三話
説明回です。
思っていたよりも話が進まなかった……
目を覚ますとそこは、見慣れたボロアパートの天井ではなく、学校の保健室の天井だった。
「あ、目覚めたん?」
見知らぬ少女の声が聞こえる。
自分は何でここで寝ているんだろう。
少女が顔をのぞき込んでくる。
うっとうしいな、眠いんだ、後にしてくれ....ん?少女?
そうだ!自分は、あの後どうなったんだ!?
勢いよく体を起こすと、少女のおでこと自分のおでこはまるで吸い込まれるように衝突した。
「いっつぁ~、痛いじゃない!なにすんのよ!」
「っつ、そんなところにいるお前が悪い!」
「はぁ?意味わかんない、明らかに悪いのはあんたじゃない!こっちは心配してあげてるのに!」
「心配される筋合いはない、あと、何で自分はここにいる」
「はぁ~?なによその態度、あんた目上に対する態度がなってないわね!」
「目上ぇ~?あんたもしかして目が見えないのか?」
「はぁ?失礼な奴!バッチリ、ハッキリ、クッキリ見えてますけどぉ~」
「何処をどう見たらそうなるんだ!」
「何処をどう見てもあたしが年上でしょうが!」
「幾つだ」
「十八」
「なっ...自分よりも年上だ、、と?」
「そうよ、私はここの三年生よ」
「しかも先輩、だ...と!?」
「そうよ、何か言うことは無いのかしら、こ・う・は・い?」
「すいませんした先輩!!」
「よろしい、これに懲りたら見た目で人を判断するのをやめることね」
まて、何で俺は先輩とだべっているんだっけ?
そうだ、あの後なぜかここにいて、目の前にその張本人たる先輩がいる。
まずは現状把握に努めないと。まあどこまで情報を引き出せるかわからんが、現状ぐらいは教えてくれそうな気がする。
「何で、自分はここに?」
「あたしが連れてきたからよ」
「隆と美月は?」
「ああ、道路に転がってたあの二人ね。それなら向こうのベットで寝てるわよ」
と言って先輩が指さした先には、自分と反対側のベットで寝ている二人がいた。
「えっと、先輩が戦っていたあの男は?」
「ああ、あれね。あれは魔術教会の刺客よ..多分」
「多分って、」
「まぁ、実際に確認したわけじゃないからね~」
「なっそんな、それにあんなあっさり殺すなんて...」
「なに、じゃああのまま黙って見てろって言いたいの?」
「そういうわけじゃないですけど..」
「そういうことでしょ、それにそれどころじゃないんだから」
「とりあえず、ついてきて」
「なっ、」
そういうや否や、ベッドから起こされ、強引に自分の手を取り先輩は歩き出す。
先輩の足取りはしっかりしていて自分は、抵抗することもできずそのままずるずると引きずられていった。
てか先輩の手柔らかっ!美月の手といい女子の手はシルクかなんかで出来ているんだろうか。
「先輩、どこ向かってるんですか」
「科学部の部室よ」
「何でですか」
「会わせたい人がいるから!」
「会わせたい人?」
「いいから、黙ってついてこい」
ついて来いって言われても、自分引きずられているんですが...
先輩に引きずられて着いた科学部の部室は、いろんな物があたりに散らばっていてぱっと見汚かったが辛うじて足の踏み場がないというほどではなかった。
そして、部屋の奥にこの部屋の主とまるで言わんばかりに新井先生が座っていた。
新井克洋先生は科学の先生で、授業が非常に分かりやすく面白い。更に人当たりが良く三十代前半で比較的若い先生で生徒との距離も近いため生徒に人気がある先生だ。
どうやらこの様子では科学部の顧問でもありそうだな。
「先生ー、帰ったよ」
「待っていたよ、亜美君」
「先生こいつがさっき話した男子です」
「ああ、魔法が効かなかったていう」
「そうです」
「それで、魔法が効かないってのは本当かね」
「そうですって言ってるじゃないですか!」
「まあ、魔法が効かないって事はまずありえないからねぇ、信じがたいね」
「ですが先生、現に彼は記憶を失ってないです」
「それが分からないのだよ亜美君」
「見た感じ超人類というわけでもなさそうだし、一体全体何でだろうね」
おお、ものすごい疎外感。何、超人類?魔法?なんのこっちゃ、どうやら常識は何処かに落っことしてしまったらしい。
「先生、彼に説明しないと話が進みませんよ」
「それもそうだね、ええっと、君は確か」
「2のBの吉川歴です」
「ああ、思い出した。生徒からいろいろ聞いてるよ」
「例えば初対面の女の子相手にどもった挙句中二病発言してドン引されたた話とか」
「なっ!」
あれは忘れもしない、入学当初となりの席の女子が話しかけてきたことに舞い上がってしまい、どもってしまった挙句、どもってしまったのが恥ずかしくてつい「ふっ、ここは魔素が強すぎて情報伝達すらもままならんな...」のか言ってしまったのが運の尽き。
その時の女子のあのゴミを見るような目は忘れたくとも忘れられない思い出だ。うっ、目にゴミが..
