沿って小川が流れている。道に沿って草木が生えているだけで遮蔽物は殆ど無い。


 無いのだが、普通は夜じゃないのだろうか。こんな白昼堂々と道の側で裸になったらマズイんじゃ…うおっっと。


「ヒャア、気持ちイィ」


 グスタフは一目散に駆け出すと装備を脱いで川に飛び込んだ。他の荷物と一緒に放り出される。聖剣も近くの岩にぶつかってしまった。視界が揺れる。


「グスタフ!湯浴みの時は武器は手元に、だ。いつ襲われるか分からないんだぞ」

「スマン、スマン」


 グスタフは装備を拾うと手元に置き直した。どうやらパーティでのルールのようだ。これなら突然襲われても直ぐに対応出来る。


「俺は剣の手入れがあるから、マリーも入ってきなよ。ここまで北に来れば旅人と出くわす事もないだろう」


 その言葉に僕はドキリとした。

 クラストはマリアンヌに背を向けると岩に腰掛ける。普段使いの工具箱を漁り、剣を研ぎ始めた。


「そうさせて貰いますわ」


 そうなのか、そういう事なのか。そういうのを期待していいんだな。


 とは言えだ。

 僕ももう聖剣になって6年目よ。彼女が出来なかったのも遥か昔、今ではいくらでも起きていられるしオシッコの出し方も忘れちゃったぜ。その聖剣が女の裸なんかにいちいち気になってられるか。


(………………)


 まぁ折角の機会だし、今後の為にも色々と知っておいて損はないのではないだろうか。これは決してやましい気持ちからではなく、同じ志しを持つ仲間として彼女の事を少しでも知っておいた方がゴニョゴニョ…チラリ。


 マリアンヌは着ているローブを脱ぐと中のチュニック?上着に手をかける。


「なんだぁマリアンヌも入るのか」


「ええそうよ。だから少し離れて下さいません?」


 邪魔するな。声をかけるな筋肉ダルマ。


 下心はないとは言え目が離せないのは不思議だなあ。

 着ているものが1枚づつ減っていく度に、無いはずの心拍が加速していくのが分かる。


 思えばマリアンヌの事をこんなに凝視、もとい意識したのは初めてかもしれない。

 その口調に注意が行きがちだが、目の前の彼女は間違いなく美女だ。少しキツめの顔つきで、色は白いしまつ毛は長い。何よりゲーム開始から5年も経って僕のイメージよりもずっ大人の魅力が溢れていた。


 あと少しで、む胸が。


(あっあっ……あれ)


 あとちょっとの所まで来て、僕は言葉を失った。


 マリアンヌの身体は傷だらけだった。直視できずに思わず視線を逸らしてしまう。

 けど直ぐに戻した。それこそ彼女に対して失礼だと思ったからだ。


 普段から袖の長いローブを着ていたので知らなかったが、腕や太ももは所々青紫に変色していた。中には肉が削げる程だったのか窪んだような跡もある。


 中でも背中の怪我は身の毛もよだつ程だった。全体の皮が引き剥がされたのか爛れたのか、肌そのものがザラついたピンク色の岩のような質感になっていた。

 不意打ちだったのだろうが、一体どのように襲われたのか想像もしたくない。


 彼らが命をかけて戦っているのは重々知っているし、隣で呑気に泳いでいるグスタフだってああ見えて身体中傷だらけだったりする。


(そりゃあ、分かってはいたけどさ)


 でもやっぱり、まだまだ分かったつもりになってただけなのかな。

 自分でも結構な修羅場を潜り抜けて来たと思ってはいたが、彼女の背中から目を逸らした今はそんな自信は無くなってしまった。


 クラストはフランベルジュを終えて、マン・ゴーシュの手入れを始めている。武器の手入れは彼の日課だが、例え戦闘が無くても欠かした日はない。

 グスタフもそうだ。ノザリスにいる時からガヴリールの素振りは欠かしていない。


 出来る事をする事だけ、応援してくれてるだけで満足。オバちゃんの言葉を思い出しながら僕は北の空を見上げた。


 なら僕には何が出来るだろうか?


 あの山を越えれば、魔王の城は目と鼻の先だ。決戦の時は近い。





 ……マリアンヌのお胸はなんかその色々想像以上だった。もし願いが叶うなら人間に戻って触ってみたかったです。

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