「ええっと、話を進めてもいいかね?」
「..はい」
「君はこの世に魔法があると思うかい?」
「いいえ」
「それは亜美君を見た後でもかい?」
「亜美って誰ですか?」
「君の隣にいるじゃないか」
「あら、あたし自己紹介してなかった?」
「されてません」
「大友亜美よ、一応魔法少女やってるわ」
「それだけですか」
「それだけだけど」
もっと他にあるんじゃないんですかねぇ!
ほら例えば、何で魔法少女やってるかとか説明足りなさすぎませんかね?
全くついていけてないんですが..
「そうね、他に言うこととしたら..あたしの弟のことぐらいかな」
「弟はね、賢人って言うんだけどその名のとうり賢い子でいつも私が教わることばっかり。でもこれじゃあ姉としてだめだなって思ってるんだけど、賢人って頼りがいがあってついつい甘えちゃうんだよね。ああもちろん賢人のいいところは賢い所だけじゃないんだよ。気配りができるところとか、やさしい所とかも賢人の魅力よね。これで小六なのよ信じられる?将来女泣かせになりそうで心配。まあ、私の目が黒いうちは女の子なんて近づかせないけどね!それと賢人は内面がいいだけでなく見た目もいいの。まっすぐな瞳をしていて、全体的に小顔で整った容姿で、あたしと同じ童顔だから年齢より少し年下に見えるのがポイントでもあるのよね。そんな子が昔は「お姉ちゃん」「お姉ちゃん」て言いながらあたしの後ろをぴったりついてくるもんだからかわいくてかわいくて!今がかわいくないってわけじゃないのよ。成長期入ってきたからなのか今は少し男の色気を感じることもあって、弟の成長を感じられてうれしいんだけどいつか私のもとから離れていくのかなと思うと寂しくて、素直に成長を喜べないのがジレンマなのよね。」
「亜美君そこらへんにしたまえ、君の弟が優秀なのはわかったが、いかんせん話が進まない」
「..すみません」
何というか、思っていたよりも病んでる先輩だな..
ブラコンもここまで行くと怖いな。
「すまない、またもや話が脱線してしまった」
「いえ、」
「悪いね..どこまで話したか、ああまだ何も話せていないね」
「魔法が存在するかの話だが実際はわかっていない」
わかっていない?どういうことだ。
「魔法なるものは現象として確認されているが実際に自然の摂理からくるかというと怪しい」
「人間は常に考える生き物だ。人間の思考には指向性を持たないエネルギーが微々たるものだがあるはずだ。というのが今の所の見解でね、何しろ存在を確認する手段がない」
「だが、これを前提として考えると魔法なる現象について説明できてしまう」
「このエネルギーだが、君が想像しているようなエネルギーではない」
「もっとあやふやなもの、そうだな言うなれば集団心理的エネルギーといったところか」
「プラセボ効果は知っているかね?」
「はい」
確か本来は薬効として効く成分のない薬を投与したにもかかわらず、薬効だと思い込むことによって病気が快方に向かったり治癒することを指すことばっだったはず。
「それならば話は早い、このエネルギーはプラセボ効果を引き起こすエネルギーだとでも思えばいい」
「どういうことですか?」
「つまり、人間は魔法があると錯覚してるということだよ」
「錯覚ですか?」
「そう、例えばだがね、全世界の人間すべてが同じ夢ないし同じ幻覚を見たらそれは何になると思う?」
全世界の人間が、同じ夢を見る?つまり同じ認識を持つということか、そしたらそれは常識、ないし現実に起こったことと遜色無くなるのではないか?
「現実になるですか?」
「そのとおり!それが魔法の正体だ」
「世界が魔法があると錯覚する、それが魔法の正体」
「なるほど..」
「物わかりのいい生徒で助かるよ」
「そして、魔法の発現させるプロセスだが」
「これはその前提が分かれば簡単だ、人間が考えることによって生まれる思念は集団心理的エネルギーを含み空中に漂っている」
「これには指向性はなく、存在しないのと同義だが。これに指向性を持たせるとたちまち現象として現れる」
「どんな指向性を持たせるかによって当然、現象も変わってくる」
「私はこれを研究しているのだよ」
「彼女の持っているステッキも私の研究成果でね」
「魔法の知識がなくても音声認識で魔法が使えるようになっている」
「変身することによって身体能力が五倍ほどになる」
「これは超人類の域に達している、自慢の一品だ」
「あの、その超人類って何ですか?」
「ああ、私としたことが、超人類とは人類では絶対にかなわない域に達した人類の事だよ」
矛盾しているがね、と新井先生は付け足す
「世界には想像もつかないような強者が蔓延っているって事だよ」
「はぁ、」
「ここからが本題なんだがね」
「今までのは本題じゃないんですか..」
「い今までのはちょっとした事前知識だよ」
「そうですか..」
「実はこの魔法なのだが独自の組織を持つ研究機関が存在していてね」
「魔術教会って組織なんだが、これが厄介者でね」
「奴らは手段のためなら手段を選ばない、だがそれを抑制する勢力がこの町にはいない」
「つまり、彼等のやりたい放題というわけなのだよ」
「そこで、亜美君に対抗勢力として頑張ってもらってるわけなんだが」
「先生ここからは、あたしからいいですか?」
「いいとも、そのほうが状況が分かりやすかろう」
「あたしの弟のことは話したと思うんだけど..その私の弟の行方が分からないの」
「攫われたって事ですか?」
「それが分からないの、攫われたなら脅迫文なり送られてはず」
「なのに、音沙汰がない。警察に届け出てたけど進展してない」
「いなくなってどれぐらいなんですか?」
「一日と六時間よ」
「あの、家出とかだったりしませんよね?」
「はぁ?あたしの可愛い弟が何で家出をするわけ?」
いや、これお姉さんがうざくって家出したとかいう落ちでしょ。
少なくとも自分が弟だったら家出するもん。
「ほら、弟さん小六って言ってたじゃないですか、色々気難しい年ごろなのでは?」
「何が言いたいの..」
「ええっと、」
「あたしの賢人が、自分から進んであたしから離れたって言いたいわけ?」
「そこまでにしたまえ、歴君」
「どちらにせよ、弟君の捜索に手を貸してもらいたい」
「拒否権は..」
「あると思ってるのかね」
「君はもう知りすぎているんだよ、本来ならば記憶を消すのだがそれが出来ない」
「後はわかるね?」
「..はい」
くっそ、まさかここまではっきり脅してくるとは思ってなかった。
いい感じに話をそらしてバックレたかったがそうもいかないか、こんなんまともに付き合ってたら命が何個あっても足りないぞ。
「まぁ、こっちの事情に付き合ってもらうんだ。護身具ぐらいは用意してあげないとね」
そう言って取り出したのは二十センチ位のハンドカバーの付いたグリップだった。
「これは..」
これを君にあげようそう言ってそのグリップを自分に手渡してくる。
質感は、硬さはぱっと持った感じ重く、鉄で出来ていそうだ。
「気に入ってもらえたかね、彼等の落とし物をちょっと細工させてもらった」
「そこにトリガーが付いてるだろ」
目をやるとグリップのハンドカバーの付け根にトリガーが確かについていた。
「そのトリガーを押すと薄い刃が出てくる。それと同時に身体も強化してくれるスグレモノだ」
「身体強化は大体今の君の三倍程度強化される」
「つまり、五十メートル走を大体ニ、三秒で走れるぐらいにはなる」
「それ凄くないですか..」
「まあね、でも過信は禁物だよ。所詮人間の領域は超えられない、油断してたら死ぬからね」
「...肝に銘じておきます」
おいおい、これこき使われる前提じゃないですかー、やだー
「話は終わったよね先生?」
「そうだね、一応伝えるべき物は話したかな」
「それじゃあ捜索の続き行ってきます!」
「待ちなさい、それは教師として見過ごせない。授業を休むつもりかね」
「そ、そんなつもりは」
「とりあえず一旦家に帰って授業の準備をして来なさい。暦君もね」
「美月君と隆君の家にも連絡入れといたから彼等は起きしだい家に返すつもりだから暦君は安心するといい」
やばい、先生に言われるまで美月と隆のこと忘れてた..
「とりあえず君達は帰りなさい。今が深夜だという事を忘れてるだろう」
「いいね、遅刻してもいいから一眠りするんだそ。いいな」
「は〜い」
「...」
とりあえず解散となり、各自各々の家に帰ったのだった。




